【R18】因習村で崇拝されるヤンデレ御曹司は運命の花贄が好きすぎる〜鬼神様の蜜愛〜

三月よる

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第16話 鬼神の現身 (真白)

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 真白と丑島は、鬼花大社の拝殿にいた。
 村民手作りの鬼灯提灯がそこかしこに並べられている。すべて、鬼神祭のために用意されたものだ。
 丑島は、呆れ混じりに言った。

「真白様、本日で14日目です。お分かりでしょうが、これ以上祭りの延期は困難ですぞ」

「分かってる」

「でしたら、お早くなさいませ。『花贄の儀』は真白様のご健康のため、ひいては鬼門財閥の生命のために必ず遂行しなければ……」

 丑島の諫言は一再にとどまらない。柳眉を逆立て、真白は声を荒げた。

「委細承知だ!」

 真白は舞楽用の槍を回し、風切り音を立てさせた。大迫力の太刀捌き。けれど、彼を幼少期から知っている丑島は平然としている。
 張り裂けそうな左胸を鷲掴み、真白は言った。

「彼女の意思を尊重したい──」

 ◇

 鬼門一族は、稀に、白い髪と緋い瞳をした男児が生まれる。
 はじめは、明治時代の跡取り息子。
 その珍かな容姿が『不吉』の象徴と忌避され、彼は一族から爪弾きにされていた。人目に触れないよう座敷牢で育てられ、病苦に冒されたという。

 ある時、彼は死の淵に臨んだ。
 すると、何の因果か、財閥は原因不明の経営破綻に追いやられた。
 幸いにも跡取りは回復し、すると、財閥の経営も立ち所に捲土重来けんどちょうらいを期したのである。まるで、神の恩寵かのように。

 跡取りと鬼神は、因果があるのでは?
 そう考えた当主は、跡取りを鬼月村に住まわせた。村民は皆、鬼神の篤信者で、跡取りの見目を『鬼神の現身』として崇めて。
 それから跡取りが健やかに育つと、経営も右肩上がりとなり……。
 以来、白髪と緋色の瞳の男児は『鬼神の現身』として、一族に崇拝されている。

 現身は鬼神の力を継ぐ、
 つまり、子作りをしなければならないのだ。
 『花贄の儀』とは、現身と『花贄』が契りを結ぶ儀式である。

 もし怠れば、、一族郎党根絶やしだ。にも関わらず、真白が祭りを延期する理由は──……

 ◇

 『夕暮前には戻る』真白は足早に公民館へ向かった。
 1人になると丑島の諫言が反芻される。
 彼の言っている事は正論だった。本来ならば、『花贄の儀』は花贄が都落ち──つまり、引っ越してきた翌夜に執り行うものだ。

 丹子がやって来てから、14日。花贄の儀を先延ばしにしているため、真白の体は着実に蝕まれていた。頭痛、吐き気、不眠、めまい……吐血。
 本当ならば、一刻も早く、丹子と花贄の儀を行わなければならないのだが──。

 丹子を知ったのは4年前。鬼帝大学に入学した彼女が、丑島と出会った時と同時である。
 丑島は、鬼門家の分家筋の人間だ。彼の家系は花贄を吸い寄せ、嗅ぎ分ける霊力がある。そして、運命に導かれ、丹子は、丑島のゼミに入ってきた。
 そして丑島から送信された、丹子の写真や動画の数々。

 ──一目惚れだった。
 透き通るような栗色の髪の毛と丸く大きな瞳や、鈴を転がすような可憐な声音。
 自分が神のようなものなので、実のところ真白の信仰心は薄い。けれど、丹子が花贄だと知った時は、鬼神に感謝した。

 実際の丹子は、驚嘆に値する愛らしさで。折目正しく、正直で、律儀なところがところがある。
 複雑な家庭環境で生き抜いたためか、少々甘え下手な所はあるようだ。言葉にせずとも、彼女の生き様が目に浮かぶ。彼女の全てがたまらなく愛おしい。

 そして、熟考すればするほど思うのだ。
 やはり儀式を先延ばしにするべきだ。己の欲のためになど、到底できない──。

 思案に耽る真白は、丹子が待つ公民館に到着した。けれど、人気ひとけがない。展示室もも抜けの殻である。
 すると、玄関の外でバタバタと乱れる足音がした。

「現身様! 現身様ーっ!!」

「なんだ騒がしい」

 大声で呼び立ててくる村民に、真白は鼻根を寄せる。押っ取り刀で駆けつけた村民は、肩で息をしながら言った。

「申し訳ございません! ですが緊急事態でございます! 花贄が林の中へっ」

「高倉が尾行していたと目撃証言がございました!!」

「!!」

 真白は無言で戦慄する。そして猟犬のように走り出し、またたく間に林の中へ消えていった。


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