エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。

ミツユビナマケモノ

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エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。

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 先ほどまでアルファレドの噂をしていた連中の口からは、推測や憶測がひっきりなしに飛び出、蜂のように不穏な羽音をたててあたりを旋回している。
 いつもは辺境の領地にひっこんでいる大貴族が王都にあらわれた理由は気になるが、こちらとしては自分から注目がそれてくれることのほうがありがたい。しかし、それほど気になるなら大公に直に尋ねれば良さそうなものだが、貴族社会の面倒なルールで、公式の場では身分が下の者から上位の者に声をかけることは許されない。
 事務的な連絡事項がある場合、上位者から声がかかった場合、仲介者が間に立って紹介してくれるか、紹介済みの場合は別だが、大公は自分から声をかける気はなさそうだ。
 ここにいる者のほとんどは大公とは初対面だろうし、彼女より位が高く、この場で唯一仲介をつとめられるはずの国王も、その労をとるつもりはないらしい。
 身代わりのように、にわかに人に取り巻かれているのはレオンコート伯爵だ。大公には声をかけられないが、その叔父は気安い相手ということか。質問攻めにあう伯爵は、へらへらとした笑顔で受け流している。
 逆に渋面極まれり、という顔つきをしているのは、宰相のリュシエール侯爵。陰で苦虫殿というあだ名をたてまつられている、しかつめらしい顔に困惑を押し隠し、袖のほうで直立不動の姿勢をとっている。宰相も今回の上洛を知らされていなかったとしたら……。
 爺さん、結構プライドが傷ついたのではないか。
 ドスドスと重量級の足音を響かせて、タリン公爵がリュシエール侯爵に詰め寄った。
 知っていたのか、という、やや喧嘩腰の問いに、一層の渋面で宰相が小さく首を横にふる。両者は政敵同士で、性格も水と油、私的にも険悪という話だが、ここは一時休戦らしく、短い応酬のすえ、政敵に尻をたたかれた宰相が、王の前に進み出た。
「おそれながら、陛下……」
 腰を折りつつ、宰相は幾分疑惑をふくんだ眼差しを主君にむけた。
「此度の大公殿下の急な御上洛、もしや〈湿地バグ・ランド〉でなにか異変が……」
 王が片手をあげた。宰相が口を閉ざす。アレクタリスは温厚な君主で、臣下を恫喝することはなく、その発言を妨げること自体珍しい。が、今はあえて宰相をさがらせると、王は玉座から立ちあがり、夜会に集まった者たちを見回して、おもむろに口を開いた。
「――皆、ランシエナの主がここにいる理由を知りたいと思っていような」
 何人かがゴクリと唾を飲む気配がした。
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