短編

椎名菖蒲

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雪うさぎ

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雪原に立つ姿はあんなにも孤高に見えたのに、君が抱えると小刻みに震えた。
絶えかけた命に水を与えるように、時としてそれは残酷なものだ。
出会わなければこの子も、温もりに気付かずに雪の中で生きられた。
愛の温度に絆された。
それは腕を伝い根付くように縛る。
陽の当たらない心の隅にまで根を下ろす。
愛とは薬であり毒である。
花を生かすのも根を腐らすのも水であるように。
君の温度に祟られ怯えながら生きる。
君の温度が心の隅まで届き雪を溶かす。
それは呪いのよう。


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