文太と真堂丸

だかずお

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~ 大帝国との戦 ~

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ゴゴゴゴゴゴーー

文太の目の前、刀は向けられていた。

「お前があの文太さんだと?笑わせる、戦わずして逃げるのか?そんな覚悟もなしに大帝国と戦ってきただと。いいや、俺たちは戦場に行くんだ」

くるっ  文太は背を向け「皆さん、僕についてきて下さい」

「貴様、俺を無視するか、ぶった斬るぞ」男が刀を振りかぶり、辺りからは悲鳴が響く

「きゃああああっ」

ギロリ

 文太が振り返る「今は時間が惜しい、斬るなら斬れ。ただし、心臓を貫いたとしても、僕は死んでも止まらないぞ」
凄まじい、眼力と気迫に男は気がつくと地面に刀を落としていた。
凄い迫力、この人は本気で命を据えここに立っている、馬鹿な俺だって面構えをみりゃあ分かる、その人間の生き様くらい。
笑わせる、本当に覚悟などなかったのはどっちだ?
俺は何をしていた?
大帝国と戦うと、口では言って生きてきた。
だが、本当に今まで大帝国と向き合い、戦っていたのは誰だ?
それを口だけでなく行動にうつしていたのは誰だ?
俺は何かしたか?
俺はようやく期待出来る人間を見つけて、そこにのっかり行動しようと動いたばかり。
覚悟が違った。気持ちが違った。
本気で心を決め生きていたのはどっちだ?
誰の目からも明らか、いや、誰の目など関係ない。
そのことを痛いくらい自分自身が認識している。
それすら誤魔化し、自身の体裁の為にここで茶化したら本当に俺は大事なものをいつまでも掴めぬまま愚かな人間で終わる。
そんなのは、これ以上嫌だ。

バッ
 男は地面に頭をつけた。
「すいませんでした、己の姿勢こそが正すべきでした。
この寅次、文太さんの力になる為動きます、どうかお許し下さい」

寄り添う二人の男
「兄貴」
二人も地面に頭をつける。

「ありがとう、力をかして下さい」文太は優しく微笑んだ。

その表情に三人の心は救われた様、とてつもなく嬉しくなり顔を見合わせた。

「さあ、皆さん僕についてきて下さい」

かつて、真堂丸と道来の命を救った村の医師、作蔵が後ろで見ていた文太の母の肩を叩き微笑む。

文太、あんたは強くなったね、あの泣いていたばかりの頃が嘘の様。
グッ 母の表情も変わる。
「みんな絶対に大丈夫だから、信じてついてきて」文太の母が皆を鼓舞する様に言った。

「おーーーっ」

真堂丸、僕達も頑張るよ、すぐに向かうから。


ヒョオオオオオオオオオーー

大帝国との死闘が繰り広げられてる平野

「ばっ、化け物だあいつ、あんだけの人間をやったのに息一つきらしてねぇ」

「本当に人間か?」

「それに周りにいる奴らも強ぇ」

「人間が鬼に勝てるか?」

「まさか、これだけの人間がいて、どうしてあの道の先に行けないんだ」

大帝国の前方にいる兵達はあまりに人間離れした敵の強さに、こんなことを感じていた。

不可能

我々個人が奴らに勝つのは不可能、と言うことは我々は無駄死に。
後方の連中だけに、奴らを討ち取る機会がくる。
前方の兵は立ち向かうのを躊躇し始める。

その時だった。
「後方から前に押し出せ」鬼道の命令が伝えられる。
前方の兵は慌てて逆走しようとするが。
鬼道は続ける
「逃げる兵は、もはや大帝国の兵ではない斬り捨て」

ズバッ   ズバッ   

「ちっ、むごい事するでごんす」

キィンッ  キィンッ  

大帝国の兵は次々に地面になぎ倒れていく。

「ちっ、思ったより時間がかかるな、まぁ良い、楽しませてもらうとしよう」鬼道はじっくりと構えていた。

キィンッ   キィンッ   キィンッ

「ハアハア、きりがねえ、次から次にでてくる」太一が言う。
今はまだ良い、だが疲れて来たら一気にやられる。
持久戦、これは相手だけではなく、己との戦いでもある。あきらめた時点で待ち受けるのは死。
真の兄貴や道来さん、一之助は後どれくらいらいける?
ええい、余計な事を考えるな。
今は自分に集中しろっ。

「おおおおおおっ」 キィンッ   キィンッ

「道来殿、余裕はあるでごんすか?多分あっし達が今もっとも警戒するのは」

「ああ、そうだな」

キィンッ  ズバッ

道来も、一之助のその先の言葉を理解していた。

戦局が最も厳しくなる時、それは・・・

白い刃と怖れられる幹部達が到着した時。
奴らが来る時に自分達が疲れきっていたら、ヤバい。

大帝国の兵達は次々に倒れて行くが、真堂丸達は一人として殺してはいない、しかし、大帝国の兵達は、さすがに倒れた仲間を見てそれには気づいていなかった。
自分もあの倒れた兵の様に死ぬんだと。

「うおおおおおおおおおおおおっ」

ズバアアアッンッ

真堂丸の刀一振りで何十と言う兵が地面に倒れ、吹き飛んで行くか。
横で見ていた青鬼が思う。
やはり、こいつは凄まじい男。あの鬼神に勝てる人間が居たとは夢にも思わなんだ。
しかも、あれだけの人間を同時に倒し、急所は避けている。
ふっ、本当に頼もしいぜ。
これなら、もしかしたらいけるかも知れない。
俺たちは全兵を倒す必要はないんだ。
なんとかして鬼道を先に討ち取れば、状況は変わるかも。
ここは、俺たちで防ぎ、真堂丸を鬼道の元に行かせる、これが良策か?
青鬼が思い、それを伝えようとした時だった。

「っしゃあああっ」

ズバアアアッンッ

「ぬおっ」青鬼に向けられた、強力な一振り。

「こいつは?」

そこに立つのは全身白ずくめの存在

「おいでなすったか」一之助が言う。

「私は幹部の入道雲、大帝国に仇なす者は私が始末する」

太一がハッとする、入道雲、さすがに聞いたことがある名だ。
依頼解決の稼業をやってた時だったら間違いなく、手を出さなかった中の一人。
首斬りの入道雲、奴に殺された同業者は数知れず。
奴の持つ大きな鎌が振りかざされた場所には首だけが残る。

「君が真堂丸だね、いやぁーまいった、君を初めて見た時を思い出すといまだに震えがくるよ」

太一は思い出す。
そうか、俺が殺されかけ骸に助けられた時、俺たちはこいつら幹部に出くわしていた。
全身が白の衣装で覆われてるから、分からなかったが。
だが、あの時、奴らは真の兄貴と骸に手を出せずに逃げた。
そんなに怖れる必要はない?はずだ。

「あの時より、何倍も強くなっているのでお気をつけて下さい、三國人様達に鍛えあげられましたから」
入道雲は幹部の衣装を脱ぎ捨て、姿を現した。
髪のない頭を手でかき笑っている。
特徴的なのは足の膝辺りにまで伸ばされたあご髭。
年は40くらいだろうか。

太一が思う、こいつが入道雲。

とてつもなく大きな鎌を構えている。
背後から大帝国の兵達が「入道雲様、ここは我らが」

突如、兵の首がゴロゴロと地面に転がり始める。
「邪魔すんなよクソが」

道来が叫ぶ「真堂丸、ここは俺が引き受ける」

そう言った時だった。
「あっ、あががががががが  容赦ねえな」
入道雲の右腕が吹き飛んでいた。

「無駄な労力は使ってられないんでな」

驚く道来

うおっ、さっ さすが、真の兄貴、太一が心の中叫ぶ。
すげえ、あれだけ国中に名が響き渡る強者でも、大帝国の幹部でも、真の兄貴にとっちゃあんなに簡単に。

見たかよ大帝国    これが真堂丸だ!!!

「くっくっく、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバいヤバいよ、この私が震えてる、だけど君はまだ私を殺してはいない、大帝国の幹部が片腕なくしたくらいで動じると?」

「勝負はこれからだよ、真堂丸君」ニヤリ

ザッ 真堂丸の動きが一瞬止まる

「鬼達、一之助、太一、真堂丸が戦ってる今、俺たちが大帝国の兵を全力で死守する」道来が叫んだ。

「おうっ」
真堂丸が動かない、相手も大帝国の幹部、いくら全盛期とは違う面々とは言え、只の雑魚には大帝国の幹部は、つとまらない。
道来が真堂丸の抜けた場所に、変わりに立つ。

さすが、道来殿、先生と息がぴったりでごんす。

「真堂丸君、何故私の首をはねなかった?腕ごときで私が戦意喪失でもすると?」

ギロリ
「やれやれ、さっき首はねれたろ?もう、さっきの様な隙はやらないよ」入道雲の目つきが変わる。

「この大きな鎌が通った後は、首と胴体がバラバラに別れるんだ、見たいな君のそれ」

ヒョオオオオオオーーーーーー

「まぁ、待てよ入道雲、そう焦るな」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオー

「おう、女郎蜘蛛か、正直に言おう助かった」

背後に立つ、もう一人の幹部。
新たに幹部が到着する。

「前回の遭遇から学んだ事がある、この男相手に一人で戦うのは阿保だよ、勝機はない。だが二人ならどうだい、無数の兵も有効利用しなきゃね、あはははは」

その頃、国中に広まるこの戦の最中
また一つ不吉な事が起こっていた。

「やはりなぁ、幹部七人に減らしたがな、お前達二人にも手伝ってもらうとしよう」

「三國人の旦那、俺はよぅ幹部なんて、どうでも良いんだよ、ただ強い奴とやれればよぉ」

「見返りに何をくれるのや?三國人」

「また旦那と共に暴れられるのか?あー、一山は俺が殺したかったあ、だけどよ、やべーな真堂丸とか言う奴はよぉ、あの聞かん坊の鬼神斬っちまったんだからな」

その巨体の男と女は、かつて三國人が国を暴れていた時の、最も信頼出来た仲間

「話は決まりだ、さあ我々で大帝国を使い、いよいよ国を支配しようとするかね」三國人と呼ばれる三人の男は、三人が背を合わせ円となり不気味に立っていた。

その頃、とある町の店の中

「あーあ、唯一の希望だったけど、やっぱ馬鹿だね。大帝国を敵にしちゃあ終わりだよ。あの真堂丸とか言う野郎も威勢は良かったみたいだが、もう終わりよ、所詮は無駄なんだよ」

どんっ何者かが肩に手を置く。

「おいおい、やってもいねーで、そりゃないだろ兄ちゃん、分かんねえぞ」ニヤリ

大きな身体が席を立つ
「さてと」

「なっ、なんだよっ、やっ、やるってのか」

「お前と?ガハハハハ ないない」

すると背後から声が
「おいっ、何してるはやく行くぞ、大同」

「おおっ、すまん元郎、今行く」

それは、真堂丸達が女狐と戦った時に共に戦った者達の姿だった。


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