文太と真堂丸

だかずお

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~ 決戦 ~

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ドゴゴゴゴゴオオオオオオオオーーーー

ヒョオオオオオオーーーーーーー

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオーッ

辺りに鳴り響く地響きと音はどんどん大きくなり近づいて来ている、今や決戦は目前。
大地は大きく振動し、その揺れにより真堂丸達の身体は小刻みに揺れ動き始める。

「来るぞ、皆気をつけろ」真堂丸の発言に仲間達は心を据える。

いよいよ始まる、これが俺たちと大帝国との最後の戦になる、そう思った太一の脚は震えている。
真堂丸と道来は太一の脚の震えをしっかり見ていた。
そして、真堂丸はそれを見つめる道来の心にもしっかりと気づいていた。
道来の本心、それは太一には出来ればこの戦に出て欲しくない、生き延びて欲しい。

真堂丸はこの状況の中しっかりと仲間達を見つめている。

ヒョオオオオオオオオオオオオー

「青鬼さん、嬉しいっすね」

「ああ、そうだな」青鬼が微笑む

恩人達の力になれる事がこんなに嬉しいなんてな。
俺たち鬼が人間の力になるとは。
人種や種族、そんな垣根はくだらない。
同じ生命に違いないのだから、今は心底そう感じる。
お互いの危機なら喜んで支えあう。
だが、この戦とは?
力を合わせ、支えあうはずの命どうしが、互いに殺しあうなど、なんとも空虚でむなしい感じがする。

「オメェら、死ぬなよ」

「はいっ、青鬼さん」

ヒョオオ~~

「真の兄貴に道来さん、一之助」

「この戦が終わったら絶対にまた、みんなで旅に行きましょう、もちろん文太の兄貴やしんべえも一緒に。約束ですよ、死んだら駄目ですよ」
道来は、太一の言葉に少し安心する。
太一の言葉から生き延びると言う想いを感じられたから。

返事をしようとした その時だった。

それはあまりにも突然

ヒュン  ヒュン  ヒュン ヒュン ヒュッヒュッンッ

空から降り注いで来るのは、雨の様に降り注ぐ大量の弓の矢だった。

キィン   キィン   キィンンッ   キィン  キンッ
ガッ  ザンッ

皆は弓の矢を刀、鬼達は拳で薙ぎ払う。

「腕をあげたな太一」

「はいっ道来さん」
一之助がその様子を見て微笑む。
太一殿は道来殿の背中をずっと追い、共に修業に励んでいた。
時には道来殿が知らない所、必死について行こうと鍛練に励んでいた。
誰も知らない所で太一が日々努力していたのを一之助は知っていた。

「お前達の腕力も凄いな」真堂丸が鬼達を見る

「ああ、俺たちの誇りさ」

その時、平野に声が響き渡る。

目の前には馬にまたがる大帝国の軍勢。

ヒョオオオオオオオオーー

その先頭に出て来たのは、鬼道千閣

「ようやく会えたな、貴様が真堂丸、ほぅ鬼達まで鬼神を裏切りこいつの仲間になったとはな、滑稽だ」

「お前が鬼道か」

「成る程、何処と無く、若き日の一山を思い出させる」

「一つ聞こう、俺の部下になるつもりは?」

「ないな」

「ふっ、そう言うと思ったぞ」

「しかし、大帝国の権威も落ちたものだな」真堂丸の横からの声

鬼道が見つめる。
あいつが道来、秀峰を討ち取った男か。

「国中の兵に声をかけ集まったのがこの程度か、これじゃあ国を支配するなど難しいんじゃないか」

「ふっ、貴様らのせいで国の人間が随分と希望とやらにすがった様だな。もしかしたら真堂丸の一行なら大帝国に勝てるやも、などと信じられない戯言にすがるとは」

「再び、恐怖と力で、一からこの国を支配しなければならないな、貴様等を始末したら今回力を貸さなかった者達は見せしめに殺すつもりだ」

「一つ、貴様等の業績を褒めてやろう。あの十からなる化け物共を良くもまぁここまで撃破してくれたものよ、おかげで我々の名も随分と地に落ちた」

「まだ向かってる兵が増えるにしても、この場に集まった兵がたった十万弱、信じられない状況となったんだからな。
以前なら即、何を捨ててでも我々の命令は絶対だったのだが、この場に集まるのに遅れるなど我々の権威も失墜したものよ。
フハハハッだがこの兵に対するはたった四人と50程の鬼共か?他のお仲間は逃げ出したのか?。
貴様等が命をはって守ろうとする国の人間は誰一人、力をかそうと立ち上がらないのか?
恐怖に支配されるだけの人間、なんとも哀れのぅ。
他人にだけ頼り、任せ、自分が傷つく様な事はしない、ただの傍観者共、そんな人間共を生かして何になる?
良いのだぞ、この期に我々にとりいれば良い地位をやろう。そして無能な人間を好きなだけ殺させてやる」

ヒョオオオオオオオオオオーー

「言ったろ、貴様に寝返るつもりはねぇんだよ」

「ハッハッハ、さすがに威勢の良い奴だな、この数の兵を前にしても何一つ揺るがんか」

「では、全兵に命ずる、この蟻共を殺せ」

「鬼道様、弓部隊に命(めい)を」

「先程ので分かったろう、いくら弓をはなてど無駄な事、殺るなら直接刀を握り向かって行け、動きが鈍くなり始めたら再び命ずる、行けっ」

「ハッ」

「出陣」

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~~~~~~~~~~

「鬼達、一つ無理を聞く。人間共を殺さずに気を失わさせるまでで戦う事は可能か?

「全く貴様と言う奴は」青鬼がほくそ笑む

「我々も、今更人間を殺そうとは思わん」

「すまない」

ザッ   真堂丸が先頭に立ち、刀を抜いた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~~

辺りの空気が一変する

凄まじい殺気と威圧感が全兵を包む

その瞬間信じられない事が起こる

なんと、十万を超える兵の脚がぴたりと止まったのだ。

前に進めない。

なんだとおっ?

我々は一体何をやっているんだ?
何を怖れていると言うのだ?
たった一人の人間に、この数の人間が立ち向かえないとでも言うのか?
そんな、馬鹿なあああああああっ。
人間の本能、魂が叫んでいた。
こっ、怖いっ、私には天地がひっくり返ってもこの男に勝てない。
個々の人間の恐怖感が自分達の優位性をかき消し、凌駕していった結果、数の意味はなさなくなった。

次の瞬間、スパアアンッ

大帝国の兵の首が地面に落ちる。
「貴様等それでも本当に大帝国の兵か?死ぬ気で進まんかいっ」
鬼道の叫びに、兵達は恐怖を押し殺し突き進む。
いや、むしろ後陣の人間に押しきられた。
前方の兵は全滅だろうが後ろの我々は大丈夫だ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおお~~」

鬼道はしっかりと真堂丸を見つめていた。
真堂丸が一体どれほどの実力者なのか、一人の人間として興味があったからだ。

スパアアンッ

突っ込んで行く兵達が軒並み吹き飛ばされて行く

なるほど、これは思ったよりも長期戦になるな。

ニヤリ
「楽しませてもらうとしよう、怯むな、相手は少数、じきに疲れてくる、奴らの首をとった者には一生涯の富、地位、名声、欲しい物はなんでも与えようぞ」まぁ、そんな物を与えるつもりはないがな。

「おおおおおおおおおおおおおお~~っ」兵達の士気が上がる。

「やった、これで奴らを殺せばオラの家族は飯が食べられる」

「あの首をとれば、私は幹部になれる」

「真堂丸を殺せば俺の名が売れる」

「恨みはないけど、あいつらをやつければ僕たちの村は存続させてもらえるんだ」

「大帝国こそ常に正義だ」

「我々こそ正しいのだ」

兵達にもそれぞれの理由があった。
人間、人の精神性はそれぞれ違う、正しさも所詮自分だけの考え、そんなものは人、時代、宗教、国柄、状況によりいくらでもひっくり返り、異なる。
社会、一般的な考えこそが正しいと押し付け一体何になる?
そもそもそれこそが絶対に正しいと言う保証がどこにある?
法や規則など所詮人間が作ったものにすぎない。
唯一の答えは各々が自身の心に問いただせねばならない。
鬼道はこれまで沢山の規則を作っていた、無論それは大帝国にとって都合の良いものとなる。
多くの人々はその価値観や、植え付けられてきた情報こそが正しいと、それだけをもとに生きていた。

ザンッ   スパアアンッ

「うおおおおおおおおおおおおおお~~」

鬼道はこの時ニヤリと笑う。
真堂丸達に汚点はなかった。
それは鬼道の恐るべし執念が生んだ一つの策。
鬼道が人々に与えたいもの、それは絶望。
そして、自身の完全なる勝利。
確かに、村人を殺すため、この先に抜ける道はここを通る以外にはない、それに、鬼道にとって真の目的は真堂丸を殺すことにある、村人の命などいつでもとれるし、実のところどうでも良かった。
だが、真堂丸に絶望を与え、完全勝利を我が手中におさめる。
その為にたった五人の精鋭を刺客として送り込むことにしていた。
道は地面の中、五人はひたすら穴を掘り続けていた。
村人達の所に向かう別の道を作る為
恐るべし執念。

現在、村に続く唯一の道の前に壁の如し、真堂丸達は立っている。

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴー

キィンッ キィンッ  キィンッ

確かに一人一人は強くはない、しかし、いつまでこの数を相手にもつ?それに全員を倒してても、らちがあかない、何とかして鬼道に到達しなければ、道来は思う。
だが、この数を前にして、先に進むことが出来ない。
せめて、援軍があれば。

キィン  キィン  ズガアアンッ   キィン    キィン  

その少し前、文太の所では。

「あなたが文太様ですか?私達は先ほど、この道の先を歩く方に文太様がこちらにいると」

真堂丸だ。
「あなた達は?」

「私達は大帝国の支配が嫌で逃げて来たのです、あなた様なら、なんとかして下さると思って」

その時、辺りに怒鳴り声が響く
「おいっ、婆あ 笑わせるんじゃねぇ、俺たちは真堂丸さんと文太さんと、共に大帝国と戦う為に来たんだ」
それは刀を持つ、三人組の中の一人の大男だった。

「ところで、お前よぅ、文太さんはどこだ?凄い強いと聞いたぜ」

「あのぅ、僕が文太ですけど」

「えっ?」

「とりあえず、話は後です。今はみんなを連れてこの先に逃げます、ついてきて下さい」

男の表情が変わる
「ああっ」ギロリ

「てめぇが本当に噂に聞く、文太さんか?」


ヒョオオオオオオオー

男の手には刀が抜かれ、握られていた。



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