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~ 不穏 ~
しおりを挟む真堂丸を取り囲む七名の幹部達
先陣を切り、動いたのは花彩
真堂丸は気づく、この野郎っ。
そう花彩は最初から真堂丸を斬れるなどとは思っていなかった。
花彩の選択は一つ、自らの命を犠牲にし、腕を斬る。
さすれば確実に後の者が真堂丸を殺れる。
彼の死期は近かった。自らの身体の調子くらい分かっていた。
己の人生とは何だったのか?
ひたすら刀で人を斬り、残ったものは?手にしたものは?
国中に響かせた名声? 探求し続けた技術?
死んでは何も持てなくなる富?
一体己の人生とは何だったのだろうか?
そんな中、大帝国から誘いが来る。
「真堂丸を斬る機会をお前にやろう」
鬼道のその言葉に胸が高まった。
「真堂丸」
自分の歩んだ人生を知るには恰好の相手
己が得た刀の技術、刀の道を試せる最高の機会。
己の人生とは?の答え。
「良いだろう」
実際、真堂丸を目の当たりにして花彩は驚いた。
これ程の男が同じ道、しかも同じ時を生きていたとは。
奇跡
最期の己の足跡、真堂丸を斬る機会を生んだ。
それで結構、それで充分。
この男の腕を斬ることは私の人生に値する。
さあ、真堂丸 私の首を斬れ!!
スパアアァァァンッ
「なにっ」真堂丸は花彩の刀をかわしただけで、攻撃してこなかった。
真堂丸を取り囲む幹部七名全員に戦慄が走っていた。
うっ、嘘だろ?幹部達は想像も出来なかった事を同時に痛感してしまう事となる。
なんと、真堂丸は自身の片腕を代償にすれば同時に七つの首を斬ることが出来ていたのだ。
全ての感部は気付いた、もし奴が今刀を一振りしていたのなら我々全ての首は…
だが、奴はそれをしなかった。
我々は死んでいた。
もし、あいつが刀を振っていたら。
何故?しなかった?
我々七人を同時に斬る機会などもう二度と。
花彩は真堂丸の呼吸を読んでいた。
何故?片腕をかばった?
こいつっ、本気か?
片腕を失うということは、この戦を捨てること。
こいつ馬鹿なのか?
本気でこの戦に勝つつもりなのかっ?
本当に、この数を相手に本気で勝つつもりで戦っていたのか?
「けっ、野郎っ」龍童子の額から汗が流れる。
七名の幹部達は即座に確信する。
我々は選択肢を誤った。
散り散りになり、最初は仲間から殺るべきだった。
こいつの間合いの中にいる今は、もう駄目だ。
ここから誰一人として、動けん。
下手に雑魚の兵士達にこさせても、我々が余計に奴を捕らえられなくなり、瞬く間に斬られる可能性がある。
迂闊だった。
まさかここまで強いとは。
夜叉が言う「だが、焦るな、動けないのは奴とて同じ、こうしてる間にも戦場は動いていく、こいつの仲間が死ぬまでの辛抱」
「冗談でしょ、後、何時間こうしてろって言うんだよ」柳は一瞬たりとも真堂丸から目を離そうとせずに言った。
「集中力と気力の勝負でもあるな、一瞬でも気を抜いたら首が飛ぶと思いな」女郎蜘蛛が叫ぶ
「やれやれ、本当にとんでもない者を相手にしちまった」鳳凰が歯をくいしばる。
遠くから見ている鬼道「本物の化け物だな、あれは、我々大帝国に入っていたなら、我々は無敵だったろう」拳を強く握りしめる。
ここで我々も幹部七名を失いでもしたら、厄介な事になるな。
信じらないことに、鬼道は圧倒的有利なこの状況の最中、怖れていた。
あいつならよもや本当に・・・・
ヒョォオオオオオオオーッ
「ちっ、先生の加勢に行きたいが」
あっしは先生を信じ、ここで自分の出来ることを全力でやるのみ。
キィンッ キィンッ キィンッ
「うおおおおおっ」 ズバンッ
道来が刀を振りかざし、大帝国の兵が吹き飛ばされる
ズゴオオオオオオンッ
鬼達の人間離れした力に怯む兵士
「こいつらも充分人間離れしてやがる」
「ちくしょう、どうしてこれだけの人数がいて、前に進めないのだっ」
「ハアハア、太一大丈夫か?」
「こっちは大丈夫です、道来さんは?」
「ああ、大丈夫だ」
二人は背中合わせに戦っている。
道来も太一も互いに信頼し合っていた。
自身の背中は完全に相手に任せていたのだ。
こいつら、どうして他人をこんなに信頼し合えるんだ? 二人を見ていた大帝国の兵は思う。
どっちも互いの背中を相手に任してるが、俺には絶対に出来ない。
もし、後ろの人間がしくったら?自分の命惜しさに逃げだしたら?防ぎきれない攻撃が来たら、自分の命をはって後ろにいる人間を守ろうとする奴などいるのか?
俺には他人をあそこまで信頼なんか絶対出来ない。
仮にだ、仮に信頼したとしよう、だが怖いだろう?
相手も人間、失敗(しくじ)る事もある。
刀を防ぎきれなくて自分に当たるかもしれない、戦いながら常に背後が気になるのが普通だろ?
だが、奴らは全く背後は気にしてねぇ、本当に相手を信頼出来なきゃ、あんな風には戦えねぇ。
ああ、いるんだなこういう人間も。
俺には一生出来ねぇだろうな。
なんでだろうな?少し羨ましいのはよ・・・
キィンッ キィンッ キィンッ キンッ
「お前達まだいけるか?」青鬼が鬼達に向かって叫ぶ。
「はいっ」
「青鬼さん、ありがとう。俺達嬉しいっす」
「? なにがだ?」
「俺達、鬼神さんの時、こんなに心配された事なんてなかったから、こんな俺たちの事でも心配してくれて」
馬鹿野郎、大馬鹿野郎達 当たり前じゃねえか。
お前達、命はって俺の我儘(わがまま)について来てくれ、こんな俺を慕ってくれて。
感謝しなきゃならないのは俺のほうだ。
その頃、ののは全力で走っていた。
私にも何か出来ることがある、人を見つけては共に大帝国と戦って下さいとお願いしてまわっていたのだ。
「お前頭おかしいのか?大帝国と戦う?失せろ」
ののは誰に何も言われても止めること、あきらめる事は無かった。
少しでも多くの人に伝える為、裸足で全力で走り続ける足の裏は血まみれになっていた。
ヒョォオオオーーーッ
真堂丸は動けない状態だった、七名の幹部に囲まれ。
無論仲間のことも気になるが心配はなかった。
仲間を信頼していたから。
己はここをなんとかする。
ヒョォオオオオーーー
幹部達も誰一人、気は抜けず、ピクリとも動けない状態であった。
これは、互いに動けず、長期戦となる。
どちらが先に心が折れる?額から汗を流す花彩。
その頃、文太の所では。
文太は先頭を歩き皆を誘導していた。
ここから、更に道は険しくなる。
果たして老人、子供達がこっから先を歩けるか?
しかし、もう進むしかない。
文太は焦っていた。
真堂丸 真堂丸 真堂丸
きっと、みんなも戦ってるんだ。
この村に戻ってこないのが何よりの証拠。
僕もすぐにでも向かいたい。
「ねぇ、お兄ちゃん さっきの話本当?」
「えっ?」
僕は歯をくいしばる。
「本当だよ」
子供は泣き始めた「嘘だ、真のお兄ちゃんが私達をおいて逃げたなんて」
「大丈夫、この先に行けば必ず安全だから、行くよ」
「誰だって命が惜しいさ、せめちゃならねぇ幸子」
「だがよ、真ちゃんが戦うなんて言ったら俺達だって命を捨てて戦ってたんだぜ」
「俺は嫌いだい、逃げちまう弱虫なんか、俺は戦って死ぬ覚悟くらい出来てたんだい」
「そんなこと言うもんじゃない」
先頭を歩く、文太の瞳から溢れる涙
文太の背中を見る母は、全て分かっていた。
あの優しい真ちゃんが私達を見捨て逃げられるはずはない。それに他のみんなも。
戦いに行ったんだね、隠してるのは私達を戦に巻き込まない為。
この村の人間が事実を知ったら。
武器を手に取り、すぐにでも戦場に向かうから。
真ちゃん達は村人にとって、もう家族だから。
ここの村人は家族を絶対に見捨てたりしない。
文太、本当は、すぐにでも駆けつけたいんだね。
作蔵さんも気づいていた。
「我々は助けられてるんだ、本心では、私一人でも武器を取り、今すぐにでも彼らの元に駆けつけ力になりたい。だが、ここまでしてくれてる彼らを前に自分は」
「作蔵さん、今は息子と真ちゃん達を信じましょう」
文太の母の力強い笑顔と言葉だった。
「そうだな、ありがとう。少し心の迷いがとれた」
一番後ろを歩く、寅次
「兄貴、聞いたか?」
「真堂丸さんが逃げたって話」
「本当かよ」
「六吉(ろくきち)に良(りょう)お前達、あんな嘘も見抜けないのか、訳ありだ」
「本当ですかい」
「今は文太さんを信じて進め」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーー
そこは断崖絶壁の細い道
「ナンマンダブ ナンマンダブ」
「ここを通るのかい?」
目の前に見える吊り橋は壊れかけ、今にも崩れんばかり。
眼下に広がるのは、深く底の見えない口を開く谷。
「一人ずつ、ゆっくり行きましょう、小さい子や無理そうな人は、僕が一緒に歩くから心配いりません」
「行きますよ」
ヒョォオオオオオオオオオオーーーーーッ
それは平野の地の下、ひたすら地面を掘り続ける五人の兵士、少しずつではあったが確実に文太達に続く道を掘り進めていたのだ。
この日の為に訓練された、五人の精鋭は淡々と任務を遂行する。
鬼道は真堂丸に絶対なる絶望を与える為、選ばれたのは少数。
気づかれぬ間に通り、背後から村人為の死体を奴に突然、突きつける。
呆気にとられるだろう、いつの間にと。
くははははっ、絶対にバレてはならぬ。
少数、そしてあいた穴は他の者は通るな、この五人で村人全滅は確実だ。
それは事実だった。
もし、この者達がここを抜けたら、確かに、この道の先に、この者達に勝てる戦力を持つ者はいなかったのだ。
つまり、抜けられたら最期。
そして、不幸な事に真堂丸達の中で、誰一人この穴に気づいている者はいないのだった。
恐るべし鬼道の執念
何か嫌な流れが巡り、起こり始めようとしていた。
不穏
そこに孕(はら)むのは、大切な者を失うんではないかと言う恐怖。
アアアアアアアアアアアーー アアアアアーー
一刻程の時を経てはいたが。
即断と言っても過言ではないくらいの、速い決断であった。
花彩が笑う。
この時点で、花彩が望んだものそれは、個として真堂丸から勝利を獲る事ではなくなっていた。
大帝国が真堂丸に勝つ
さすれば、己は満足であった。
その最初のきっかけを生んだのは自分
ニヤリ
ああ、良いだろう それで
花彩は揺るがぬ、戻れぬ決断を決める
ニヤリ ニヤリ ニヤリ
それは、殺気がたぎった瞬間だった。
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