文太と真堂丸

だかずお

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~ 予兆 ~

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キィンッ   キィンッ   キィンッ  キンッ

「あいつらを殺せーーーーーーーっ」
大帝国に逆らう者は皆殺しだ。
一向に減ることのない大帝国の兵達。
そして、真堂丸の前にはばかる二人
入道雲、女郎蜘蛛、共闘する大帝国の幹部達。

一方、真堂丸が今までしていた事を代わりに請負う道来。
真堂丸の空いた穴を埋める様にその場に立つ。
ちっ、やはりあいつは凄いな。
とてもじゃないが、あいつの様に同じ数はこなせない。
だが、全力を持ってここを死守する。

「うおおおおおおおおおおおーーーーっ」道来が叫んだ。

ヒョオオオオオオーーーー ヒョオオオオー

「入道雲あんたもかい?」

「ああ、寒気すらする」

「全く笑かせてくれる、大帝国の幹部が二人も揃って一人の敵にビクついてるのだから」

「同時に行こうかね」

ザッ
「お前達、覚悟はあるな。今は少しの時間も体力も惜しい、お前達は覚悟、自分達の意思のもと、俺に刀を向けている幹部、容赦なく行くぞ」

「震えが来るねぇ、なんと言う威圧感、そして愚問」
入道雲が真堂丸を睨みつける。

「あまり我々の事を舐めてかからないほうがいいわよ」女郎蜘蛛が牙を向ける。

ギロリ
真堂丸の視線が二人に向く

女郎蜘蛛は瞬間、驚きのあまり、腰が抜けかける事となる。
何故?何故だ?何故なんだ?
真堂丸と言う男、私よりも小さな身体で何故?
あの天にも届く程、大きく見えるのだ?
何故この私がこんなにも小さく感じるの?

ドンッ
女郎蜘蛛は隣の入道雲に蹴られ、身体が横に動く。

スパアアンッ 真堂丸の刀が空を斬る

ハッ「すまない」女郎蜘蛛はそう言い、すぐに前を向いた。

今、入道雲に蹴られてなかったら、自分は既にこの世にいなかった。

女郎蜘蛛の蜘蛛の如し長い手足が、真堂丸に襲いかかる、真堂丸は女郎蜘蛛の手足を即座に刀ではじく、瞬間、その上から、入道雲の姿

「もらったあ」

スパアンッ

キィンッ   

真堂丸は持っていた鞘で、入道雲の太刀を防ぐ

「ちっ」

それと、同時に入道雲は突如、前のめりに地面に倒れる「すまない」
女郎蜘蛛が入道雲の両足を引っ張り地面に倒していたのだ。

何故?

そう、もし女郎蜘蛛が足を引っ張っていなかったら。
入道雲は真っ二つになっていた。

「ちっ、嫌だねぇ、こんな怪物と戦わなきゃいけないのは」入道雲が言う。

女郎蜘蛛が叫ぶ「いったん我らは引くぞ」

「そうだな」

すぐに後方へ、全速力で逃げ出す。
今はやめておこう、あいつがもっと疲れてからじゃなきゃ、我々は確実に殺される。
奴を疲れさせるのは捨て駒の兵にやらせればいい。
ニヤリ、女郎蜘蛛は笑う。

一部始終を遠くから、鬼道は見ていた。
成る程、幹部二人じゃ相手にならぬか。
それにしても、怖ろしい男だ。
確実に全盛期の一山以上だな。
鬼道は少し悩んでいた、どうにかして奴に三國人の三匹を斬ってもらいたい。
このまま我々が奴らを殺しても、最後に笑うのは三國人だ。
この鬼道は、一生奴等の下にいる様な男ではない。
なんとか方法はないものか?

真堂丸が、道来の元に戻る。
「道来すまない」

「大丈夫だ、奴らは?」

「一旦ひいた」

「そうか」
道来の額からは大量の汗が溢れ落ちていた。
守るだけじゃ、いずれ体力に限界が来て負ける、なんとかしなければ。
この数を前に真堂丸なら、鬼道の元へ進めるか?
さすがにこの数の兵を蹴散らし、一人鬼道の元までは厳しいか?
だが、出来ねば、このままじゃいずれ全滅だ。

真堂丸が叫ぶ
「太一、一之助大丈夫か?」

「ハアハア はいっ、まだいけます」

「こちらも、大丈夫でごんす」

「鬼達」
真堂丸が鬼達の方を見る

青鬼が「なんとか、こっちもまだ死者は出てない」

「だが、このままじゃ、なんとかしなければ」

「ああ」真堂丸が言った。

「お前達、俺がここを離れ、一気に鬼道の元へ行く、それでも大丈夫か?」

ニヤッ「ああ、問題ない」皆が叫ぶ

「お前に任せる」

「ああ」

だが、その時だった。
いやな、風だった。
ガラリと見えていた風景が一変し変わってしまった気がした。

本当に最悪の時間に、道来の視界に奴らがはいる。

「ちっ、間の悪りぃ」太一が囁く様に言う。

目の前には全身を白で覆う七つの影
なんと、現大帝国の幹部七名がすべて集結していたのだ。

「これなら、奴らを皆殺しに出来る」笑い雄叫びを上げて立っている入道雲

「女郎蜘蛛ともあろう者が、二人がかりで手が出せないとはな」ほくそ笑む龍童子。

「どうする、七人で一気に真堂丸を殺すか?」

「おいおい、女郎蜘蛛よ、どれだけビビってんだよ、三人で良いだろ、後は残りのカスどもを斬ってから向かえば戦は終わりだ、だるいのは好きじゃねえんだよ」
そいつは、新たな大帝国幹部、鳳凰(ほうおう)真っ赤な刀を肩にかかげた。

「お前は真堂丸の力量が分からないのか?」夜叉が言う。

「馬鹿野郎、ここから見てりゃあ分かるっての、俺がやりたくねえから言ったんだよ」

「僕ちんやりたいなぁ、真堂丸と」そいつは首が二つはえている人間、一つの顔は話し、見、聞けるのだが、もう一つの顔は、顔中、切り刻まれ、まるで死んでいる様だった。表情は変わらず目も閉じたまま、動く事は無かった。
奴の名は双頭首の柳(やなぎ)として国中に名を轟かせる、凄腕の山賊として怖れられる存在。

「ああ、運命」笠をかぶるその男の目は生涯外の光景、光を目にすることは無かった。
盲目の和尚と呼ばれるこの男は、一山の時代から名をはせた凄腕の剣客。
一山とは、とうとう相まみえることは無かったが、この男の名も同時期、国を巡る。
名を花彩(かさい)と言った。

正直、まずいでごんすね。
今あいつらがこっちに来たら、一之助の額から汗が流れる。
こいつは、本当にまずい、先生どうする?
ここは正念場でごんすよ。

鳳凰が歩き出す「あの小僧は一番弱い、あいつを俺は殺るぜ」指差したのは太一。

「真堂丸、あの者は私がやろう一人でいい」

「何じゃと、花彩 正気か?」夜叉が驚く

「敗北もまた運命、それもよし。片腕くらいは置き土産を残すつもりじゃ」

「なんだじゃあ、僕ら簡単すぎじゃない」柳がケラケラ笑い出し、自身の死人の様に動かない一つの首を引っ張り言った。

「あの道来とやらは強い、秀峰を斬ったのは奴と聞いたが」龍童子が刀を抜く。

「じゃあ、残りは鬼退治かな、まさか鬼神の部下どもをやれるとは最高じゃないか」女郎蜘蛛が笑う。

「さて、行くか」龍童子が言った。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオー

真堂丸が叫ぶ「皆、気をつけろ」

来るっ、幹部が来る。
いくら今の幹部が、全盛期より戦力が劣ると言えど、奴らは国中を震えあがらせてきた名のある奴ばかり。
道来が叫ぶ「太一、俺の近くにつけ」

「はいっ」

「あっしも、せめて一人くらいは倒さなきゃいけないでごんすね」

鬼達も構える「来やがるぞ化け物連中が」
真堂丸が戦ってたから、簡単に戦える様に見えるが、実際はそうはいかないな。
青鬼が叫ぶ「みんな死ぬな、死ぬんじゃねえっっ」

「おおっ」

その瞬間だった。

「ばっ、ばかなっ、おいっ 」道来は叫んだ。

ヒョオオオオオオオオオー

七人が動き散るよりも速く、前に出た。

それは、真堂丸の姿。

七人の幹部の前、男は一人、既に刀を向け立っていた。

「まさか、我々七人を一人で」龍童子の足が止まる。

「さすがの真堂丸でも、それは無理だぜ」入道雲が言った。

「まぁ、構わないが私は」女郎蜘蛛が真堂丸をギロリ睨みつける。

だが実は、真堂丸にとっては一番望ましい形だった。
幹部達に仲間の元へ向かわれた方が、自分にはどうにも出来なくなったからだ。

幹部たちが真堂丸をすぐに取り囲む。

「さすがに、無茶だ先生、何人かをこっちに」一之助が叫んでいる。

「くかかかっ くかかかっ嬉しいな、あの真堂丸の首が取れるなんて」柳が斧を握りしめる。

「首は早い者勝ちじゃな」夜叉が鎌を持つ

ヒョオオオオオオオオオオオー

しっかし、こいつは怖ろしい域の男よのぅ、我々七人がたった一人の男を、しかも取り囲んでいると言うのに、ピクリとも動けんのだからのぅ。
花彩は思う。
こいつは逆に私らが動けなくなり不利な様なものか。
この、真堂丸と言う男、これを最初から狙ってたな、我々に散り散りになられた方が嫌だったと言うこと。
大した、たまじゃあないかい、仲間の為に我々七人を躊躇なく自ら望み、一人で相手にするとは。

悪いのぅ、どれだけ卑怯と言われてもやるよ。

「真堂丸、敗れたり」ここに主の見事な刀の足跡を我が心に記し、暮石とす。

ズギャャアアアアアアアンッ

凄まじい速度で飛び出したのは花彩だった。


その少し前、三國人と二人の怪物。

三國人を旦那と慕う、一人の男は巨体を揺らし全力で走っていた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~~」
名をバピラと言った。
かつて三國人と共に国を暴れ破壊した一人

「三國人よぉ、あいつに強い奴がいる戦があるなんて言ったら向かうだろ」その巨体の女もまた、三國人の昔の悪友、名を不知火(しらぬい)と言う。

「構わん、奴が片付けてしまうかもなぁ」

「あいつが行っちゃえば、終わりさ」

ドスンッ   ドスン  ドスンッ」

「ああああああああああああああああああああ」

「強い奴とやりテェェェんだよー」

叫びながら、全力で走る様は、まさに怪物
その光景はまるで、戦場に嫌な雲が立ち込み始める予兆を告げている様だった。

この頃より、戦場が地獄の空気を帯始める。


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