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一章『プロローグ』
第二話『悪役の誕生』前編
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12歳、四月の秋、僕は今日をもって基礎学校を卒業した。
家に帰ると、両親はご馳走様を振る舞い、僕を祝った。
まったく、今日死ぬというのに幸せそうな人達だ。
「卒業おめでとうマレフィクス!」
「流石マーちゃん!首席で卒業なんて母さん鼻が高いわ」
ごく普通の人にとっては、理想的な両親なのだろう。
けど、僕にとっては牛や馬と変わらない。
人々は牛乳やチーズを作るために牛を利用するし、移動手段のために馬を利用する。
また、牛や馬に反抗されたり蹴られたりすれば頭にくる。
それと何一つ変わらないのだ。
もうこの両親から牛乳やチーズは作れない。
いや、正確には代わりがたくさん居る。
「凄いご馳走、こんなの初めてだ」
このご馳走は、最後の牛乳であり、チーズである。
村を滅ぼす前に食を楽しもう。
異世界の食は普通に美味しい。
料理や食の歴史があるし、文化などもある。
だが、残念ながらこの国の主食は米ではない。
パンと餅の間の感触をした『コメモチ』である。
最初は慣れなかったが、味は甘みがあって噛めば噛むほど口に広がるさっぱりした良い食べ物だと評価している。
他にも野菜、肉、魚、日本の食にあるものは勿論、前世で聞いたことや見たことのある食べ物や料理がある。
名前や味は違かったりするが……。
魔物の中には食べれる魔物も居るらしく、それが食事に出ることもある。
美味しいものも不味いものも等しくある。
この世界の食文化は、今後じっくりたっぷり知るつもりだ。
* * *
「ご馳走様でした」
僕がお腹いっぱいになったと同時に、両親は村の異変に気が付いた。
窓から見える景色を見て、目を疑ったような素振りを見せる。
「貴方、燃えてる。畑や家が……燃えてる」
「何が起きたんだ!?」
父は慌ててドアを開け、外に飛び出した。
そしてすぐに立ち止まり、唖然とした様子で村を眺めた。
家が燃え、畑が燃え、人が燃えている。
もう何人もの焼け焦げた死体が転がっており、遠くからは悲鳴や鳴き声が聞こえる。
「貴方、これは一体?」
「なっ、何が何だか分からない」
母も、唖然とする父に寄り添い、燃え盛る村を見て腰を抜かす。
「父さん、母さん、僕何が起きたか分かるよ」
「「え?」」
二人共、震えながらゆっくりと振り返った。
「マレフィクス、今なんて言った?心当たりがあるのか?」
「うん、悪役が誕生したの。絶対悪が一人、この村を滅ぼしたの。そいつの名前は、マレフィクス.ベゼ.ラズル」
父も母も(何を言ってるんだこの子は?)と言いたそうな表情を浮かべた。
そして次の瞬間、二人の表情はまた変わった。
「火魔法、フォティア.ラナ」
僕は、手から出現させた火の玉を、背後にある自分の家に放った。
当然、家は軽く吹き飛び、火が移って燃え始めた。
「マレフィクス……お前一体何を?」
「この村の住人を半分殺した……そして死体に触ったら体が燃える魔法を死体に取付けた。今苦しみ悲鳴を上げてる者は、死体に触ったもう半分の住人だろうね」
「お前……本当にマレフィクスなのか?」
周りは地獄の如く燃え盛り、父も母も恐怖の顔で震えている。
そんな状況で、不思議と情熱に満ちていた。
いや、僕にとっては不思議でもないか……これが正常なのだ。
「父さん、貴方は後」
震えて身動きを取れない父を蹴り飛ばす。
「ぐはぁ!!」
「能力番号3『手から釣り糸を出す能力』」
そして、手から出現させた釣り糸を父の口に引っ掛け、体を釣り糸で拘束した。
喋れず動けない父は、今にも泣きそうで、じたばたと暴れる。
「今まで二人に黙ってたけど、僕にはちゃんと能力があるんだよ。それは相手から能力を奪う能力……この釣り糸の能力も村人から奪った能力の一つさ」
能力を奪う能力。
だが、能力を奪う条件が二つある。
一つ、相手の能力を知っていること。
二つ、相手を自ら殺すこと。
この村の住人の能力は、ボケたジジババ以外把握していた。
だから今は能力がたくさん身に付いている。
大当たりの能力で嬉しいよ。
「じゃぁ、母さん。今から死んでもらうけど……何か言いたいことは?命乞いとか……したら助かるかもよ?」
「……貴方は一体誰なの?マーちゃんをどこにやったの?」
どうやら母は、僕が息子に化けた何者かだと思っている様だ。
愛し愛されてる息子が、突然こんな態度を取るのだ。
僕を息子だと思わないのが当然なのかも。
「仕方ない、全て説明してあげる。だから現実を受け止めてね……父さんも母さんもちゃんと聞いててね」
ほんの少し距離が離れてる父も、母同様に怯えて震えながら僕を見た。
「僕は生まれた時から前世の記憶がある。前世はこことは別の世界だったけど、記憶や気持ちはほとんど変わらなかった。僕の本性は他者からしたら冷酷で残忍、残虐で非道の悪魔……無論、罪悪感は感じことは無い。けど一度も悪いことをしたことがなかったんだ……言い換えれば一度も自分で居たことがない。だからこの世界に転生した時誓った……この世界では自分らしく、幸せに、悪役であろうって……その第一歩が今日なのさ。理解出来たかな?」
二人共唖然としていた。
信じられないと言いたそうなだ。
「それが本当だったとしても、私のマーちゃんを返して……あの優しくて元気なマーちゃんを返して。村を燃やしたことも、人を殺したことも、水に流します。だからマーちゃん返して」
現実を受け入れた上での反応がこれか……。
せっかくならもっと恨んで欲しい。
愛していた相手に、憎しみと怒りをむき出して欲しい。
その方がドキドキする。
「マーちゃんは全部僕の演技」
ハサミを取りだし、母の指を一本切り落とす。
「いっ、あぁぁぁ!!」
「んんーー!!」
母は叫び、父は口が釣り糸で裂けるくらい喉で叫んだ。
父に怒りと憎しみが見え始める。
「んー、やっぱ僕の美しい顔立ちは母さんの血のおかげかな……瞳が血のような赤色なのは僕だけだけど……この目は悪役ぽくって気に入ってる」
近くに落ちていた手鏡で、自分の顔を眺める。
黒い髪、中性的で美しくかっこいい顔、瞳は真っ赤で神秘的だ。
ブスじゃなくて良かった。
「母さん、僕を生んでくれてありがとう」
再び、母の指を切り落とす。
「くっ、あぁぁぁ!!」
「何か言って、悲鳴だけじゃ退屈」
「かっ、考え直して……お願い」
「へへっ、やだよ~」
顔をクシャクシャにしながら、絶望の表情をする母を嘲笑う。
しかし、再びハサミで指を切ろうとした途端、父が釣り糸を無理やり解いて、僕に向かってきた。
「やめてくれマレフィクス!!」
「分かった」
服に隠していたナイフで母の胸を突き刺し、父から一歩距離を取る。
「アイダ!!」
母に駆け寄った父は、母の胸から流れる血を止めようとする。
父の口は深く切れていて、血も大量に流れているが、痛みを気にする余裕は無い。
妻が死んだのを悲しむこと、息子が悪魔だった真実に苦しむこと、それだけで精一杯って感じだ。
「うっっ、ああああああぁぁぁ!!!くそっぉぉ!!」
母の死を確認した父が叫ぶ。
憎しみか怒りか、目は力んでいて、絶望の涙が溢れ出ている。
「僕は今から5秒間動かないし攻撃しない……だからそのナイフを抜いて僕を刺せ!これはチャンスだよ?」
「マレフィクスお前……何がそんなに気に食わないんだ!?」
「5――」
父が、母の胸からナイフを抜く。
「俺はどうしたら良かったんだ?」
「4――」
ナイフを持った父が、一歩二歩と足を運ぶ。
「何か言ってくれ!!」
「3――」
僕の肩を掴み、震えた手でナイフを構える。
「今のお前が本当のお前なら、俺はお前を殺さなくてはならない」
「2――」
ナイフを大きく振り上げる。
「一緒に死んでやる……地獄でまたやり直そうな」
「1――」
酷い顔だな。
父が泣きながら振りかざしたナイフは、僕の胸に当たった。
家に帰ると、両親はご馳走様を振る舞い、僕を祝った。
まったく、今日死ぬというのに幸せそうな人達だ。
「卒業おめでとうマレフィクス!」
「流石マーちゃん!首席で卒業なんて母さん鼻が高いわ」
ごく普通の人にとっては、理想的な両親なのだろう。
けど、僕にとっては牛や馬と変わらない。
人々は牛乳やチーズを作るために牛を利用するし、移動手段のために馬を利用する。
また、牛や馬に反抗されたり蹴られたりすれば頭にくる。
それと何一つ変わらないのだ。
もうこの両親から牛乳やチーズは作れない。
いや、正確には代わりがたくさん居る。
「凄いご馳走、こんなの初めてだ」
このご馳走は、最後の牛乳であり、チーズである。
村を滅ぼす前に食を楽しもう。
異世界の食は普通に美味しい。
料理や食の歴史があるし、文化などもある。
だが、残念ながらこの国の主食は米ではない。
パンと餅の間の感触をした『コメモチ』である。
最初は慣れなかったが、味は甘みがあって噛めば噛むほど口に広がるさっぱりした良い食べ物だと評価している。
他にも野菜、肉、魚、日本の食にあるものは勿論、前世で聞いたことや見たことのある食べ物や料理がある。
名前や味は違かったりするが……。
魔物の中には食べれる魔物も居るらしく、それが食事に出ることもある。
美味しいものも不味いものも等しくある。
この世界の食文化は、今後じっくりたっぷり知るつもりだ。
* * *
「ご馳走様でした」
僕がお腹いっぱいになったと同時に、両親は村の異変に気が付いた。
窓から見える景色を見て、目を疑ったような素振りを見せる。
「貴方、燃えてる。畑や家が……燃えてる」
「何が起きたんだ!?」
父は慌ててドアを開け、外に飛び出した。
そしてすぐに立ち止まり、唖然とした様子で村を眺めた。
家が燃え、畑が燃え、人が燃えている。
もう何人もの焼け焦げた死体が転がっており、遠くからは悲鳴や鳴き声が聞こえる。
「貴方、これは一体?」
「なっ、何が何だか分からない」
母も、唖然とする父に寄り添い、燃え盛る村を見て腰を抜かす。
「父さん、母さん、僕何が起きたか分かるよ」
「「え?」」
二人共、震えながらゆっくりと振り返った。
「マレフィクス、今なんて言った?心当たりがあるのか?」
「うん、悪役が誕生したの。絶対悪が一人、この村を滅ぼしたの。そいつの名前は、マレフィクス.ベゼ.ラズル」
父も母も(何を言ってるんだこの子は?)と言いたそうな表情を浮かべた。
そして次の瞬間、二人の表情はまた変わった。
「火魔法、フォティア.ラナ」
僕は、手から出現させた火の玉を、背後にある自分の家に放った。
当然、家は軽く吹き飛び、火が移って燃え始めた。
「マレフィクス……お前一体何を?」
「この村の住人を半分殺した……そして死体に触ったら体が燃える魔法を死体に取付けた。今苦しみ悲鳴を上げてる者は、死体に触ったもう半分の住人だろうね」
「お前……本当にマレフィクスなのか?」
周りは地獄の如く燃え盛り、父も母も恐怖の顔で震えている。
そんな状況で、不思議と情熱に満ちていた。
いや、僕にとっては不思議でもないか……これが正常なのだ。
「父さん、貴方は後」
震えて身動きを取れない父を蹴り飛ばす。
「ぐはぁ!!」
「能力番号3『手から釣り糸を出す能力』」
そして、手から出現させた釣り糸を父の口に引っ掛け、体を釣り糸で拘束した。
喋れず動けない父は、今にも泣きそうで、じたばたと暴れる。
「今まで二人に黙ってたけど、僕にはちゃんと能力があるんだよ。それは相手から能力を奪う能力……この釣り糸の能力も村人から奪った能力の一つさ」
能力を奪う能力。
だが、能力を奪う条件が二つある。
一つ、相手の能力を知っていること。
二つ、相手を自ら殺すこと。
この村の住人の能力は、ボケたジジババ以外把握していた。
だから今は能力がたくさん身に付いている。
大当たりの能力で嬉しいよ。
「じゃぁ、母さん。今から死んでもらうけど……何か言いたいことは?命乞いとか……したら助かるかもよ?」
「……貴方は一体誰なの?マーちゃんをどこにやったの?」
どうやら母は、僕が息子に化けた何者かだと思っている様だ。
愛し愛されてる息子が、突然こんな態度を取るのだ。
僕を息子だと思わないのが当然なのかも。
「仕方ない、全て説明してあげる。だから現実を受け止めてね……父さんも母さんもちゃんと聞いててね」
ほんの少し距離が離れてる父も、母同様に怯えて震えながら僕を見た。
「僕は生まれた時から前世の記憶がある。前世はこことは別の世界だったけど、記憶や気持ちはほとんど変わらなかった。僕の本性は他者からしたら冷酷で残忍、残虐で非道の悪魔……無論、罪悪感は感じことは無い。けど一度も悪いことをしたことがなかったんだ……言い換えれば一度も自分で居たことがない。だからこの世界に転生した時誓った……この世界では自分らしく、幸せに、悪役であろうって……その第一歩が今日なのさ。理解出来たかな?」
二人共唖然としていた。
信じられないと言いたそうなだ。
「それが本当だったとしても、私のマーちゃんを返して……あの優しくて元気なマーちゃんを返して。村を燃やしたことも、人を殺したことも、水に流します。だからマーちゃん返して」
現実を受け入れた上での反応がこれか……。
せっかくならもっと恨んで欲しい。
愛していた相手に、憎しみと怒りをむき出して欲しい。
その方がドキドキする。
「マーちゃんは全部僕の演技」
ハサミを取りだし、母の指を一本切り落とす。
「いっ、あぁぁぁ!!」
「んんーー!!」
母は叫び、父は口が釣り糸で裂けるくらい喉で叫んだ。
父に怒りと憎しみが見え始める。
「んー、やっぱ僕の美しい顔立ちは母さんの血のおかげかな……瞳が血のような赤色なのは僕だけだけど……この目は悪役ぽくって気に入ってる」
近くに落ちていた手鏡で、自分の顔を眺める。
黒い髪、中性的で美しくかっこいい顔、瞳は真っ赤で神秘的だ。
ブスじゃなくて良かった。
「母さん、僕を生んでくれてありがとう」
再び、母の指を切り落とす。
「くっ、あぁぁぁ!!」
「何か言って、悲鳴だけじゃ退屈」
「かっ、考え直して……お願い」
「へへっ、やだよ~」
顔をクシャクシャにしながら、絶望の表情をする母を嘲笑う。
しかし、再びハサミで指を切ろうとした途端、父が釣り糸を無理やり解いて、僕に向かってきた。
「やめてくれマレフィクス!!」
「分かった」
服に隠していたナイフで母の胸を突き刺し、父から一歩距離を取る。
「アイダ!!」
母に駆け寄った父は、母の胸から流れる血を止めようとする。
父の口は深く切れていて、血も大量に流れているが、痛みを気にする余裕は無い。
妻が死んだのを悲しむこと、息子が悪魔だった真実に苦しむこと、それだけで精一杯って感じだ。
「うっっ、ああああああぁぁぁ!!!くそっぉぉ!!」
母の死を確認した父が叫ぶ。
憎しみか怒りか、目は力んでいて、絶望の涙が溢れ出ている。
「僕は今から5秒間動かないし攻撃しない……だからそのナイフを抜いて僕を刺せ!これはチャンスだよ?」
「マレフィクスお前……何がそんなに気に食わないんだ!?」
「5――」
父が、母の胸からナイフを抜く。
「俺はどうしたら良かったんだ?」
「4――」
ナイフを持った父が、一歩二歩と足を運ぶ。
「何か言ってくれ!!」
「3――」
僕の肩を掴み、震えた手でナイフを構える。
「今のお前が本当のお前なら、俺はお前を殺さなくてはならない」
「2――」
ナイフを大きく振り上げる。
「一緒に死んでやる……地獄でまたやり直そうな」
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父が泣きながら振りかざしたナイフは、僕の胸に当たった。
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