異世界と現代がダンジョンで繋がるお話

pomu

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彩矢たちと別れた後、勇司は小高い山の中腹にあるお寺の墓地まで来ていた。


日が沈みかけた夕暮れ時、墓地には勇司以外には誰もおらず風揺られた木々のさざめく音だけしていた。

勇司は
『 神谷家之墓』
そう彫られたお墓の前にしゃがみしばらく手を合わせた。
そして、

「父さん、今日探索者学校を卒業出来たよ。
教官の指導は実技も学科も厳しかったけど彩矢や影彦に助けてもらって、チームワークも褒められたよ。
それにちゃんと探索者以外の勉強もして首席になれたんだ。
父さんが亡くなってだいぶ経ったけどようやく本格的にダンジョンに潜れるようになる。
最初に辿り着くのは無理だとしても、必ず自分たちの力で最深部まで辿り着いてみせる。
それじゃあ、帰るよ。またいい報告を持って顔を見せにくるから。」

勇司は立ち上がり再び手を合わせ墓地を後にした。


家に着く頃には、日は沈み会社終わりに飲んだであろう人達がちらほらと見かけれた。

「ただいま」
勇司が帰宅すると、奥から1人の女性が姿を見せる。
「母さん、ただいま」

母親は優しい表情をし、
「勇司、おかえりなさい」
と嬉しそうに返す。

そして、
「今日は勇司の卒業記念だし、好きな物をたくさん作ってるから、先にお風呂入ってさっぱりしてきなさい。」
と言うと台所の方へ戻って行った。

勇司は言われた通り、風呂に入りながら学校生活のことを振り返っていた。

入学したてに受けた教官たちの厳しい指導と教訓
ダンジョンばかりに夢中になって一般常識が疎かにならないよう、厳しくも雑学なども面白く教えてくれた先生たち
初めてダンジョンに入り、モンスターを倒したこと
彩矢や影彦とパーティーを組み3人で10階層まで到達出来たこと

様々な思い出が湧いては消えてゆく。

そうして振り返りながらも、明日から本格的な探索者になることへの期待感も高まっていた。


風呂から上がり、母とご飯を食べ終えると
「勇司、あなたは明日から探索者になるのよね。」

しっかりと頷きながら
「なるよ。危険なのは分かっているし、深くまで潜るなら何日もダンジョンに籠ることになる。
けど、深くまで潜ることが出来れば高価な素材やまだ見たことの無いものがあるかもしれない。
それに...」

1度言葉を区切り、力強い目をして
「それに父さんの辿り着けなかった最下層に何があるかも知りたいんだ!」

「そう...。分かったわ。
じゃあ、お父さんが驚くくらい強くなって、何があったのか報告してあげなさい。
だけど、絶対に無茶をして死んだりしたらダメよ。
それだけは約束してね。」

悲しそうな表情の母を見て、改めて決意をし
「約束するよ。絶対に死なない。
生きてちゃんと帰ってくるよ。」

その言葉と表情を見て安堵し、それから、からかい交じりに
「それと、彩矢ちゃんとはどうなのよ?
幼なじみだし、同じパーティーでしょう?
ダンジョンは危険で命を預けるから、結婚しても長く続くって言うじゃない。
ねえ、どうなのよ?」

勇司はニヤニヤしている母から顔を背けつつ
「いや、まだ彩矢とは付き合ってないよ。
学校を卒業するのに大変だったし...」
とバツの悪そうな顔をしつつ言う。

そんな息子の様子にため息をしつつ、
「はぁ、誰に似たのやら...。」


それから母は息子に恋について、家族についての説教をしながら夜は更けていくのであった。

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