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第三章
変化する情勢
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平原での戦闘を終えて拠点に戻ると、一室でスピカがマトビアと談笑していた。
「すごかったんですよー! もう、すごい数のモンスターと、すごい大きなドラゴンがいて!」
「まあ! ドラゴンがいたのですね!」
「ええ! ストーンさんと衛兵団が最初にモンスターをワーッと蹴散らして、リオンさんの仲間が飛行船から落ちたと思ったら、奇襲攻撃して、もう、すごい乱戦になりました!」
嬉々と話すスピカを羨ましそうにマトビアが見ている。
「ああ、私も飛行船に乗って、みんなを応援したかったです。きっと歴史に残る戦いになっていたでしょう」
マトビアとアーシャは拠点に残り、フォーロンとの連絡や、もしものときのために準備をしてもらっていた。
「フォーロンとの連絡はとれたのか?」
俺は部屋に入ってマトビアに尋ねる。
「ええ、フォーロンのジョゼフと連絡がとれました。まだモンスターの被害は確認されておらず、帝都に放っているフォーロンの監視からも連絡はないとのことです。しかし、モンスター襲来に備えて、ルルカ様が部隊を編成するとのことでした」
「ルルカが?」
大きな白いリボンを付けたルルカを思い出す。
フォーロンは田舎ということもあり、戦いに不向きな者たちばかりだ。ルルカに務まるだろうか。
「ルルカ様は帝国の剣術大会でも上位の手練れなんですよ?」
「そ、そうなのか……」
たしかに祭典での踊りは舞踊といった感じで、キレがあったな……。
「それに、フォーロン以外でも兵士を集めます。帝都周辺に向かいながら、隊を大きくしていくとのことです。そこに、なんとロキーソの男爵も参戦予定ですよ」
「ビョールか……! ビョールの魔法と弓術は優れているからな。それは頼りになりそうだ」
「それにロキーソの住民はビョールを慕っていますから、協力してくれるに違いありません」
ここにきて、旅の中で出会った人々が大きな力になってくれている。
飛行船からみた大量のモンスターの群れは、サイモンが身震いするのもうなずける恐ろしいものだった。
川と見間違えるほどのおびただしいモンスターは、何十万といった数で、その上空をドラゴンが数匹飛んでいた。
そして、大行進の先頭には片足を失った金色のドラゴン。
奴らは一直線に帝都を目指している。
そこは共和国と帝国がまじわる峡谷であり、いまも戦闘が繰り広げられているはずだ。
いくら地方の有力者が兵力を高めたところで、モンスターたちとはあまりにも数の差が開きすぎている。
峡谷で戦えば、時間はもつだろうが、いずれは打ち破られるだろう。
だが、勝算がないわけじゃない。
今は帝国と共和国が戦っている真っただ中にモンスターたちが第三勢力として割り込めば、共和国も刃を向けるはず。
当然、帝国側もモンスターは敵なので、混戦状態となり膠着するかもしれない。
そうなれば、かなり有利になる。
しかし、よく分からない。
モンスターの大群が峡谷を目指す理由も分からないが、何よりもなぜその大群で共和国を襲わないのか、だ。
ホーンの一件はモンスター本隊の千分の一にも満たない、極小の部隊だった。
もし何の理由もなく突発的にモンスターが行動したとすれば、まずは目の前にあるホーンを大軍勢で襲うはず。
単なる偶然なのか……。
考えていると、正門の方で鐘の音が聞こえた。
三人で拠点の広場に出てみれば、正門でストーンが応対していた。
「はー、またお前か、今度は一体なんだ?」
ため息を吐いたその先に議長の息子がいる。
「ホーンを守るために尽力いただき感謝している」
「んー?」
今回は前回の訪問時と違って、随分と落ち着いているように見えた。
髭も左右対称で整っている。
「その苦労に報いるため……というほど大層なものでもないが、とびきりの情報を持ってきた」
にやりと口端を上げ胸を張った。
すると、俺の後ろからマトビアがきつい眼差しを送った。
「また……嘘の情報じゃないですよね……?」
「……あ、いや……これはこれは、マトビア殿……」
「私に嘘の情報ばかり手紙で送って、それを信じろとおっしゃるのですか?」
「……あ、あれは……ちょっとした冗談のつもりで……」
「ホーンは片田舎どころか、大都会じゃありませんか! ほかにもあなたから聞いた話とは、大きく違うところがあるようです」
少し顔を赤くしたマトビアは、かなりのご立腹だ。
「いや、ほんとうに……申し訳ない。ついマトビア殿の気を引くために……嘘を」
議長の息子はしょんぼりと肩を落とす。
名前さえ知らないが、こうも喜怒哀楽が激しく凡才だと、なんだか愛着がわいてくる。
「それで、今回の情報もガセなのか?」
俺は尋ねると、首が飛んでいくんじゃないかと思えるぐらい頭を横に激しく振った。
「天地神明に誓って、いまから伝えることは真実だ。いいか……?
──共和国軍がベギラス帝国のバジデルク皇帝を討ち取った」
「すごかったんですよー! もう、すごい数のモンスターと、すごい大きなドラゴンがいて!」
「まあ! ドラゴンがいたのですね!」
「ええ! ストーンさんと衛兵団が最初にモンスターをワーッと蹴散らして、リオンさんの仲間が飛行船から落ちたと思ったら、奇襲攻撃して、もう、すごい乱戦になりました!」
嬉々と話すスピカを羨ましそうにマトビアが見ている。
「ああ、私も飛行船に乗って、みんなを応援したかったです。きっと歴史に残る戦いになっていたでしょう」
マトビアとアーシャは拠点に残り、フォーロンとの連絡や、もしものときのために準備をしてもらっていた。
「フォーロンとの連絡はとれたのか?」
俺は部屋に入ってマトビアに尋ねる。
「ええ、フォーロンのジョゼフと連絡がとれました。まだモンスターの被害は確認されておらず、帝都に放っているフォーロンの監視からも連絡はないとのことです。しかし、モンスター襲来に備えて、ルルカ様が部隊を編成するとのことでした」
「ルルカが?」
大きな白いリボンを付けたルルカを思い出す。
フォーロンは田舎ということもあり、戦いに不向きな者たちばかりだ。ルルカに務まるだろうか。
「ルルカ様は帝国の剣術大会でも上位の手練れなんですよ?」
「そ、そうなのか……」
たしかに祭典での踊りは舞踊といった感じで、キレがあったな……。
「それに、フォーロン以外でも兵士を集めます。帝都周辺に向かいながら、隊を大きくしていくとのことです。そこに、なんとロキーソの男爵も参戦予定ですよ」
「ビョールか……! ビョールの魔法と弓術は優れているからな。それは頼りになりそうだ」
「それにロキーソの住民はビョールを慕っていますから、協力してくれるに違いありません」
ここにきて、旅の中で出会った人々が大きな力になってくれている。
飛行船からみた大量のモンスターの群れは、サイモンが身震いするのもうなずける恐ろしいものだった。
川と見間違えるほどのおびただしいモンスターは、何十万といった数で、その上空をドラゴンが数匹飛んでいた。
そして、大行進の先頭には片足を失った金色のドラゴン。
奴らは一直線に帝都を目指している。
そこは共和国と帝国がまじわる峡谷であり、いまも戦闘が繰り広げられているはずだ。
いくら地方の有力者が兵力を高めたところで、モンスターたちとはあまりにも数の差が開きすぎている。
峡谷で戦えば、時間はもつだろうが、いずれは打ち破られるだろう。
だが、勝算がないわけじゃない。
今は帝国と共和国が戦っている真っただ中にモンスターたちが第三勢力として割り込めば、共和国も刃を向けるはず。
当然、帝国側もモンスターは敵なので、混戦状態となり膠着するかもしれない。
そうなれば、かなり有利になる。
しかし、よく分からない。
モンスターの大群が峡谷を目指す理由も分からないが、何よりもなぜその大群で共和国を襲わないのか、だ。
ホーンの一件はモンスター本隊の千分の一にも満たない、極小の部隊だった。
もし何の理由もなく突発的にモンスターが行動したとすれば、まずは目の前にあるホーンを大軍勢で襲うはず。
単なる偶然なのか……。
考えていると、正門の方で鐘の音が聞こえた。
三人で拠点の広場に出てみれば、正門でストーンが応対していた。
「はー、またお前か、今度は一体なんだ?」
ため息を吐いたその先に議長の息子がいる。
「ホーンを守るために尽力いただき感謝している」
「んー?」
今回は前回の訪問時と違って、随分と落ち着いているように見えた。
髭も左右対称で整っている。
「その苦労に報いるため……というほど大層なものでもないが、とびきりの情報を持ってきた」
にやりと口端を上げ胸を張った。
すると、俺の後ろからマトビアがきつい眼差しを送った。
「また……嘘の情報じゃないですよね……?」
「……あ、いや……これはこれは、マトビア殿……」
「私に嘘の情報ばかり手紙で送って、それを信じろとおっしゃるのですか?」
「……あ、あれは……ちょっとした冗談のつもりで……」
「ホーンは片田舎どころか、大都会じゃありませんか! ほかにもあなたから聞いた話とは、大きく違うところがあるようです」
少し顔を赤くしたマトビアは、かなりのご立腹だ。
「いや、ほんとうに……申し訳ない。ついマトビア殿の気を引くために……嘘を」
議長の息子はしょんぼりと肩を落とす。
名前さえ知らないが、こうも喜怒哀楽が激しく凡才だと、なんだか愛着がわいてくる。
「それで、今回の情報もガセなのか?」
俺は尋ねると、首が飛んでいくんじゃないかと思えるぐらい頭を横に激しく振った。
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