エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。

ミツユビナマケモノ

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エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。

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「それと……、これが陛下の苦慮なさったところなのですが、新しい婚約によって、現在の政治的均衡に著しい偏りが生じないことも――」
 それが特別な条件なのだろうか。一つの家や勢力に恩恵が集中するのは、貴族社会の均衡の上に立つ王家としては、好ましい状況とは言えない。
「王家の婚姻としては、当然の配慮でないのですか?」
「ええまあ、それはそうですが……」
 夫人は、まだ何か言いたそうに言葉を濁したが、気をとり直し、
「とにかく、他にも細々とした条件を加味し、ふるいにかけ、最終候補に残った御令嬢は、七人ほどおりました」
「なんで、その七人の誰かじゃダメだったんです???」
 今なら、常識の範疇の住人であれば、好きの嫌いのと贅沢は言うまい。
「まあ……、陛下としては、お茶会なりなんなりで、候補の令嬢方とのお見合いをセッティングしたかったようですが……」
 夫人は同情をこめた眼差しでアルファレドの顔をまじまじと見つめ、深々とため息をついて、諦めたように真実を口にした。
「各家に打診したところ、即刻、全ての家からお断りの返事がありましたの……。あまりにも恐れ多く辞退させていただきます、か、我が家の娘は近日中に他に婚約をまとめる予定あり、のいずれかの口上で」
「私は、そんなに嫌われていると……?」
「なにを今さら……」
「夫人?」
「まあ、おほほ、ほほ」
 笑って誤魔化すか。
「国王陛下としては、先にあげた条件の下限をさらに下げて、候補者の範囲を広げるか、お考えになったようですが、それは好ましくないと結論を出されたようで」
 それをすると、王家とつながりを持って、極端な成りあがりを狙う者があらわれる恐れがあると、警戒したのだろう。ミリアムのことが、あったから。しかし、だんだん読めてきた。
「それで、逆に上限を上げた……? で、アレ?」
「はい。大公殿下は諸条件をクリアできるうえ、知力、財力、権力、政治力、影響力、戦闘力、全てにおいて他を凌駕します。アレは本来なら国王陛下でさえ恐れ多くて手が出せない、我がテオフィルスにおける独身女性の最強……、いえ、最高物件ですの」
 最恐物件の間違いではないだろうか。戦闘力ってなんだ。
「性格は問題にならなかったんですか……」
 頭を抱えるしかないアルファレドの前で、淑女の鑑らしくもなく鼻歌まじりにお茶を楽しんでいた夫人が、ふと顔をあげた。
「あら、もうこんな時間ですのね――」
 中庭へ大きく開け放たれた応接間の窓から、夕の風が忍びこんできた。
 空に茜がさし、徐々に紫へと移り変わり、暮色が地上に影を落としはじめる。
 黄昏時の一瞬、コンスキエンティア宮は、普段と違う姿を見せる。
 王宮を覆う不可視の結界が、光と闇が交錯する刹那の狭間、幻のように浮かびあがり、虹色の輝きを放つのだ。
 王宮の中でも外でも、人々は手を止め、空を見上げる。ドーム型の結界は、七色の糸で複雑に編みこまれたレースのような、巨大な立体魔法陣だ。
「王宮がもっとも美しいのは、この一時ですわね……」
 生まれたときから住んでいる者にとっては、別段、珍しい光景ではないが、夫人の漏らした感嘆に異論はない。
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