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エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。
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……バリバリと硬いものを砕く音がする。
深い闇の底で、尖った鱗を背に並べた竜が、しきりと何かを噛み砕いている。
腹の下はうずたかく積まれた死骸の塚で、竜が身じろぎするたび、腐った肉をこびりつかせて骨が虚ろな音をたてて崩れ落ちる。
前肢に剣を後ろ肢で髑髏を踏みつけにした竜は、頬まで裂けているせいで嘲笑を浮かべているようにも見えなくない口に、金色の木の根のようなものをくわえている。
血の涙を流したように真っ赤な瞳がぎょろりと動き、こちらを捉えた。
頬の肉がつりあがり、顎の裂け目がますます深くなる。鋭い牙をぞろりと剥き出して、竜はけたたましい笑い声をあげた。
一晩中悪夢にうなされ、朝の訪れとともに飛び起きたアルファレドは、身支度もそこそこに部屋を飛び出した。この一年ろくに部屋から出てこなかった王子が廊下を疾走する光景に、行きあわせた召使たちがギョッとして棒立ちになる。
「父上、昨夜のアレは一体――」
「やあ、アルフ、おはよう。珍しく早いね」
寝癖だらけの頭で食堂に駆けこんできた息子を、アレクタリスは笑顔で迎えた。朝食の皿の横の銀盆に、山と積まれた新聞から一紙とりあげ、広げてみせる。
「ご覧、王都の新聞が今朝一斉に出した号外だ。主要紙からミニコミ紙まで、見事にどれも一面ブチ抜き――」
王が手にする三流ゴシップ紙の全面には『祝!(前科二犯)事故物件王子、新しい婚約者確定か!?』の文字がデカデカと躍っている。
「それ、不敬罪にならないんですかっ!」
「我が国の不敬罪はせいぜい罰金刑だ。皆ご祝儀と思って喜んで払ってくれるさ」
アレクタリスは二十歳でアルファレドの父親になったので、まだ四十歳をすぎたばかり、しかも実年齢より五つか六つは若く見える。眩いほどの金髪と明るい翠緑の瞳もふくめて、父子の顔だちはよく似ている。げっそり老けこんでいるであろう今朝の自分と並ぶと、年のはなれた兄弟に見えるかも知れないと、埒もない想像に一層げんなりしつつ、アルファレドはよろよろと自分の席に向かった。
父王の傍を通りすぎるとき、見たくもないのに目についた別の新聞の見出しは『王子、三度目の正直なるか、はたまた二度あることは三度ある、か?(あるいは国王の顔も三度までか……)』そして自称・消息筋の出鱈目な話を、これでもかと書きたてている。
他人事だと思って。
「とにかく、私は、あんなのごめんで、す……、よ」
ぶつぶつ愚痴りながらダイニングテーブルを回りこみ、侍従が椅子を引くのも待たず、自分の席に腰をおろして前を見たアルファレドは、またもや金縛りに襲われた。
……バリバリと硬いものを砕く音がする。
深い闇の底で、尖った鱗を背に並べた竜が、しきりと何かを噛み砕いている。
腹の下はうずたかく積まれた死骸の塚で、竜が身じろぎするたび、腐った肉をこびりつかせて骨が虚ろな音をたてて崩れ落ちる。
前肢に剣を後ろ肢で髑髏を踏みつけにした竜は、頬まで裂けているせいで嘲笑を浮かべているようにも見えなくない口に、金色の木の根のようなものをくわえている。
血の涙を流したように真っ赤な瞳がぎょろりと動き、こちらを捉えた。
頬の肉がつりあがり、顎の裂け目がますます深くなる。鋭い牙をぞろりと剥き出して、竜はけたたましい笑い声をあげた。
一晩中悪夢にうなされ、朝の訪れとともに飛び起きたアルファレドは、身支度もそこそこに部屋を飛び出した。この一年ろくに部屋から出てこなかった王子が廊下を疾走する光景に、行きあわせた召使たちがギョッとして棒立ちになる。
「父上、昨夜のアレは一体――」
「やあ、アルフ、おはよう。珍しく早いね」
寝癖だらけの頭で食堂に駆けこんできた息子を、アレクタリスは笑顔で迎えた。朝食の皿の横の銀盆に、山と積まれた新聞から一紙とりあげ、広げてみせる。
「ご覧、王都の新聞が今朝一斉に出した号外だ。主要紙からミニコミ紙まで、見事にどれも一面ブチ抜き――」
王が手にする三流ゴシップ紙の全面には『祝!(前科二犯)事故物件王子、新しい婚約者確定か!?』の文字がデカデカと躍っている。
「それ、不敬罪にならないんですかっ!」
「我が国の不敬罪はせいぜい罰金刑だ。皆ご祝儀と思って喜んで払ってくれるさ」
アレクタリスは二十歳でアルファレドの父親になったので、まだ四十歳をすぎたばかり、しかも実年齢より五つか六つは若く見える。眩いほどの金髪と明るい翠緑の瞳もふくめて、父子の顔だちはよく似ている。げっそり老けこんでいるであろう今朝の自分と並ぶと、年のはなれた兄弟に見えるかも知れないと、埒もない想像に一層げんなりしつつ、アルファレドはよろよろと自分の席に向かった。
父王の傍を通りすぎるとき、見たくもないのに目についた別の新聞の見出しは『王子、三度目の正直なるか、はたまた二度あることは三度ある、か?(あるいは国王の顔も三度までか……)』そして自称・消息筋の出鱈目な話を、これでもかと書きたてている。
他人事だと思って。
「とにかく、私は、あんなのごめんで、す……、よ」
ぶつぶつ愚痴りながらダイニングテーブルを回りこみ、侍従が椅子を引くのも待たず、自分の席に腰をおろして前を見たアルファレドは、またもや金縛りに襲われた。
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