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~ 運命と出会い ~
しおりを挟む僕らは平穏に過ごしていた。
そう、あれからまだ大帝国の追っ手は来ていない。
この頃には、みんなの傷もほとんど万全な状態になっていた。
キィンッ キィンッ
僕らは刀が交じり合う、この音をまだ日が明ける前から何度となく耳にした。
朝から刀の稽古を楽しそうにしている
真堂丸が太刀筋を振るうものなら、誰しもが興味津々。
みなが真剣に観察していた。
菊一さんまでもが、薬の調合中にもかかわらず「ちょっと行って来ていいか」の始末。
やはり刀に生きてきた者として、真堂丸の一度の太刀すらも見逃したくないようだ。
中でも、真剣なのは道来さん。
真堂丸が刀を握る時は、片時も離れず熱心に所作を学んでいた。
僕は幸せだった。
友達とこうして過ごしている、この時間が何よりも愛しく感じた。
心からわき上がる気持ちは感謝それ以外になかった。
「しっかし、平和だな」しんべえの声
「このまま、大帝国の奴らがあらわれなきゃ良いよな、傷も癒えた今、その三國人とか言う奴を討ちに行くんだろ?」
「菊一さんが言ってました、奴らを見つけるのは骨が折れるって、今までずっとこうして誰にも見つからず潜んでいたわけですから」
「さてと」木の裏で寝そべっていた雷獣が立ち上がる
「俺はそろそろ行くぜ」
「えっ、雷獣さん行っちゃうんですか?」
「ああ、世話になった」
「いえ、こちらこそ命をかけて情報を届けてくれてありがとうございました」
「覚悟はしておけ、奴らとの最終決戦は近い、俺も今自分の出来る事をしておく、忘れるな、いかにお前達が強くても向こうには数がいる、今のうちに俺も同士を見つけておくつもりだ」
文太は頭を下げた。
「じゃあな」
ザッ 振り返ると横に立っていたのは真堂丸だった。
「雷獣、一人無茶はするな、何かあったら俺たちが必ずかけつける」
「ふっ」
「これがあの真堂丸か、随分腑抜けになっちまいやがったな」雷獣は歩きだす
「礼を言う」
俺はお前と言う人間を恐ろしい奴だと思っていた。
冷酷残忍、恐ろしい、最強の剣客だと。
お前はもう、沢山の人間を斬って斬りまくった、あの頃の怪物のような お前じゃない。
人は過去ではない。
人は今にして生まれ変わる。
他人が認めるかはしらねぇが。
俺は認めるぜ
今俺の前に立つお前は、慈愛に満ち溢れた人間でしかない。
本当は人は、瞬間 瞬間生まれ変わっているものなのかもな。
雷獣は歩きだす。
すると洞海が「雷獣さん」
「お前は秀峰の部下だった奴だろう?何故ここにいるかは聞かねえが」
この休息期間中、ほとんど一人でいた雷獣に洞海は初めて話かけた、そう彼にとって幹部は近寄りがたい存在であった、同じ大帝国であった洞海には、いかに幹部が強く、自身がひっくり返っても勝てない才があるかを知っていた。
「何故俺の正体に気づいていたのに、何一つ質問しなかったんです?、俺は秘密に、ここに潜伏してる大帝国の刺客だとは疑わなかったんですか?」
雷獣は無言で歩き出す
「答えてください、俺はここの人達を斬る為に潜伏しているのかも知れませんよ、何故問わなかったんです?」
僕らはじっと見つめている
すると雷獣は振り返らずに言った
「お前はそんなんだから、秀峰の野郎にあまちゃんだと言われるんだ」
「?」
「お前の今の表情を見れば、お前がそんな企みのない人間だって事くらい、問わずして誰にだって分かる」
洞海は頭を下げていた
「お前はもう、秀峰の部下だった過去ではない、今の自分を生きやがれ、俺の最後の命令だ」雷獣は歩きだす。
洞海はそれを聞き 涙していた
ありがとうございます、雷獣さんっ。
洞海にとって、白い刃と呼ばれる幹部は憧れであった、自分は永遠に幹部にはなれないだろう。
それほど高き、狭き門。
どこまでも、手の届かない その存在達は洞海にとって、まさに憧れであり雲の上の存在達だった。
その存在から初めてもらった優しい言葉。
洞海の涙は止まらなかった。
「さて、俺もしばしお前達とは別行動をとる」そう言ったのは菊一
「奴の言った様に、少々人手がいる。大帝国の支配に反対する者や、一緒に声をあげる者達を集めねばならん、昔の仲間達にもあたってみるとする、洞海お前も俺と一緒に来るか?」
「是非お願いします」
「じゃあ、僕らも何処か出発しますか?今なら沢山の人達が力を貸してくれる、そんな気がします」文太が言った。
事実、大帝国の支柱である恐ろしい幹部達が崩れている。
女狐、鬼神、 骸、時代を揺るがした強者達は真堂丸に敗れたのだ。
今こそが最大の機会、この機を逃す訳にはいかなかった。
今こそ沢山の仲間を。
「じゃあ行きましょう」太一が嬉しそうに声をあげる
希望
あきらめなければ 必ず見えてくる
絶対に希望の灯は消えない。
あきらめなければ 必ず 火は灯る
僕らは菊一さんと洞海さんとしばしの別れ
別れ際に菊一が言った「忘れるな、絶対に一斎とは顔を合わせるな、今出会うのはまずい。どうしてもお前が奴と決着をつけたいのなら、大帝国を完全に崩してからだ、その後は好きにするがいい」
「ああ」
「ただし、必ず約束しろ 奴とやるなら絶対に負けないと」
真堂丸は微笑んだ。
「ああ」
「みなさん本当に色々ありがとうございました、皆さんの力になれるよう自分も全力を尽くします」洞海が言う。
「ありがとうございます、そちらも気をつけて」
僕らは握手をした。
僕らは馬車に乗り込み出発の準備を整えた。
「久しぶりの町、楽しみでごんすな」笑う一之助
ずっと山奥の生活だったから、久しぶりの城下町に僕らは胸をときめかせた。
皮肉にも、この時すでに運命の歯車は音を出し、回り始めようとしていた。
馬車は走る
大帝国の城の最上階に鬼道千閣は立っていた。
ヒョオオオオオオー
真堂丸 それから小僧 くっくっく
名を文太と言ったか。
この時、文太の素性は既にばれていた。
ああ、ああ
鬼道は笑う
お前達は私の鳥かごの中で動いてるに過ぎない、逃げることは出来ないのだよ。
こちらは確実に片付くとして、後は三國人お前達をどうするか、奴らは強い、が、一斎 私にはお前がいる。
ふははははははははっ
三國人と一斎どちらが強い?見ものだな。
翌日
「うっひゃー町だぁー」馬車から降り叫ぶしんべえ。
「やったぜ、はやく歩こうぜ」太一も嬉しそう、こういう時は太一さんもしんべえさんも仲が良いんだなぁと僕らは笑った。
皆は馬車から降り歩きだす
「さっそく腹ごしらえだ」しんべえと太一がすぐに走って行ってしまった。
「お前達、後ほど この辺りで合流だ」道来が言う
「はぁーい」
「俺は少し町を歩いてみる」真堂丸は歩きだす
「私も大帝国が居ないか確認をするつもりだ」と道来
「さすが、あの二人ちゃんと警戒してるでごんす、全くそれに引き換えあの二人は」苦笑いの一之助
グゥー
「あっ」
「まっ、まあ腹が減っては戦もできぬ、文太さんも一緒に行きましょう」
「あはは、そうですね、ここはあの二人に任せましょう」
太一達が向かった店に入る時だった。
道歩く一人の女性に僕の目がとまる。
すると一之助が「随分美しい女性でごんすね」
雪のような白い肌に白い着物、確かに美しかった。
そう、今まで見たことないくらいに
ただ、それだけではない、違う何かを感じた気がした。
予感?
僕は考えるのをやめた。
店の扉を開くと凄い勢いで食べてる、太一としんべえが。
「美味いっすよ、はやく二人も一緒に」
あははははは
「賑やかな二人でごんす、じゃあさっそく あっしも」一之助も凄い勢いで食べ始めた。
あははははは
さっきの人は一体?
何にもなきゃいいけど。
道来は町を歩いている、些細な殺気、大帝国は居ないか 注意しながら気を研ぎ澄ましている。
そんな道来だったからこそ、すぐに感じた。
少し離れた背後二人の殺気を持つ者達を。
ザッ 道来が立ち止まる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴォー
その頃、真堂丸も、また立ち止まっていた
道の真ん中で立ち止まった理由
それは……
ヒョオオオオオオー
美しい 雪のような白い肌の女性、長く美しい黒髪がまた、その白い肌をいっそう きわ立たせるようになびいている
真堂丸の目の前に立つ女性は、しっかりと真堂丸の目を見つめ立っていた。
この時、回り始めていた運命の歯車は、完全に準備され整えらてていたかの様に廻りだしたのだ。
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