冬馬君の夏

だかずお

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『虎鮫代再び』

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ペロリンチョ

目の前に立つ虎鮫代ちゃんに驚く一同

するときみ子が

「あっ」

声をあげる

そう言えば、私のうちに今日虎鮫代ちゃんが泊まりに来るんだった。

きみ子は実は、スペインから帰ってみんなと離れたばかりの一人の夜は寂しいと思い、虎鮫代ちゃんを自分のうちに泊まりに来るよう誘っていたのだった。

虎鮫代ちゃんの舌は三度ほど反時計回りにまわった。

ペロ ペロ ペロッ

「そっかすっかり忘れてた、ごめん虎鮫代ちゃん、みんな私帰るよ」ときみ子

「えーっ嘘っ、きみ子帰っちゃうの」と冬馬君

きみ子は心の中こんな事を思った。

ちっ、約束しなきゃよかった、しかし虎鮫代ちゃん、ここまでいちいち嗅ぎつけて来るとは、さすが我が友よ 、ぬかりがない。

虎鮫代ちゃんはニタリと笑った。

突然舌が上下に動く

ペロ ぺろっ

そして「冗談よ、きみ子が無事に帰ったか、顔見に来ただけ、そんな邪魔しないよ、私は帰る」

一同は感動した

おー虎鮫代ちゃん良い奴やんか~~っ!!

多網が鼻毛を引っこ抜く

後ろで一部始終を見ていた、隆が

「それなら、君もうちに泊まれば良いよ」

「えっ、良いんですか?」

「もちろん」正子も出てきた。

「嬉しい」
舌は7周まわる ペロリンチョ

子供達は喜ぶ、一体どんな一日になると言うのだろうか?

虎鮫代ちゃんが再び冬馬家に来た。

「何しよっか?」ときみ子

「せっかく冬馬家に帰ってきた」多網が喋る

「だから、怖い話する」

どひぇーどんな流れだ。

だが、みんな大賛成

中でも虎鮫代ちゃんは興奮していた。
何故興奮していたか分かったかと?

舌は出しっぱなしで、犬が運動した後のよう、ヘッ ヘッ ヘッ ヘッ と息まで荒かったからだ。

さっそく、カーテンを閉め、電気を消し、冷房つけて布団にくるまる。

なんちゅー手際のよさ、こやつら手慣れておるな。

「虎鮫代ちゃん話してよ」と大喜

虎鮫代ちゃんは舌を一周まわし、大喜を睨む

「えっ?」何なんかまずいこと言ったか?焦る大喜




沈黙が10秒ほど続く








ゴクリ 息をのむ大喜






「良いよ」虎鮫代ちゃんが言った。

なんの間だ!!冬馬君は心の中つっこんだ。

「私 実は幽霊と会ったの」

「で?」興味津々の冬馬君

「私の部屋に夜中に急に出て来て、最初は私、近くの家の人がうちに迷って入りこんじゃったと思ったの」

大喜は冷静に思った、いきなり部屋に人あらわれた時、しかも夜中なのに近所の人が迷って急に部屋に入りこんだって、よくそんな発想できるな。

「そんで、私言っちゃったの、出た~人間って」

まっ、まあ そうなんだが、なんか奇妙な悲鳴だなぁ。

「でも、よく見るとその人透けてるのよ」

「えーッ」驚くきみ子

「なに、透けてるって洋服全部?変態かね」きみ子は続ける

虎鮫代ちゃんには聴こえていないのか、無視したのか、きみ子の質問は完全スルーされ話は続く。

「私それ見て、ハッとしたのこれが、ちまたで噂の幽霊さん」

ちまたで噂ねぇ 続けよっか。

「私は恐る恐る聞いたの、名前は?」

「すると み ち こ」

いっ 意外に普通

「で30分後には、二人ですごろくして遊んでたの」

ぶるっ ブル ぶる

多網が一番怖がったのはここであった。

幽霊と遊んだことではなく、すごろくを選んだところだった。

「ここからが、怖い」と虎鮫代ちゃん

冬馬君も冷静に思った。

ここまでも充分こわい






うん






あんたがね

「私ちょく、ちょくいんちきする、みちこさんにイラついてきたの、で怒ったの 」

どんなインチキか気になったが。

「何て怒ったの?」ときみ子

「お経くらわすぞ、クルゥラ」

すげー脅し文句やんけ

こぇぇー虎鮫代

「そしたら、みちこさん怒ったの」

「私のこの怖い顔見よとか、なんとか言ってきて、すごい ガンタレてくんのよ、だから私も頭きちゃって、私の最強の顔で対抗したのよ」

どっかのヤンキーの喧嘩か。

「私も負けてなかったんだけど ところが、みちこが鏡みたいなの出してきて、そこに写る顔見てあまりに恐ろしすぎるその顔にさすがに私、失神しちゃったわ」

ペロリンチョ ペロ ペロ 舌がよくまわる。

ってか、それは鏡みたいなんじゃなくて、鏡でそれは自分の顔見て失神したって、すげー自虐、自爆ネタではないか。

それに気づいてない虎鮫代ちゃん

きみ子も大爆笑「うひゃーその鏡に写ったその怪物の顔よっぽど怖かったんだねー 一体どんな顔だったんだろー」

きみ子 ああ きみ子 あんたも分かっていないのか。

だから

それは

あんたの目の前にいる友の怒った顔やー

しかし、みちこさん 頭良いな、勝てないと思ったんだろうなぁ。

と言うか虎鮫代ちゃん こんなに喋るなら、いつもの舌で合図だして、喋らないあれやめてーと冬馬君と大喜は思った。

しかし一体、怖い話なのかなんなのかよく分からなかった。

まあある意味怖かったが。

虎鮫代が。

「それ以来、みちこさんには会ってないの?」大喜が言った。


すると


虎と鮫が交じった様なその顔の主





虎鮫代は



















ほくそ笑んだ







舌は高速回転を始め






ぺろ ぺろ ぺろ ぺろ~~~





「イマウシロニイルヨ」




ヒョエー みんなは布団に一斉にもぐる。

虎鮫代の舌は出たり入ったりみんなの反応に大満足している。

「ふふふっ うそ」

ひゃーやるなぁ虎鮫代ちゃん

予期してなかった最後のしめのお茶漬けの様な意外性で、この話は怖い話に認定された。

すると下から、「ごはんよー」と正子の声

「はぁーい」

夕食時、きみ子と虎鮫代ちゃんは顔を見合わせ

「あれ、やろう」

「うん」

なんじゃ?

きみ子と虎鮫代ちゃんは正座して

息を吐く

「はしゅるるるるるるー」

そして

「食の時間」と言って何やらレポが始まる

興味津々のみんな

なんだ?一体何が始まるんだ?

きみ子が喋りだす
「見よ、この味が染み込んで焼きたての生姜焼き、ニンニクと醤油の香ばしい香り」

「見ているだけで、ヨダレが垂れそう、有名主婦の作品です」

照れる正子

「口の中に入るこの至福の瞬間たまりません、では幸せよ私の口にやってこ~~~~~~いっ」

天国で眠る天使のような顔を浮かべ

どんな顔じゃ。

きみ子は目をつむり 口にほうばる

「そして、同時にこの炊きたての白飯をイッキにかきこむ、ぬおおおおおーっ」

ガツ ガツ ゴクリ

「んまーーーっ」きみ子大満足の顔

冬馬君はふと思った、一体何なんだこれは?

「次は、虎鮫代ちゃんだよ」

「みんなどっちが美味しそうだったか、決めてね」ときみ子

ああ、そういう遊びね。

虎鮫代ちゃんの食レポが始まる

「私、虎鮫代ちゃんは玉子焼きが好き、見よこのグチャグチャの玉子焼き、ちょっと焦げてる玉子焼き、匂いは特にない」

「その玉子焼きを食べる前に」

ペロリンチョ

なっ、舐めた!!!

もっ ひとつ おまけに ペロリ




ペロリ



ペロリン



この時ようやく隆は思った

































なんだ この子!!





玉子の色がおちるまで ペロリ




おちるか!!




もっひとつおまけに ぺろ ぺろ ペロリ





「これにて、食す」





パク





「こおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーっ」



ズクシュ



玉子焼きはこっぱ微塵になり鼻から噴出された



ブヒュー ビチャ ビチャ

手はジタバタされており(一応敬った)舌は出たり入ったりしている

「こおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~~ッ辛いーーーーーーーーーーーー」

すると正子が
「あつ、忘れてた せっかくだからロシアンルーレット玉子焼きみんなでやろうと思ってひとつ辛子沢山いれてたんだった、すっかり忘れてた」

みんなはずっこけた。

皆で過ごす一日は続く



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