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02.
08.公爵令息の夢
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翌日、約束の時間にブラーム様はカフェに現れ、そしてバウマン様は訪れなかった。
「やぁ、彼は来なかったが、どうする?」
「食事でも持って行く事にするわ」
ジッと見つめれば、彼は分かったと両手を上げる。
バウマン様の寮へは婚約者と言う立場と、王族と言う立場が容易とさせる。
ノックを鳴らすが扉は開かない。
もう1度ノックを鳴らすが返事すらない。
結局はブラーム様が扉を開いた。
部屋の中には散らばる紙、紙、紙、そしてその上に倒れ込むバウマン様の姿。
悲鳴を飲み込んだ私は反射的にブラーム様にしがみつき、そんな私の頭を乱暴に撫でたブラーム様は私を数歩下がらせ、彼自身はバウマン様の脈を診るため歩み寄った。
「安心しろ、寝ているだけだ」
「そう……、良かったわ」
安堵する私の顔を見て、ブラーム様は苦く笑い小さく呟く。
「良かったか……そう、良かった……なのか……」
「当たり前でしょう」
立ち上がり下がるブラーム様と、入れ替わりに私は腰を落とし、バウマン様の身体を起こそうとして私は支えきれずに押し倒された。
細身に見えて以外と思い彼の身体は重く固い。
「あぁ、マティルですか……」
寝ぼけた声でバウマン様は言い、私は溜息と共に告げた。
「重いわ、退けてくれないかしら?」
「申し訳ない……」
寝ぼけた様子で言いながら私に抱きついてきたバウマン様は、私の胸に顔を押し付け腰に腕を回しながら再び寝息を立てようとする。
「ちょっと、止めて……痛いわ」
身じろぎすれば押し付けられる胸元に熱い息を吐いているのがわかる。
「バウマン様!!」
声を上げるほどに抱きしめる腕に力がこもり、イラっとした表情を浮かべたブラーム様はバウマン様の首根っこをつまみ持ち上げようと力を入れていた。
この世界の人々の中には神から与えられたかのようなギフトは所有している者がいる。魔力特化の人間と、筋肉特化の2種類あり、王族は王族特有の強固なギフトを所有している。 そんなギフトを持つブラーム様は、バウマン様を引きはがそうとした。 だけど、バウマン様は私を離さず、むしろ抵抗するかのように私を抱きしめる力が強くなるから、私は痛くてブラーム様に助けを求める視線を向ける。
「離せ」
ブラーム様は、バウマン様を宙づりのようにする。
「ぐふっ……ちょ、な、何が」
涙目になったバウマン様は、私を見て、理解して、ジッと見つめ詰まる首を楽にするため身体を支えウットリとした声で彼は言う。
「温かい……」
愛おしそうにすら聞こえる甘い声で勘違いしそうになる。
そんな私の気持ちを察知したかのように、バウマン様の首根っこを捕まえているブラーム様はバウマン様の指を強引に引きはがし、改めて首根っこを捕らえた手の力だけでポイッとベッドに向かって投げ捨てた。
「全く……諦めようと思ったのに、嫌がらせのように感情を揺さぶってくる」
銀ランクと言っても、大人が飛び乗ったくらいで壊れない程度のベッドは準備されている。 とは言えスプリングや布団の柔らかさは足りず、相応の衝撃を受けてバウマン様は目を覚ます。
「いつ、部屋に?」
「食事を終えてもいらっしゃらず、ノックをしても返事がありませんでしたので、ブラーム様の権限で扉を開けさせてもらいました。 ところで、これは……」
全て聞く必要も無かった。
そこにある紙は、大量の服のデザイン画。
「あぁ、そうだ……そうだった。 閣下、閣下をモデルにいくつかデザインをしてみました。 気に入っていただけるのものがあれば良いのですが!!」
興奮気味に散らばる紙をかき集めだす。
「俺がやろう。 アンタは食事を済ませるといい。 予定の時間は大きく過ぎている」
「閣下、申し訳ありません」
「早く食事をしろ」
「はい!! あぁ、そうだ。 マティル、これを形にしてくれる人を知っていますか? 針子も、素材もこだわりたい……」
興奮気味にバウマン様が言えば、紙を手にしたブラーム様は苦虫をかみつぶしたような表情で舌打ちをした。
「これだから馬鹿に出来ない」
私もブラーム様と共に紙を集めだす。 その紙には人を飾る事が不得意な私であっても、魅力的なものだと分かるデザインが描かれていた。 それらの衣類をブラーム様が着れば、どんな評価が得られるかが分かる。
軽い興奮すら覚える。
私の商売人の血は、ソレを無駄に等出来ないと語っていた。
「やぁ、彼は来なかったが、どうする?」
「食事でも持って行く事にするわ」
ジッと見つめれば、彼は分かったと両手を上げる。
バウマン様の寮へは婚約者と言う立場と、王族と言う立場が容易とさせる。
ノックを鳴らすが扉は開かない。
もう1度ノックを鳴らすが返事すらない。
結局はブラーム様が扉を開いた。
部屋の中には散らばる紙、紙、紙、そしてその上に倒れ込むバウマン様の姿。
悲鳴を飲み込んだ私は反射的にブラーム様にしがみつき、そんな私の頭を乱暴に撫でたブラーム様は私を数歩下がらせ、彼自身はバウマン様の脈を診るため歩み寄った。
「安心しろ、寝ているだけだ」
「そう……、良かったわ」
安堵する私の顔を見て、ブラーム様は苦く笑い小さく呟く。
「良かったか……そう、良かった……なのか……」
「当たり前でしょう」
立ち上がり下がるブラーム様と、入れ替わりに私は腰を落とし、バウマン様の身体を起こそうとして私は支えきれずに押し倒された。
細身に見えて以外と思い彼の身体は重く固い。
「あぁ、マティルですか……」
寝ぼけた声でバウマン様は言い、私は溜息と共に告げた。
「重いわ、退けてくれないかしら?」
「申し訳ない……」
寝ぼけた様子で言いながら私に抱きついてきたバウマン様は、私の胸に顔を押し付け腰に腕を回しながら再び寝息を立てようとする。
「ちょっと、止めて……痛いわ」
身じろぎすれば押し付けられる胸元に熱い息を吐いているのがわかる。
「バウマン様!!」
声を上げるほどに抱きしめる腕に力がこもり、イラっとした表情を浮かべたブラーム様はバウマン様の首根っこをつまみ持ち上げようと力を入れていた。
この世界の人々の中には神から与えられたかのようなギフトは所有している者がいる。魔力特化の人間と、筋肉特化の2種類あり、王族は王族特有の強固なギフトを所有している。 そんなギフトを持つブラーム様は、バウマン様を引きはがそうとした。 だけど、バウマン様は私を離さず、むしろ抵抗するかのように私を抱きしめる力が強くなるから、私は痛くてブラーム様に助けを求める視線を向ける。
「離せ」
ブラーム様は、バウマン様を宙づりのようにする。
「ぐふっ……ちょ、な、何が」
涙目になったバウマン様は、私を見て、理解して、ジッと見つめ詰まる首を楽にするため身体を支えウットリとした声で彼は言う。
「温かい……」
愛おしそうにすら聞こえる甘い声で勘違いしそうになる。
そんな私の気持ちを察知したかのように、バウマン様の首根っこを捕まえているブラーム様はバウマン様の指を強引に引きはがし、改めて首根っこを捕らえた手の力だけでポイッとベッドに向かって投げ捨てた。
「全く……諦めようと思ったのに、嫌がらせのように感情を揺さぶってくる」
銀ランクと言っても、大人が飛び乗ったくらいで壊れない程度のベッドは準備されている。 とは言えスプリングや布団の柔らかさは足りず、相応の衝撃を受けてバウマン様は目を覚ます。
「いつ、部屋に?」
「食事を終えてもいらっしゃらず、ノックをしても返事がありませんでしたので、ブラーム様の権限で扉を開けさせてもらいました。 ところで、これは……」
全て聞く必要も無かった。
そこにある紙は、大量の服のデザイン画。
「あぁ、そうだ……そうだった。 閣下、閣下をモデルにいくつかデザインをしてみました。 気に入っていただけるのものがあれば良いのですが!!」
興奮気味に散らばる紙をかき集めだす。
「俺がやろう。 アンタは食事を済ませるといい。 予定の時間は大きく過ぎている」
「閣下、申し訳ありません」
「早く食事をしろ」
「はい!! あぁ、そうだ。 マティル、これを形にしてくれる人を知っていますか? 針子も、素材もこだわりたい……」
興奮気味にバウマン様が言えば、紙を手にしたブラーム様は苦虫をかみつぶしたような表情で舌打ちをした。
「これだから馬鹿に出来ない」
私もブラーム様と共に紙を集めだす。 その紙には人を飾る事が不得意な私であっても、魅力的なものだと分かるデザインが描かれていた。 それらの衣類をブラーム様が着れば、どんな評価が得られるかが分かる。
軽い興奮すら覚える。
私の商売人の血は、ソレを無駄に等出来ないと語っていた。
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