エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。

ミツユビナマケモノ

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エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。

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 幸い、会場にはすんなり入ることができた。そして――。
「――デュランス伯爵、ならびにエリアーナ夫人、それと御子息の……」
「ルークでございます、大公殿下。息子は今年の春、学院を卒業したばかりで……」
 延々と、いつ果てるとも知れず、貴族たちの挨拶が続く。
 侯爵邸の大広間メインホール、主賓の椅子に、魔王……、いや、女王然と腰かけた大公の前に、お目通りを希望する者たちが長蛇の列をなしている。列の尻尾は広間の外だ。
 大公の隣で、丸まっちい顔で愛想をふりまいているのは、本日のホスト、ネミル侯爵。もっとも侯爵はニコニコしているだけで、大公の傍についたアードラー伯爵夫人が、時おり貴族たちの補足情報を耳打ちしている。貴族名鑑が丸ごと頭に入っているとは恐れ入る。
 意地でついてきたが、お呼びでなくて全然やることのないアルファレドは、少し離れた休憩スペースでヤケ酒をちびちびやりつつ、大公詣での連中を横目に眺めやった。
 なんなんだ、あの大行列は。これじゃ夜会というより、王都随一の人気ロマンス小説家の握手付きサイン会みたいだが、それだってあんなに並ばないぞ。
 大広間の天井では、魔晶石のシャンデリアがひかえめな光を放っている。
 王宮や貴族の邸宅で使われる照明は特注品で、その分高価だが、量産品の照明器具は、生活魔道具がインフラとして行きわたったテオフィルスでは、どんな貧しい家庭にも必ずあるというほど普及している。魔道具に組みこまれた魔晶石は、内包する魔素が尽きると分解してしまう。交換、補充等、各用途にあわせて加工された魔晶石の流通は膨大なものだ。
 その流通に、ほんの一枚、切れ端でも噛むことができれば、利益は計り知れない。ましてや大公自身が山を下りてくることは滅多にない。
 だから皆、この好機を逃がすまいと、顔と名前の売り込みに必死なのだろう。
 列の中には、王都の大商会の主たちの顔も見える。ネミル侯爵は、自らのコネに連なる者たちに総動員をかけたらしい。
「エール子爵、ならびに、クラリッサ夫人――」
 キツめの容貌に、長身痩躯のクラリッサ夫人が、強気な笑みを浮かべ、御前に出た。付き従う子爵と息子三人は下僕のようだ。
「長男のウィルフリード、十九歳、それと三男のフィロウ、十四歳でございます。あと次男のノリス。ウィルフリードは今年、正式に騎士の位を賜りましたの。同期の中では一番早い叙位で、将来、大変有望だと、期待の声も多くいただきましたわ。フィロウは一年早く学院に入学が決まりまして、入学試験の成績も――」
 ペラペラ・ペラペラ。口紅を食ったかと思うクラリッサ夫人の真っ赤な唇から、止めどなくあふれる長男と三男の怒涛の自慢大会に、他は忍の一字の我慢大会だ。
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