文太と真堂丸

だかずお

文字の大きさ
150 / 159

~ ガルゥラの問い ~

しおりを挟む


ザーッ   ザーッ

薄暗い雲に覆われ空からは雨が降り始める。
それはまるで闇にのまれて行く人間と、この国が最悪の結末を迎えてしまう事を嘆く天の涙の様であった。
この国はじきに終わる。
この時点で状況がひっくり返る手札はもう無い。
ギリッ ここまで来て、ここまで来て・・菊一は悔しさで胸を詰まらせた。
だが、まだ諦めてはいけない。
なぁ、そうだろ一山。

「行くぞ、みんな命を込めろ」

ザッ  道来、雷獣、夏目が刀を構える。

「やれやれ」

ヒュオオオオオ~~~~   ザアアアアアアーー

鬼達も必死に戦っていた。
鬼達がこの場所で戦ってくれたおかげで真堂丸はどれ程救われたか、それは計り知れない。
青鬼も今は、こちらで戦っていた。
「あっちはヤバイな、三國人、なんでこんな時に」

「青鬼さん、ここは俺たちがやる。彼らを手伝って来て下さい」

ああ、お前達。そんなに傷だらけになって、すまない。 すまない

「青鬼さん、俺たちはもう限界で、すぐに動けなくなる。だから最期に礼を言わせて下さい」

「俺たちは、人間を物としか思わずに鬼神さんと沢山の人間を殺しました」

「そんな俺たちが、文太さんや真堂丸さん達と出会い、人間を知る様になって人の心を知った。俺たちは見た目も鬼だが、それ以上に心そのものが鬼だった」

「俺たちは鬼と呼ばれ、忌み嫌われてる存在だけど、ようやく人の優しい心を知ったんです」

「あなたのおかげです、あなたは鬼神さんの下に居ても必死にそれを俺たちに訴えてくれていた」

「ありがとう」

「人間に嫌われ、恐れられる最低な俺たちですけど、最期に大好きな者達の力になれて良かった」

「青鬼さん、ありがとう」

青鬼は辺りを見渡した。
ああ、お前達、本当に戦いながら真堂丸達と同じ様に一人の兵も殺していないのだな。
ポタッ ポタッ 青鬼は嬉し涙を流す。

「青鬼さん、俺たちようやく命の大切さ、かけがえのないものだって理解出来たんだ」鬼達も涙を流す。

「ありがとう、俺嬉しいよ」青鬼はそう言い、三國人のもとに走り向かい出す。

ああ、お前達
一つ言えることがある
例えこの世の全ての人間がお前達を鬼と呼び、忌み嫌い理解しなくても、俺には分かっている。
見た目でどれ程誤解されても、俺は知ってる。
お前達は見た目がどんなに怖くとも、人間と同じく優しく暖かい心を持つ者達だ。
他者の痛みを理解出来る者達だ。
例え世界中の人間に嫌われても、過去の生き様で人々に判断されようとも、俺だけはずっとお前達を愛している。
それだけは永遠に変わらない。

青鬼が去り、すぐの事だった。
鬼達が皆殺しにされたのは。
本当の鬼とは見た目が凶暴な者の事ではない、平気で他者を傷つけ、殺し、何も感じない心の者のことなのかも知れない

ズバッ ズバッ「この鬼は主力か?たんまり金をもらえるぞ、見た目も醜いから切り刻んじまえ」

「こいつの首は俺がとったんだ、金は俺がもらうんだ」

キィンッ   キィンッ    キィンッ

「清正」

「はいっ、誠さん」

「あちらがヤバイ、援護に行く」

「自分も行きます。三國人を倒せなきゃ俺たちは負ける」誠が頷く。

「光真組、まだ大丈夫か?」

「おうよ隊長、あっちは任せます」

「分かった」
知っていた、もう限界である事を。
知っていた、無理をして平静を保っていた事も。
今ここがもっているのは自分と清正が居るから。
こいつらは、ずっと付いてきてくれた。
ずっと何一つ疑わず、どれだけ無謀な作戦でも、命を俺に預けて付いてきてくれた。
隊長が言うなら、自分はそれを信じると。
姫、この者達は自分には惜しいくらい出来た者達でした。
日々命を張る日常、お互いの信頼関係がなきゃ成り立つ筈が無い。過ぎ行く数多の日々を積み重ね、今では尋常ならぬくらいの信頼関係へと育まれた。
それは小さな幹が大きな大木へと育つ様に太く、厚くしっかりと育つ。
本当は死ぬのは俺だけで、あとは生かしてやりたかった。 
すまぬ。隊長の俺がお前達の命を守ってやれず。

清正はそんな誠の心の内を知っていたのだろう。
誠の肩にそっと手を置く。
「隊長、みんなの為、姫の為、平門の為にも勝ちます」

「ああっ」

後方、最後の砦の如き、道を守っていた真堂丸にも再び限界が訪れていた。
ああっ 身体の感覚が無くなってる、足が今にも崩れそうだ。
弱音なんて吐いてる暇はねぇ  無いんだ。
ガクガク  ガクガク
足が砂が崩れるように脆く膝まで崩れる。
ドスッ  気づいた時には両膝が地面についていた。
ああっ、ここまでか。
上半身も一気に崩れ落ちる。
ああ駄目だ、倒れたらもう駄目だ・・・・

「よしっ、真堂丸もらったーー」

キィンッ
「お前が諦めたら皆はどうなる」
真堂丸の身体を支えたのはガルゥラだった。

「ガルゥ・・・ラ」

俺の大嫌いなものは人間
大切な全てを奪われてきた。
人間は愚かだ。自分達の住む地球を汚し、自然を破壊し続け、自分達の首を絞め続けている事を平気で続ける。
分からないのか?お前達の住むこの地球が破壊されればお前達だけではなく、沢山の生命が失われる事になる。
何ものも存続出来なくなることに。
お前達は己の事しか頭にないのか?
何度も同じ過ちを繰り返し続け、お前達は何も学ばない。戦とて同じだ。
人間とは、何と欲深い種族なのだ。
俺はただ平穏に自然と戯れ暮らしていたかった。
俺の大好きな自然を破壊し、奪い続け。
何度、大好きな土地を失ったか。
澄んでいた川や海もいつしか汚れ、それでも平気な顔をしている。
お前達は自分の蒔いてる種が自分の身に降りかかる事にまだ気づかないのか?
人間とは阿保だ。何故俺が人間の尻拭いをしなければならん、こんな阿保どもの為に。
いっそこんな事なら人間など滅んでしまった方が良いのかも知れない。
俺は人間など大嫌いだ。

ガルゥラは真堂丸の肩を支えていた。

「すまない」

一山、貴様に会ってなかったら俺は・・

「俺は貴様らを仲間だと思った事はない」

「ただ、大帝国に国を支配されるのが我慢ならなかっただけだ」

「ああ、知っている」

「大帝国を止めるんだろ?だったらお前が諦めるな」

「ああ そうだな」

一山、俺も焼きが回った。
大嫌いな人間だった筈なのに、俺は自分の視野が狭かった事に気付く。
全ての人間がそうなわけではない。
お前や、こいつらの様な者達もいるのだ。
今の俺はそんな人間に可能性すら見ている
馬鹿だと思うか?これだけ繰り返し、変わらず、気づかない人間と言う種族を見てきて、まだ信じると。
でもな、お前達を見てたら何だか人間をもう一度信じてみたくなったんだ。

だから、こいつらが諦めない限り俺も諦めない。
人間をどこまでも信じてみようと思う。

ビュッ 真堂丸の真横、刀が伸びる、気づいていたが身体が動かない 駄目か。
一気に無数の刀が真堂丸を襲う。

グサッ   ズバッ   ドスッ

「ガルゥラ お前」

ガルゥラの身体を無数の刀が貫通していた。

「全く、大嫌いな人間の盾になって死ぬ俺も人間を馬鹿に出来ないくらい立派な阿保だよな」

「ガルゥラ」

「真堂丸」

「なんだ?」

ヒョオオオオオーーッ

「こんな俺でも仲間と呼んでくれるか?」

「馬鹿野郎、最初からずっと仲間だと思ってたよ」

ああ、馬鹿なのは俺だな。
一筋の涙がガルゥラの頬を伝う。
こんなに人間は優しいじゃないか、こんな者達なら必ず地球を、自然を大切にしてくれる。
必ず立ち上がってくれる者達があらわれる。
信じている、人間を・・・・

ドサッ 

ガルゥラの手が地面に落ちた。

ガルゥラ

真堂丸の足が力強く地面に立つ
駄目だな、もうこんな思いを他の人間に味あわせ続けられない。
俺が諦めたら、今後この国の人間達は。
真堂丸の頭に浮かんだのは大帝国に虐げられ、奴隷のように扱われ、虐殺される人々の姿。
ここは地獄じゃねえ、地獄なんかにさせるかよ。
今まで出会った人々の顔が真堂丸の頭をよぎる。
その想いが真堂丸を再び力強く大地に立ち上がらせたのだ。

ギロッ

ここは、通す訳にはいかない。
俺は絶対に諦めるわけにはいかない。
ぶんたっ。

その頃、叫んだのは文太。
「よしっ、着いた」

「やったーーー おおーーーっ」人々から歓声があがる。

「皆さん、ここで暫く身を隠して居て下さい。大帝国は絶対にここに来ないから安心してて下さい」
そう言った瞬間、文太は走りだす。

「文太さん」走る文太に気づき、声を出す寅次

「文太」大きな声をあげたのは母だった。

「文太、本当の事 言いなさい。真ちゃんは逃げてなんかいない、私達の為に戦ってるんだね」

一瞬返事に困る文太は、頷いた。

「それに他のみんなも そうなんだね」

「おかしいと思ってたよ、あの子はそんな子じゃないと」

「なんてこった、みんな俺たちの為に、戦場にすぐ向かわなきゃ」

「俺たちだけ逃げて、彼らを見殺しになんか出来るわけねぇ」

「真堂丸君達を援護しなきゃ」

「お兄ちゃん為、やっぱり私たちの為に」

「あたしも年はとってるけどやれるよ」

「戦える者は武器をとれ、戦場に行かなくては」

文太の村の人々は、老人から大人、子供まで皆が口々にそう声を揃えた。
「待って下さい、そんなことしたら真堂丸達の気持ちを無駄にする事になります」

「僕が行きます、信じて待っていて下さい」

すると声をあげたのは医師の作蔵
「分かった、我々は我々の出来る事をしよう、彼らは必ず傷ついて戻ってくる、必ず今回も治すから、ここで準備をして待ってる」

「作蔵さん」

「分かった、なら、あたし達はありったけの料理を作り、すぐに戻って来たみんなが休める環境をつくるよ」

「じゃ、わたしたちお兄ちゃん達が沢山笑えるように沢山の遊びを教えてあげるんだ」子供たちが言う。

「よしっ、俺たちはここで最高の準備をして、彼らの帰りを待つ」

「皆さんありがとう」
涙が文太の頬を伝う。

グスッ 寅次と、寅次を慕う六吉と良が泪ぐむ。
「良い村の人達だ」 「故郷の母ちゃん、父ちゃんを思い出した」

「文太」母の声

「真ちゃん達にみんなで待ってるって伝えてきなさい」
文太の母も、子の成長を見て、感じ、自身もまた強い母に育った。
きっと怖かっただろう、もしかしたら、もう息子に会えなくなってしまうんではないかと。
母は信じた、誰よりも息子を信じていた。
「絶対に生きて戻るんだよ」
文太は頷いた。

ザッ  全力で走れば  みんな待ってて下さい。

バッ 共に走りだす三人の姿

「水くせぇ、俺たちもお供しますぜ」

「危険な場所ですよ」

「だからこそ俺たちがお供して、文太さんが真堂丸さんに会えるよう守ります」

「兄貴の言う通りです」微笑む六吉と良。

「ありがとう、 行きますよ」

「おうっ」

 ザッザッ ザッ 地面を掘り、道を抜けた大帝国精鋭部隊の五人。
彼らと文太達は確実に出会う道筋と時間上の上に居たのだ。
それが意味すること・・・・
その時彼らは確実に殺されると言う事だった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

対米戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。 そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。 3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。 小説家になろうで、先行配信中!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

処理中です...