【R18】因習村で崇拝されるヤンデレ御曹司は運命の花贄が好きすぎる〜鬼神様の蜜愛〜

三月よる

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第40話 これから

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 丑島参りと誠の事件からおよそ半年が経ち、今日は大晦日だ。
 外界が帰省や仕事納めで慌ただしい中、鬼月村の時はのんびりと流れている。

 鬼門家の屋敷も普段通り静謐だ。
 けれど、屋敷の奥へ進むと、夫婦の寝間から激しい息づかいが聞こえる。昼過ぎにもかかわらず、丹子と真白はいまだ愛し合っていた。

「ふふっ、胸が張ってる。そういえば生理が近かったかな。痛くない?」

 まろやかな乳房を揉みながら、真白は丹子に問いかけた。彼の言う通りそろそろ生理になる頃だ。
 いや、実のところ予定日をとうに過ぎている。

 義理の母や姉にいびられた日々も、誠に婚約破棄された時でさえ、生理は遅れずやってきた。
 もちろん、多少の誤差はある。けれど基本的には遅れず、最大で3日。けれど、今回はそれ以上過ぎていた。

「ていうか……予定日過ぎてない?」

 指折り数えた真白は、カレンダーを見て確証を得た。今月の生理予定日から、すでに10日を過ぎている。
 衣擦れの音を立て素早く起き上がり、真白は丹子の丹田を、やさしく撫でさすった。そして眉根を寄せて宙を睨む。「もしかして」裸の丹子に幾重にも毛布を掛けた。

「お、重いんですけど」
「丹子は待っててね。医者を呼ぶから」
「いや、その前に毛布を」
「寅谷さん! すぐに連絡を──」

 厚手の茶羽織りに素早く手を通し、真白は寝間から矢のように飛んで行った。真白がいない広やかな寝間に、寂しい空気が流れる。

 丹子は考えを巡らせた。
 ──妊娠かな!? そうだよね!?
 この半年間、子作りという建前で真白に抱き潰されてきたので、当然そう思った。
 朝々暮々、愛し合うのは当然。そして白昼堂々、隙あらば真白は丹子を抱いてきて。
 そんな調子だから、行為中、何度か寅谷に目撃された。

 寅谷と目を合わせたら愧死しそう。だから、丹子は彼女を避けていたのだが、寅谷の方から積極的に接触してきて。
 滋養強壮に良い漢方薬や、精力がつく食べ物を与えられた。睦み合いと子作りを手伝う、というのだ。

「ご安心下さい。真白様にはお出ししてませんので。あのお方が精力をつけたら、丹子様のお体が持ちませんからね」
「今以上に元気に……」

 そうなれば四六時中抱かれ、おそらく腹上死する。享年22歳かと、考えるだけでゾッとした。
 まあ、それも満更ではなく、応じ続けてきたのだが。
 丹子は、期待に胸を膨らませ真白を待っていた。


 ◇◇◇
 

 寝間着姿で布団に端座し、丹子は医者の言葉を待った。

「おめでとうございます。ご懐妊です!」

 目を輝かせ高らかに、医者は診断を下した。
 心躍る丹子は真白を見る。けれど、彼は言葉を失い、丹子の腹を凝視していて。そして片手で目元を覆い、ガクッとうつむいた。

 ──まさか、嬉しくないのだろうか。
 
 動かなくなってしまった真白。彼を無言で打ち守っていると、医者は空気を読み退室した。

「喜んでくれないんですか?」

 丹子は、おそるおそる問うた。真白は首を横に振る。そして「違うよ」と、おもむろに丹子の前で座礼した。

「僕……この幸せをどう言い表せば良いのか……分からなくて」

 丹子はうつむく真白の頬に手を触れ、顔を上げさせた。
 ──落涙している。ぽろぽろと真珠をこぼすような、美しい泣き面だ。

(こんな時までイケメンなのね)

 鬼神の現身、真白。その存在はどこまでも気高く、高潔で。
 けれど、彼に捧げられた花贄──丹子といる時だけは、誰よりも人らしい。
 世間知らずで、こうして感情を露わにする、少々情けない愛すべき夫である。彼の眦に滲む涙を、丹子は指の背で掬い取った。
 真白は、丹子の指に齧りつく。

「愛してる。食べちゃいたいくらい」
「ぷっ! なにそれ」
「ふふっ、ウケた」
 思わず吹き出すと、真白は喜色満面になる。
 丹子は、これから先のことに想いを巡らせる。

「外界に出たら、子供と一緒にお出かけしましょうね」
「ふふっ、世界の果てまで行こっか」
「ダメ、帰ってきます」

 冗談だろうが、真白が言うと本気に聞こえる。
 丹子は、真白にやさしく口づけた。
 はじめて自分からしたキスだった。



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