絶叫マシン

戒=かい

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絶叫マシン

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 最近、近くのテーマパークに新しいアトラクションができた。
 テーマは謎らしく、写真も情報もあげないと誓約書を書かされるというのが売りだとCMで流れていた。
 メディアも取り上げられないらしく、外見の様子や予想を上げるまでに留まっている。
 名前すらつけられておらず、皆、新アトラクションとか、今話題のアトラクションと呼ぶのに困っている。

ーー話題のアトラクションなら誰かしらが中の様子や、どんなものかを話しても仕方ないのではないだろうか。

 そう思いながら明日のデートを楽しみにしてる私がいる。久しぶりの遊園地デートなのだ。色々な明日の妄想を描きながらベットの中で眠りが来るのを待ち続ける。





 朝起きて、彼氏と最寄の駅で待ち合わせ、電車で揺られながらテーマパークへと向かう。着くのは開園間際になりそうだ。朝の風が気持ちよく、少しずつ暑くなる感じがした。
 駅に着き、目的地を目指す。電車を降りた人々とテーマパークへ向かうとそこには大きな入場門があり、たくさんの人が行列を作っていた。ここの人々の殆どが新しいアトラクション目当てなのだろうか。





 開園ともに多くの人が一箇所に向け走っていく。例のアトラクションだろう。
私も気にはなっているけれど、まったりとデートを楽しみたかったから、整理券だけとっておくことにした。
 遠目から見たアトラクションは大きな黒い布がかけられたビルのようだった。
 真っ黒な不気味な建物に並ぶ人々を尻目に、整理券の配布場所に向かった。
 とれた整理券にはお昼過ぎと記載されていた。





 新アトラクションに人気を奪われたジェットコースターやメリーゴーランドを楽しみ、お昼にテーマーパークのマークの入ったハンバーガーを食べると、あっという間に時間は過ぎていった。園内は変わらず多くの人が賑やかしている。
 整理券を見るともう少しで時間だったので、彼に話して例のアトラクションへ向かうことにした。





 一般入場とは別の整理券組の列へ並んだ。
 アトラクションはやはり大きな黒い布が上から被せられ、知らない人が見たら工事中に思ってしまうくらい、不気味で味気なかった。
 また防音設備がしっかりしているのか、中からは音が聞こえず、お客さんの絶叫もアトラクションの音も聞こえない。そこがいっそう恐怖感を放つのかもしれない。
 期待と不安が入り混じる中、10分ほど待つと係員に入場を促され、建物の中へと入っていった。





 中に入るとそこも無音で、スポットライトが立て札を照らしており、そこには一人ずつ扉からご入場くださいと書かれていた。その先を見ると大きな扉がある。
 指示に従い、最初に並んでいた痩せた男の人から一人ずつ順番に入っていくことになった。
 ホラー系はあまり得意じゃなかったから、彼と一緒の方が良かったが、そうも言ってられないようだ。先に私が入り、彼が後から入ることにした。
 少し待つと、ついに私の番が回ってきた。後ろを振り返ると彼は笑顔を返してくれる。私は引きつった笑いを返し、中に入っていった。





 中は薄暗く、全体がどうなっているかわからななかった。
 ギャーっと人の叫び声が聞こえる。
 ビクッとしてしまったが、止まってもいられず、ただ先へ行くしかなかった。
進むとぼんやりと明かりが机を照らしていて、その上にはペンと誓約書が置かれていた。

 書面には

 事故等があっても当園は一切責任を負いません。お客様の自己責任になります。
 サインをしたら扉の先に進んでください。

と書かれていた。
 ただの演出だと思うが、こんなものを書かせるのは趣味が悪い。

ーーこれで面白くなかったら文句を言ってやろう。

 そう思いながら私はサインをして扉の前へと向かった。サインの確認ができましたと音声が鳴り、扉が開いた。
 乗ると扉が閉じ、ゆっくりと上へと向かっているのが感じられた。
 少し経つと明かりがつき、自分が透明な箱に乗っていて、観覧車の様に動いているのがわかった。床も透明のせいか真下が真っ暗なせいか、落ちてしまわないか心配になった。
 全体の明かりも上に向かうに連れて明るくなっていって、私の先に家族で乗っている箱が見えた。中で合流も出来るのだったら彼を待ってれば良かったなんて思いながら家族の箱を眺めていた。そんな時だった。

 ガクン。

 急に箱が大きく揺れて止まってしまった。明かりも薄暗くなる。
 ウーウーとサイレンが鳴り、

 エンジントラブルが発生しました。お客様、動かないでそのままお待ちください。

と電子音声が聞こえた。

ーーついてないな。やっぱり人気のアトラクションだから、トラブルもつきものなのかも。

とぼんやりと隣の箱を目をやった。
 私は目を見開いた。
 こちらの箱に比べて、あちらの箱はグラグラと揺れていて、中で家族が倒れていたのだ。
 よく見ると、何かの拍子か箱の扉が開いてしまっていて、そこからこどもが落ちそうになっていたのだ。
 なんとか母親と父親がこどもの手を取って必死に持ち堪えてるようだった。
 突然の出来事に私は叫んだ。そして何か出来ないかと周りを見渡したが、透明な箱の中には何もなく、どうすることもできなかったのだ。
 何か……何か……と考えてみたが私には何も出来なかった。焦りだけが増していくのだった。
 もう一度、隣の箱を見た瞬間、親達の努力虚しく、こどもは暗闇へと落ちていった。
 呆然として、私はその場で座り込んでしまった。そのまま私の意識は遠のいていった。





 気がつくと、箱は下に着き、扉が開いていた。
 係員のピエロが、大丈夫ですか?と声をかけてきた。

ーーひ……こど……。

 言葉にならなかった。

ーーこどもですか?

 ピエロの質問にうんうんと頷くと、目線を私の上の方に向けた。
 先程の家族がまた箱に乗っていて上がっていく様が見えたのだった。落ちたはずのこどもも一緒だった。
 驚いた私にピエロがにんまり笑い、

ーーよくできた絶叫マシンでしょ?

と一言言った。
 それからどうやって帰ったかは覚えていない。





 半年後、この絶叫マシンはアクシデントで客側の箱の扉が開き、死亡事故が起きて、ここのテーマパークは閉園となったという。
 それと、私はその時の彼氏とは一年後に別れた。
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