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『食べ物を想像する冬馬君』
しおりを挟む「ファー」慎司と遊んだ夕暮れ時の帰り道。
住宅地を歩いていると、それぞれの家庭から晩ご飯の良い香りが漂ってくる。
「良い香りがするなぁ、今日のうちの晩ご飯は何かなぁ」
グギュルルル お腹が減った。
「あっ、このお家の晩ご飯はカレーかな」
クンクン カレーの香り。
住宅街を歩いていると、なんだかそれぞれの家庭の生活の温もりを味わっているようで冬馬君はなんとも幸せな気分に包まれる。
家庭の中から、テレビの音や家族の楽しそうな会話が聴こえてくる。
これだけ沢山の人生があるんだなぁ、凄いなぁ。
そんな事を感心しながら歩いている。
すると、前から犬を散歩してる人が。
冬馬君はプーを思い出し、ちょびっと泣きそうになる。
プーはもう僕のこと忘れちゃってるかなぁ。
すると「おーい冬馬君」
振り返ると犬おじさんが三匹の犬を連れて散歩していた。
「こんばんは」
「こんばんは、おや、こないだのプーちゃんはもう帰ったのかい?」
「そうなんですよ、こないだお別れして、別れの時は、ちょっぴり寂しかったです」
「そうかい」
冬馬君は犬おじさんの犬を撫でた。
「やっぱり犬はすぐ忘れちゃうのかなぁ、もう僕のことなんて覚えてないだろうなぁ」
「冬馬君、そんな事はないよ、見てごらんうちの犬達を、君の事しっかり覚えているだろう」
「あっ」
「犬にだって心がある、きっと可愛がって大事にしてもらった事はずっと忘れないよ」
「そうですね」冬馬君は犬おじさんの顔を見てニッコリ笑った。
「寒くなって来たから、風邪ひかないようにな、また大喜君を連れてうちの犬と遊びにおいで、それじゃあね」
「はいっ、また行きます」
犬おじさんはとっても優しい人だ。
僕の心は暖かくなった気がした。
世界には沢山の優しい人達がいる。
「さて、お家に帰ろう」
だんだん寒くなってきた、あの暑かった半袖で過ごしていた夏が嘘のよう。
季節は10月の終わりに近づいていた。
「ただいま~」
「お帰りなさい」
「今日の夕飯何~~?」
冬馬君の腹はペコペコである。
「あっ、やっぱり聞かない」と何故か冬馬君は台所を離れる。
夕飯何かを想像して、楽しもうっと。
リビングでdvdのアニメをつけて、空想を始める。
まずは、ジューっと網の上、音を立てて焼かれる肉、焼いた肉をタレにつけて、ムシャムシャ むしゃ。
そして、ごはんをパクリ 焼肉じゃい。
うっ、うまい~~ 冬馬君の口からよだれが流れる。
「きしゃー」思わず、声をあげてしまう。
あとは何だぁ?
熱々のスープに良く絡まった麺、香りを楽しみ、いざ行くぞ!!ズズズと麺を口にすすり、スープをレンゲでゴクリ
「ぷしょーうまい、うまいぞラーメン」
ニンマリ笑う。
それでもなければ、僕の大大大好物のカレー
白いご飯にたっぷりかかるカレーのルーをハフハフ
ムシャムシャ ご飯とルーを絶妙の量口に含み 「 んみゃーにー」口の中で広がるカレーと白飯の奏でるハーモニー。
最高~~~~。
それを今、帰ってきた隆は見ていた。
「何やってんだ?」
事情を話し。
「なるほど、美味しい食べ物を想像ねぇ、そりゃいい」
隆は想像を始める。
まずは、ギンギンに冷えたビール、缶ではない、瓶ビールだ、それをあまり大きくない、冷蔵庫で冷やしておいた薄めのグラスに注ぐ、そして一気にグビッ グビッ グビッ ゴキュッ。
「あきゃー」猿は吠えた。
だが隆極楽フルコースはまだまだこんな物じゃない。
「ぬおおっ」先が気になる冬馬君
そこに、刺身だ、そうマグロ。
それを醤油にワサビを入れ、マグロを浸し(隆はどっぷり浸すのが好きであった)パクリ、そしてルービーをゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ。
「んきょーパラダイス~~」
冬馬君も、なんだかビールがそんなにうまいのかと気になる、昔ちょびっと口に入れた時は、大人はこんなの飲んでなにが美味いのかと思ったが。
大人になると変わるのだろうか?
自分の場合は今はこうだ。
ギンギンに冷えた、オレンジジュースを ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ そして大好きなスナック菓子と一緒に パリパリ ゴキュッ ゴキュッ。
「みゃーみゃーんみゃー」猿の子も吠えた。
グギュルルルルル グギュルルルルル
「あーお腹減ったぁ~~~~~~」
「なぁ、冬馬 これで今日まさかのステーキだったらどうする?」
「すっ ステーキ」
ジュウジュウ 鉄板の上 焼かれた分厚いステーキ
肉汁がしたたり落ち、ニンニクとステーキの絶妙ソースが辺りを彩る。
クンクンクククン クン
ジュゥゥゥ 一切れフォークとナイフで切り
感謝を込めてありがとう食材様。
いっ、いただきまーす。
ハギュ ハギュ モグモグ 柔らかくジューシー
冬馬君はご飯を口にほうばり、隆はビールをゴキュッ
ゴキュッ
二人は叫んだ
「しゃあわせー」
ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ。
二人は待ちくたびれ立ち上がる。
「ご飯まだー」
「もう待てないよー」
台所に猛ダッシュ
「マッマー、夕飯は~~~~~~~~」
「我妻正子やぁー、運ぶの手伝うぞいっ」
二匹の猿は待ちくたびれて全力で台所へと向かっている。
が
ガシャああん
「急に飛び出して、あんた達、なにやってるの」
二匹は正子と正面衝突したった。
辺りにひっくり返りこぼれているのは、隆の大好物、
寒い時にはピッタリの、ああ日本人に生まれて良かったと思う定番の品
鍋であった。
「あんた達のせいで、もう今日夕飯ないよ」
怒る正子
しかし、誰よりも嘆き悲しんだのはこの、哀れな二匹と言われている。
「うキャアアアアアアー」
その夜、冬馬家には悲しげな二匹の猿の鳴き声が鳴り響いたそうな。
「マイ なっべーとビール様ぁー」
「僕の鍋ちゃーーん」
「返ってこ~~~~~~~~~~~~~~~~い」
近所ではこんな会話がされていたような。
「あなたぁ、さっきから何処かで変な奇声がしてる気がするんだけど」
「気のせいじゃないのか、どっかでまた変な珍獣でも飼ったんじゃないか あははは、今日の晩ご飯はなんだい?」
「今日は鍋ですよ」
「おっ、そりゃあビールに合うなぁ」
「幸せだああっ」
ちゃんちゃん
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