25 / 68
『旅館で過ごす時 』
しおりを挟む庭に向かう旅館の廊下を歩く子供達
冬馬君と大喜に気をつかい、二組にしてムードをつくる為
「あっ、部屋に忘れもの先行ってて」ときみ子。
きみちゃんナイス!!
多網はきみ子に手を振り庭に向かう気満々
「おめーもや」多網を引っ張るきみ子
あっ、気を遣ってくれたんだな、きみ子ありがとうと思った、冬馬君と大喜であった。
庭に着き
「お花綺麗」と花を見つけ喜ぶ清香とアミ
君の方が綺麗だよ、と、そんな時代遅れもいいとこの、今やメロドラマに使われすらもしない、そんなセリフは言えず。
「うん」と言った冬馬君
冬馬君と大喜、これはチャンスと、冬馬君は清香にあの花綺麗と指さし、大喜はアミにあれも可愛いと話かけた。
頑張る二人
「本当だ綺麗」
花を見つめる清香の顔に、見惚れてしまう冬馬君。
ふぅーっ、やっぱり清香のこと僕好きだ。
でも、今はこれ以上の事は何も言えない。
ふうーっ、何故か自然にため息が出た。
「ねぇ、冬馬君 お花って人間みたいにみんな違う、それが良いんだって言ってるみたい、そんな自分をみんな堂々と咲き誇って素敵だよね」
「えっ、あっああ」
そんな清香の発言がとても大人っぽく感じますます胸がキュンとしてしまった。
そんな見方したことなかった。
そんな事を思っていると「みんなでキャンプに来るって夢が叶って良かったね」清香の優しい笑顔に
ズキューン ハートをまたも貫かれた冬馬君。
頭のハゲだ天使が強烈な矢を射る、当たれや~ くらえや~ ズクシュ 喜ぶハゲ天使 しゃーしゃーシャー 見事な腕前どうや~
ああ、僕は清香が大好きだ。
大好きだ
空を見上げた、青空の下セミが元気に歌ってる。
真夏の太陽が頭上からみんなを照らしていた。
冬馬君はきっとこの瞬間をずっと忘れないだろう。
いつまでも、花を見て微笑んだ清香の顔が胸に焼きついていた。
なんだか、不思議に涙が出そうになった。
本当おかしな、僕。
庭の端から、こっそり覗きこむ、多網ときみ子
「どう、良い感じ?」
ニンマリ微笑むきみ子
「二組に別れて話してる」
とほくそ笑む多網
ふふふっ
ふふっ
なんだか不気味である。
プリッ
「あっ、出ちゃった」ときみちゃん。
ブリッ
屁返しする多網
ああ、いつもの二人。
しかもなんちゅーコミュニケーション。
プリッ
ぷシュー シュー 屁で分かり合う二匹 おっと失礼 二人。
「でも、ちょっとまごついてるわね」ときみ子
「手本」と多網
「よし、最近のナウい カップルならどうやるか、やり方を見せてあげるわ」
ナウいがすでに死語の気はするが。
二人は突然現れた
「待った?」
まあ、誰も待っていなかったが。
するときみ子
「花が綺麗」
すぐさま、多網は自身の持つ引き出しの最近の最新の最先端のナウい言葉で切り返す。
「君のお顔の方が花より綺麗だよ」
「まあ」
得意気な表情を浮かべる多網
チラッ
見てるか二人?
チラチラ確認する多網
唖然と口を開ける冬馬君と大喜
「これって?」
「うん、僕らに手本を見せてくれてるんだね ・・・」
すると多網が「いい香り」
「まあ、あなたのオナラの方が三倍いい香りよ」ときみ子
ブシュー 。
どんなカップルだ。
間違いなく真似してはならぬという意味で彼らは役にたった。
「じゃあ、私たちは気をきかせて、離れていよう」と小声で多網に囁くきみ子
二人は突然その場を駆け出し去って行った。
一体なんだったんだろう?
と首をかしげていた、清香とアミであった。
二人は廊下まで戻って来て
「私は温泉行ってくる」ときみ子
多網も頷き、鼻くそをほじった。
タオルを取りに部屋に戻る二人
清香のお母さんが
「あらっ、二人 温泉入りに行くの?露天風呂眺め良いし最高だよ」
「ひょー」
テンションのあがる多網ときみ子
自分の分の部屋に置いてあるタオルをさっそく持ち、いざ出発~
階段をのぼり、一つ上のフロアに温泉はあった。
多網ときみ子は入り口で別れ、多網は服をすぐさま脱ぎ風呂につながるドアを開けた。
目の前から湯気が立ち込めてきて、視界が晴れると真正面には、見事な山景色
「ヒョオオオオオ」多網は嬉しさのあまり吠えた。
隣の女湯あたりからも
「コオオオオオオオッ」きみ子の声である。
野獣か!
多網は身体を流し温泉にジャンプ、この湯につかる瞬間がたまらない
「はふっ、はふっ」
嬉しさのあまり奇っ怪な声をあげる、まるで熱い食べ物を冷ましてる時の老人のよう。
しばし、山景色に見とれて風呂の中、立ち上がった。
そして、ニンマリ
生きてるってワンダフォー そんな気分だった。
ガラッ後ろのドアが開く
「先に風呂に来てたとは」
そこにはニッコリ笑う、冬馬君と大喜
「うわーすごい景色」大喜がはしゃぐ
「ひゃっほー」
ザブーン
「かはっ、最高~」
「あーったまらんねこりゃ」
みんなは静かにリラックスして湯につかり山景色を眺めてる
「昼風呂良い」囁く多網
「夜もまた来ようね」と冬馬君
ああ、旅の宿の温泉
こころに染み渡る。
冬馬君は景色を眺めながら思った。
ああ、
まだ夏休みも始まったばかり、
それに、
家に帰っても大喜や多網はまだうちに泊まりに来てる。
ああ、最高だ、学校を忘れ日常を忘れ湯につかるたまらない。
まだまだ、この旅行も楽しむぞ~
と意気込む三人。
「おーっ」
湯からあがり、
きみ子達はいつあがってくるか分からないから先に部屋に戻った冬馬君達
やはり、和室は落ちつく
ごろ~んと寝そべる三人
「あーなんだか、部屋から見える外の景色も全然いつもと違うのは良いなぁ」冬馬君はニッコリ笑った。
すると清香のお父さんもポツリ
「旅行って良いなぁ」
ストレートな名言であった。
ああ、いつまでもこうして居たいなぁ、せめて後二日くらい、そんな事をまたも思った。
しばらくして、ようやくきみ子達が戻り
「最高のお風呂~」ときみ子
「景色も山綺麗だったなぁ」アミも喜んでいる
「夜も入りに行こうね」と清香
清香の弟はすっかり疲れたのか眠っていた。
「夕飯は18時から食べられるらしいよ」
「ひゃっほーいほーい」
喜び叫ぶ子供達 待ってました~
今は16時過ぎ、みんなは部屋でのくつろぎタイムだーと大はしゃぎ。
すっかり意気投合した女の子達
「ねぇ、きみちゃんは夏は予定あるの?」とアミ
うーん、上空を見上げ何故かペロッと舌を出して、「そーいえば、冬馬君達とサイパンに行く」
そうだ、今年の夏はそんな一大イベントがあったんだ。
「えーっ良いなぁ」
「お土産買って来てあげる」ニンマリきみちゃん
「わーいありがとう」
ハッとした冬馬君、こんな手があったか。
お土産を買って来れば、渡したいからと言う事でまた清香達に会える。
すかさず
「僕も買って来るよ」と冬馬君。
すぐに大喜も「僕も」
「ありがとう」
二人は心の中ガッツポーズを決めた。
旅先の部屋でのんびりくつろぎ色んな話をして過ごす、こんな時間もやはり旅の醍醐味。
あっという間に夕食の時間
「さて、そろそろ行こうか」と清香の父さん
ぎゅるるる~っ
大きなお腹の音
こんな音を出すのはだいたい相場が決まってる。
「きみ子だめだよ、そんな音だしちゃ」と笑う冬馬君
「えっ、私じゃないよ」
「へっ?」
「あっ、ごめん冬馬君私の」まさかの清香のお母さん
ひょえーっ なんて事を言ってしまったんだ、
恥ずかしくてたまらなくなった冬馬君、顔はまさにひきつったゾンビ
「やだーお母さん」
あははと皆は笑った。
一同はご飯が出される部屋に向かった。
お座敷の上のテーブルには料理が並べてある。
「ひゃっほーい」
「うまほー」
飛び跳ねる子供達
「これも旅の醍醐味」
と隆は席につきさっそくビールを頼む
「では、いただきます」
みんなで食べる夕食は賑やかで楽しかった。
あー旅行まで来れて本当に良かった。
清香達の家族と去年の夏に出会えて本当に良かった。
世界はこんなに広い、
いろんな国もあり時代もある、そんな中で出会い関わる人達、それは偶然を超えひとつの奇跡のようだ。
そんなことを考えご飯を食べた。
食べてる時多網が
「あっ?」
それを聞いた大喜
「どうしたの多網?」
「オカッパ」
「またっ?」
子供達は昼間の怖い番組を思い出し
「幽霊?」とアミ
ブルブルブル
いつもなら、怖がる冬馬君だが
今日は清香がそばにいる、それだけで勇気百倍 冬馬パンマン
なんにも、怖くない 強いむしろ格好つけたい冬馬君が顔を出した ヒョコッ。
それは右に同じく、大喜もだった。
二人は立ち上がり
「えいやー、僕たち強いよえいやー」
正子はそれを見て笑っていた。
まぁ、清香ちゃん達の前で強がっているのね。
母はお見通しだ。
「この天ぷらうまし!!」
美味しい食事にきみちゃん大ご機嫌ニンマリ。
「うまし、うまし」きみ子のテンションは上がる 「このニンジンもうまし」
きみ子よそれは大根である。
「そうだ、食後ここのすぐしたがちょっとした繁華街なんですが、みんなで歩きませんか?」と清香パパ
「やったー」子供達は大喜び
「みんな、あれやろう」と冬馬君
「あれ?」
冬馬君は立ち上がり「ファイ ファイ」
でたーあの婆ちゃん家旅行の時に大活躍した、上段突き 拳を交互に突き出しファイと叫ぶ。
きみ子が立ち上がった
「きみ ファイ きみファイ」
でたー、本家のファイ
こうなるともう止まらない
多網も立ち上がり
「多網ファイ 多網ファイ」
すると大喜も「大喜ファイ 大喜ファイ」
「冬馬ファイ 冬馬ファイ」
チラッと子供達に視線をおくられる隆
隆はこころの中思った。
まじかーまたこの展開、やらなきゃいけんかー、ちきしょうまだ酔いがたらん。
まじかー。
ぐびっとグラスにつがれたビールを飲み干し
「隆ファイ 」
でたー やってしまった。
顔を真っ赤にする隆だが・・・
「二回だよ言うの、おじちゃん」きみ子の素早くも衝撃的な指摘
隆のこころの声
まっ、まじか?またこんなのやらなきゃいけないのかっ 恥ずかしい。
皆の視線はジロリ隆に一転集中
顔は真っ赤っかテンパる隆
シーン
うわぁーへんな間つくっちゃったよ
いやだなーこれマジか。変にためらったこの間、次の一歩が踏み出せん
だー隆よ しっかり、どうでる?
どういく? ノリノリか?
ちょっとやる気なしに見せるか?
なんと隆は勢いよく飛び出した
えぇーいジャンプ ぴょん
清水の舞台から飛び降りた。
「隆 ファイ ファイ 隆」
すっすごい大声
勢いよく交互に手を前に突き出し
そして誰の目から見て明らかに恥ずかしながらの無理やりファイ
ガラッ 扉は開き
「これデザートサービスです」
「うはっ」女将さんは隆のファイをいきなり目の前にしビックリしてずっこけた。
「うわぁ」恥ずかしさが頂点に達し 声にならない声をあげた しかも二回
「うはっ」
子供達は大爆笑
清香達の両親はどんな反応したらいいか困って苦笑い
「ガハハ おじちゃんテンパりすぎだから」
きみ子のようしゃないつっこみ
清水の舞台から勢いよく飛び降りたが見事に崖のすそに引っかかっていた。
隆はグビリ飲んだ
「すっ、すいません」
「いいんですよ、またお持ちします」
ガラッ
正子は知っていた、次自分に指名されることを っしゃーんなろー
グビッ グビッ 飲んだ
「おばちゃんは?」ときみ子
きっきたー 妙に興奮する正子 鼻息は荒い。
ジロリ 皆の視線が正子に一点集中
息を飲む 正子
つしゃー見てろ母の偉大さ
「きしゃー」何故か意気込みきしゃー
と言う訳の分からない叫び声から始まった。
大ジャンプ こちらも清水の舞台から飛び降りた~
「正子 正子 正子 ファイ ファイ ファイ」 まるで化け物
ガラッ
「ぎゃあああああっ」
おしとやかな女将さん人生であげたことのないであろう悲鳴をあげ
ビックリしずっこけた ガシャァーン
「すっすいません」
子供達は大爆笑。
こちらは勢いよく飛び出しすぎて反対岸に着地してしまった。
皆は食事をすませ、大人達はほろ酔い
「美味しかった、ご馳走様でした」
「じゃあ、街を散歩にでも行きましょうか」と清香パパ
「おーっ」みんなは大喜び
「よーし、出発」
冬馬家と清香家達の夜街散歩が始まる
この夜、二家族は化学反応を起こし爆発する!!
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる