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第三章
母の遺品
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受信塔を修理したところで、その日の作業は終わりにした。
ストーンもアーシャもギルドで依頼を受けてきて、少し遠出をするらしい。
「ちょっとだけお願いがあるんだけど」
夕食の場でアーシャが尋ねた。
「一日に一回でいいから、孤児院の管理者と会ってくれないかしら」
どうやら拠点に移った後もアーシャは欠かさず孤児院に行っていたようだ。孤児院は使用人が何人か働いており、子どもの面倒は見ていてくれている。
ただ、緊急の事態や想定外の出来事に対応できないので、そこが気になっているそうだ。
「では、私が昼時に見に行って、夕食の際に姫様とフェア様に報告しましょうか?」
「ありがとう! 助かるわ!」
アーシャたちは依頼をこなしに三日間だけ、モンスター討伐として北の樹海に向かうことになった。その間はスピカが孤児院の経営者代理となった。
マトビアは受信塔の操作に夢中で、翌日の昼に机と椅子を持ちだして、受信塔の横に張り付いた。
小さなテーブルの上で何やら作業をし始めると、スピカが紅茶を持っていき、昼食さえも受信塔の横で食べるといった具合だ。
そんな仲間たちを尻目に、俺はやることがなくなってきたので母の『ライフル』とかいう武器を触っていた。
俺は生活を改善するような補修をしたり、格段に便利になったときの人の笑顔を見るのが好きだ。しかし、この拠点はよくできていて、目立った不便さが見つからなくなってきていた。
俺だけ暇しているのも嫌だしな。
拠点の施設内で、テーブルに『ライフル』を置いて、じっくりと観察する。
母の部屋には『ライフル』の設計図はなく、まだ試作段階と思われた。
「鉛玉を発射していたと言っていたな……」
設計図はなかったが、それらしい玉のようなものがいくつかあった。
筒の中に入れてみるが、もちろんそれだけでは何も起きない。クロスボウと同じ考えであれば、トリガーが鉛玉を発射させる起点になるはずだ。
カバーを外してみると、トリガーを引くことで内部の小さな空間が開かれる、ということが分かった。
「鉄筒の最後部に何か入れるのか?」
しかし最後部の空間は外から入れるようになっていない。
そのときふと、母の言葉を思い出した。
『科学と魔法を機械工の技術で機械と成す』
科学とは母が作ったライフルの機構とすれば、あとは魔法を使えば……。
「魔法か」
鉄筒の後部に手を当てて、『火力《ファイア》』を唱えた。
鉄が熱せられて、後部が赤くなる。
小さな空間に凝縮された火は、遮断された空間を広げようとしていた。
そして、トリガーを引いた瞬間、鉛玉が発射され、炎が尾のように弾道を描く。
玉はキッチンのカウンターに置いていたコップに命中し、盛大な音をたてて割れた。
「おわ! びっくりした!」
トリガーが思っていた以上に軽かった。たぶん、開閉をスムーズにするために、トリガーの機構が改良されているようだった。
今度はライフルを持って、外の木を撃ってみることにする。
木の太さは人の胴回りほどあり、樹皮も硬い。
ライフル後部に火力を唱え、玉を装填する。
トリガーを引くと、照準どおりに木の幹に当たり、みしみしと音をたてて当たったところから折れた。
「す……すごい破壊力だな……」
決して細い木ではなかったはず。
改めて、握っているライフルを見た。
ストーンが言っていた通り、母の遺品はとんでもない武器だった。
魔法でこれほどの攻撃力を有したものは存在しない。そして破壊力のある近接武器のように近づかなくてもいいということは、防御の面でも優れている。
もしストーンたちと一緒にパーティーを組むことができれば、戦略としてかなり優位になるだろう。
ストーンもアーシャもギルドで依頼を受けてきて、少し遠出をするらしい。
「ちょっとだけお願いがあるんだけど」
夕食の場でアーシャが尋ねた。
「一日に一回でいいから、孤児院の管理者と会ってくれないかしら」
どうやら拠点に移った後もアーシャは欠かさず孤児院に行っていたようだ。孤児院は使用人が何人か働いており、子どもの面倒は見ていてくれている。
ただ、緊急の事態や想定外の出来事に対応できないので、そこが気になっているそうだ。
「では、私が昼時に見に行って、夕食の際に姫様とフェア様に報告しましょうか?」
「ありがとう! 助かるわ!」
アーシャたちは依頼をこなしに三日間だけ、モンスター討伐として北の樹海に向かうことになった。その間はスピカが孤児院の経営者代理となった。
マトビアは受信塔の操作に夢中で、翌日の昼に机と椅子を持ちだして、受信塔の横に張り付いた。
小さなテーブルの上で何やら作業をし始めると、スピカが紅茶を持っていき、昼食さえも受信塔の横で食べるといった具合だ。
そんな仲間たちを尻目に、俺はやることがなくなってきたので母の『ライフル』とかいう武器を触っていた。
俺は生活を改善するような補修をしたり、格段に便利になったときの人の笑顔を見るのが好きだ。しかし、この拠点はよくできていて、目立った不便さが見つからなくなってきていた。
俺だけ暇しているのも嫌だしな。
拠点の施設内で、テーブルに『ライフル』を置いて、じっくりと観察する。
母の部屋には『ライフル』の設計図はなく、まだ試作段階と思われた。
「鉛玉を発射していたと言っていたな……」
設計図はなかったが、それらしい玉のようなものがいくつかあった。
筒の中に入れてみるが、もちろんそれだけでは何も起きない。クロスボウと同じ考えであれば、トリガーが鉛玉を発射させる起点になるはずだ。
カバーを外してみると、トリガーを引くことで内部の小さな空間が開かれる、ということが分かった。
「鉄筒の最後部に何か入れるのか?」
しかし最後部の空間は外から入れるようになっていない。
そのときふと、母の言葉を思い出した。
『科学と魔法を機械工の技術で機械と成す』
科学とは母が作ったライフルの機構とすれば、あとは魔法を使えば……。
「魔法か」
鉄筒の後部に手を当てて、『火力《ファイア》』を唱えた。
鉄が熱せられて、後部が赤くなる。
小さな空間に凝縮された火は、遮断された空間を広げようとしていた。
そして、トリガーを引いた瞬間、鉛玉が発射され、炎が尾のように弾道を描く。
玉はキッチンのカウンターに置いていたコップに命中し、盛大な音をたてて割れた。
「おわ! びっくりした!」
トリガーが思っていた以上に軽かった。たぶん、開閉をスムーズにするために、トリガーの機構が改良されているようだった。
今度はライフルを持って、外の木を撃ってみることにする。
木の太さは人の胴回りほどあり、樹皮も硬い。
ライフル後部に火力を唱え、玉を装填する。
トリガーを引くと、照準どおりに木の幹に当たり、みしみしと音をたてて当たったところから折れた。
「す……すごい破壊力だな……」
決して細い木ではなかったはず。
改めて、握っているライフルを見た。
ストーンが言っていた通り、母の遺品はとんでもない武器だった。
魔法でこれほどの攻撃力を有したものは存在しない。そして破壊力のある近接武器のように近づかなくてもいいということは、防御の面でも優れている。
もしストーンたちと一緒にパーティーを組むことができれば、戦略としてかなり優位になるだろう。
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