文太と真堂丸

だかずお

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~ 死 ~

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「しっ、真堂丸」

「ギイヤヤヤアアアアアーーッ」叫び地面をのたうち回る不知火の姿。

「あっ、あいつが真堂丸」間近で真堂丸の姿を初めて見た大帝国の一人の兵はこんな事を思う。
奴の噂だけはずっと耳にしていた、己は大帝国の本拠地の城の近くに住んでいた。
そこは自身にとって、近くて遥か遠い城。
あそこの城さえなくなる時代が来れば、俺達は家族と平和に暮らせる様になるんだ。
常に視界に入り、近く、すぐ近所にある城のはずなのに、絶対に近づくことは出来ない、遥か遠くに距離を感じる場所だった。
絶対的な闇と恐怖で覆われた様に感じるその場所は視界に入るだけで身がすくむ思いがした。
絶対に近づいてはいけない恐ろしい場所。
ある日、一つの噂を耳にする、聞いたか?真堂丸と言う男がたった一人、大帝国の城に乗り込んだらしいぞ。 
「真堂丸ってあの?」
なんて野郎だ、あの城にたった一人で?そんな人間がこの世にいたのか?
どれほどの度胸があればそんな事が出来るんだ?
今や国を掌握する程の権力を握る大帝国、その本拠地に一人乗り込んだだと。
信じられなかった、自身の目で城の様子を見るまでは。
「あっ、あっあっ」噂を聞き、城を見に行った己は言葉を失った。本当だったんだ。
あの大帝国の城が形を崩しているっ。
その男が今目の前で、あの巨人の怪物を地面に膝まづかしたんだ。
「あわわわわ」自身は大帝国の兵なのに心底祈っていた。頼む大帝国に勝ってくれ、ここで大帝国を止めてくれと。

「大丈夫か?」
真堂丸は殴られ続けていた海を見た。
海の表情は今、生きて呼吸をしてるのが信じられないくらいの酷い有様だった。

「しっ、真堂ま・・・るどのっ、すっ すいません、お役に立て」

真堂丸は二度と動くことの無くなった、海のまぶたを指でそっと閉じた。

「貴様が真堂丸、許さんぞ」不知火が立ち上がる。

真堂丸は無言のまま刀を向ける。
真堂丸の背後から悲鳴にも近い叫び声があがっていた。「かいーっ海」それは泣き叫ぶ空の声であった。
仲間達はその叫び声により海の死を知る。
くそっ、海。

「真堂丸、貴様も死になさい」突如強烈な拳が不知火から繰り出される。

ズガアアアアン、真堂丸のみぞおちに見事に打ち込まれた。「ぐはっ」

「おやっ?これくらいは躱すかと思ったんだけどねぇ」

驚いたのは仲間達、今の動きで真堂丸の疲労と現在の体力を知ってしまったからだ。
あいつの身体はもう限界だ、菊一が思う。
だがそれは、菊一だけでなく、仲間達の共通認識でもあった。
真堂丸はもう限界。

これを見て、雷獣の頭に今一番考えてはいけない思考が浮かんでしまう。
ちっ、馬鹿野郎、一人無理しやがって。なぁ真堂丸、お前が今の状態だったら一体誰に鬼道を倒せるんだよ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオーー
一番考えてはいけない思考、押しやったつもりだった予測が、すぐに顔を覗かせた。

もしこの戦に、三國人が現れたらどうなる?
どうなる?
ちっ、今は現状をどう切り抜けるかだけにしやがれ俺よ、雷獣は自身に言い聞かせるように言った。
背中は妙に空洞で、背後に重くのし掛かろうとする敗北と言う文字だけが、いくら振りほどいてもとれない気がした。

「死にな」再び真堂丸に繰り出された拳を誠が止める。背後から大同が「くらえ不知火」

「甘いよ」ズガアアアアン、不知火の蹴りが巨体の大同を吹き飛ばす「がはっ」

「雑魚どもが、貴様らが束になろうとも、真堂丸、貴様が万全ならこの私に勝てたかもなぁ」

「は?」

「はっ?」

その場に居た、誰もが驚いた。
「うぎゃああああああああああああああっ」
不知火は真っ二つになったのだ。
「悪いな、時間がないんでな」
信じられない事に、真堂丸は先ほど殴られた時、既に不知火を斬っていたのだ。

なんて強さだ、これが真堂丸。

気になる事が一つ、真堂丸がこちらに来たと言う事は道来達を見捨てて来たのだろうか?と言う事。
それは違った、こちらに向かおうとした瞬間、大帝国精鋭部隊に囲まれた真堂丸達、その時だった。
「真堂丸さん、ここは自分らに任せて下さい、さあ彼の馬に乗り向こうへ」その声は大同と共に到着していた、元郎と乱。女狐戦を真堂丸達と共に戦った者達。
彼らが力を貸してくれていたのだ。

ゴゴゴゴゴゴオオオオオ~~
「今を逃せば俺たちに勝ちはない、真堂丸 援護する、鬼道はお前に任せられるか?」菊一が言った。

「ああ」
ザッ その場の仲間達が真堂丸を取り囲む。

「死んでも、この人には指一本触れさせん」
その気迫に大帝国の兵達は近づけないでいた。

「今しかない、行くぞ」菊一が言う。

「菊一、俺を上空に投げろ」ガルゥラが叫んだ。

「力仕事は俺に任せろ」青鬼がそう言い、ガルゥラを力一杯上空に飛ばす。

ビュオオオオオンッ   上空から一瞬でガルゥラは驚異的な動体視力、度重なる鍛錬により身につけた観察眼により鬼道を瞬時に見つける。

「居たぞ、あそこだ」

ザッ その瞬間、全員が同時に全力で走り出す。

「奴らを鬼道様のもとにいかせるなー」

ズバッ 仲間達は敵の兵を止め、真堂丸を先に進ませる。

キィンッ  キィンッ 「真堂丸さん先に」
遂にこの時がっ。

仲間達は次々に大帝国の兵を止め、遂に真堂丸は視界の先に鬼道をとらえる。

「鬼道」

ザッ 敵の兵の刀を菊一と、夏目が止める。

遂に千載一遇の機会が訪れた。
決着の時。
誰もがそう思った瞬間、それは起こったのだ。
目の前に映ったのは、信じられない、いや信じたくない光景だったのだ。

ズサッ  地面に倒れたのは真堂丸
その姿を見た洞海がすぐに真堂丸の身体を起こし声をかける「起きて下さい、ようやく、ようやくここまで来たんですよ」洞海は涙を流していた。

そして必死に叫んでいた
「こんなとこで、こんなとこで死ぬなんて絶対に駄目ですからね、うっうっ」

それを間近で見ていた雷獣も言葉を失う。

嘘だろ? 嘘だろ。

真堂丸は死んでいる。

すぐに叫んだのは菊一だった「鬼道は諦めろ、今はとにかくそいつを安全なとこに運べ、絶対にまだ生きてる動かないくらいで決めつけるな、そいつは、そいつはなぁ真堂丸なんだぞおおっ」

「菊一」夏目は菊一の気持ちを知っていた、悔しくて悔しくて涙が止まらない。諦められるか、諦められるかよ。

真堂丸が死んだとしても。

すぐに洞海が、動かなくなった真堂丸と馬に乗り、走り出す。
雷獣も同時に走り「俺が援護する」

「でも、この戦場の何処に安全な場所なんてあるっていうんだ」洞海は取り乱していた。

「一つある、道来達が守ってる道の先にこいつを連れて行け、必ずそこまで俺が守り援護する」

「分かりました雷獣さん、必ず真堂丸さんをそこまで連れて行きます」

「よしっ」
馬鹿野郎 真堂丸っっ、てめぇが死んだら文太はどうなんだよおおっ。

ヒョオオオオオオオオーーーーーーーッ
その頃、文太達のもとでは。

「なんちゅー迷路みたいに入り組んだ道だなんだ、文太さん、あんた良くこんな道覚えてましたね」寅次が言った。

「はいっ、小さい頃何度も何度もここに来て、必死に道を調べて遊んでいたんです。道を覚えられた時はまるで僕だけの秘密の基地が出来たみたいで嬉しかったのを今でも覚えています、もうすぐです、もうすぐ着きます」

共に歩く百を超える人達の心に不思議と不安はなかった。この道のりを歩く過程で人々はすっかり文太を信頼していたからだ。

文太の心が突然嫌な気配を感じる。
文太の着物の懐の中に、いつも持ち歩いていた木で作られたお守りがあった、ふと手を突っ込み触ってみる、お守りは真っ二つに割れていた。

み  ん   な・・・・・・ 真堂丸

大丈夫だよね。


再び戦場

道来はもの凄い勢いで近づいて来る、一頭の馬を見つける。
背中には洞海、そして真堂丸?

雷獣が周りの大帝国の兵を蹴散らす「行けっ」

その時だった「道来さん、馬に乗って」洞海が叫ぶ。
「皆さん、真堂丸さんです、通して下さい」
道来は事の成り行きを真堂丸の姿を見て理解した。
瞬時にその嫌な予感を、一之助、太一も察知する。
うっ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ 嘘だろ…
道来が飛んだと同時に、洞海は馬から飛び降りた。
洞海が出来る、唯一の事。
せめて最期は親交の深かった道来さんに・・・・
見届けてもらいたい。

道を抜け、すぐに馬を止め道来は真堂丸を馬からそっと降ろす。

ヒョオオオオ~~~~~~~~ッ

優しい風だった。
動かなくなった友を見たが不思議と涙は溢れなかった。

「大変だったなぁ、一人無理をさせた」

「真堂丸、色々お前には助けられた」

「色々過酷な道を歩いたが、私は、お前や文太に出会え本当に感謝している」

「ありがとう」

「もう、ゆっくり休め。後は私たちに任せろ」

ギッ覚悟の決めた眼差しを向け、道来は再び戦場に向かい歩きだす。

この時、既に真堂丸の息は止まっていた。


真堂丸、大帝国との戦にて死亡。

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