クラス転移したと思ったら自分と妹だけ魔界にいた

いづみやしゃ

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第1話 転移前

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♦ 2-1 昼休み

「ねむ…っい」
俺―こと折葉莉音おりばりおんは徹夜の影響による眠気を必死で抑えていた。机に突っ伏す寸前でかっくんかっくんなっている。授業にも全く集中することができていない。…でも俺は悪くない!そうだ!面白すぎるドラ○エが悪いんだ!
「眠いのですか兄者。…またドラ○エなのです?」
そう声をかけてくれるのは俺の妹―折葉寧おりばねいだ。わざわざ中学生の棟から来てくれたんだな。
しっかし、いつも思うが俺の妹とは思えないくらい可愛いなぁ。世界で一番可愛いなぁ。…流石にそれはない?でも身内びいきとは言い切れないと思うぞ?我が妹は100人中110人が可愛いと答えるくらいには可愛いのだ。これはもう天使と言っても過言ではない――と、そんなことを本気で思っていると、妹が訝しげな顔を向けてくる。
「誰に言っているのですか、兄者。徹夜のし過ぎで頭おかしくなったのです?」
と、まとめた髪をグイグイ引っ張ってくる。口に出ていたとは。
「痛い痛いひっぱるな。それに一日徹夜したくらいで俺の頭はおかしくならないぞ?今日は辛辣だなぁ我が妹よ。」とたんむすーっとした顔になり、
「髪が長いのが悪いのです。ふんっ」
ぷいっと横を向かれてしまった。これにはかなーりのショックを食らう。
「なん…だと…」
嘘だろ…お兄ちゃん悲しいよ…そうだ、いつだか友人が言っていた、思春期になるとかなりの確率でこうなるという―――
「そうかッ、これが反抗期かッ…!」
ぐぉぉと悶える俺の隣で、妹がくすりと笑い、
「冗談です。みゅ~」
と言いながらぴたっと引っ付いてくる。

いつも通りの昼休み。友達と喋ったり、校庭に出たり、喧嘩をしたり、殴り合っていたり、悪口の応酬をしていたり。…後半おかしいなぁ。うちの学校大丈夫かなぁ。学校に不安を覚えていると――いきなり教室の床が光り始めた。
「みゃぎゅ⁉」
「しっ―白い光⁉なんだッ、これ―」
慌てる俺たち。
これはまさか巷で話題の―――
「「「「「「異世界召喚⁉」」」」」」
教室のあちこちで同じような声が上がっている。
「やはりかあぁッ⁉」
「みょあああああぁぁ⁉」
叫びだす俺たち。
「みんな落ち着いてっ」
「暴れるな!まだそうと決まったわけじゃ――」
委員長達が必死で皆を落ち着かせようとしているが、そこは極限状態の人間。そんなこと誰も聞いちゃいない。
「ダメだ!今こそ皆で団結しなおべぇふっ⁉」
委員長たちを踏み台に、皆が一斉に扉へ向かっていく。
「あッ、開かないわッ」
「窓は⁉」
「無理!開く気配ナシ!」
「皆話を聞いてくぶはッ」
あぁ可哀想に、こんな時に統率を取ろうとすること自体が間違っているだろう。(個人の意見です)やれやれ冷静にならねば――しかし、そこでまだクリアしていないゲームを思い出す。
「…マズイぞ!俺のぼうけんのしょがぁッ」
ドラ○エに最近どっぷりな俺は、転移したら続きができなくなることに今気付いた。さっきの決意はどこへやら。俺もあっという間にパニック状態だ。人のこと言えないね、うん。
「この期に及んでゲームの話なのですかッ、兄者ァ!」俺に対する呆れを絶叫する妹。
「いやだってほんとにあと少しでクリアなんだもん」
「ちがうのです!そうではなく―」
俺と妹が口論していると、
「うわあッ!」
怯えたような声を出すやつが居た。
「なんだ⁉」
「お、折葉、お前の下、下ぁッ」
「「はえ?」」
俺と妹の下に、新たな魔法陣が現れていた。
「「いッ、いつの間にいッ⁉」」
たちまち紫色に輝き出し、キュイイイイと謎の効果音も聞こえる。
「ちょっと待てッ!だからまだ全クリしてないゲームあr―」
「あにじゃあああぁぁぁぁぁええぇぇ―」
―――それが、俺たち兄妹がこの世界で発す、最後の言葉となった。
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