7 / 22
06.自身の価値を知らぬままに腹を満たす
しおりを挟む
胸のあたりを中心に人型から猫ぐらいの大きさの生き物になった訳だから、ポスっと軽い音と共に青年の膝の上に落ちた。 その重さは猫と比較しズイブンと軽い。 元々は人間だったにもかかわらず、ドラゴンの身体は人でいる時よりも身軽で動きやすいようにすら思え、翼と尻尾をパタパタと動かして見せた。
翼は魔力を纏い僅かに身体を浮かせたが、ソレは直ぐに四散しグラリと眩暈を覚える。
人間の時は飛べたのに……。
飛べないだけでなく、グルグルと魔力が異常に体内をかけめぐり気持ち悪くなってくる。
魔法生物なのに……体調が悪くなるってあるの??
この翼は、恰好だけなのかな?
私は幻獣になってもダメな子だ……。
テーブルに手をついて悲しみのポーズをとってみれば、私の様子を黙って見守っていた白銀色の方の青年が、短い腕の両脇に両手で差し入れ、顔の高さまで持ち上げた。
「まだ、飛ぶのは早いだけだ。 落ち込むな」
瞳を細め笑って見せる彼は、私をテーブルの上にトンと置く。
「時間がたてば飛べます?」
私が見上げれば、指で白銀色のタテガミを梳くように撫でてくる。 触れられるのが心地よくて目を覚ましたばかりなのに眠くなる。
「その体は幻獣として形を成したばかりの赤ん坊。 今の状態では魔力を作り出すことが出来ず、生きると言うだけで魔力が消費されてしまう。 君には食事が必要だ。 お腹がすいているだろう?」
ウトウトし始めた頭で少し考えてみるけれど、お腹が空いている様子はないと思う。
「へいき、です」
「そうか? 形を作るのに魔力を使いきっているはずなんだが?」
そう言いながら、白銀色の青年は自分の指を軽く傷をつけた。
「血……でてるよ?」
甘い匂いがしているような気がした。
「ほら、舐めろ」
差し出された指先に、ぷくりと血が溢れ形作る。 奇妙な喉の渇きがあることに気づいた。 だけど……
「人を食べるのは嫌」
幻獣は人を食べないから、人を襲わないから幻獣で、ソレをしてしまえば魔物として狩られてしまう。 それぐらいのことは知っている。
「別に食べられる訳じゃない。 生憎俺は母乳が出ないから仕方ない」
肩をすくめながらけらけらと笑って言うが、いくら中性的と言っても男性から母乳をもらって育つのは嫌だ。 多分、そんなゲンナリした気持ちが顔に出ていたのでしょうね。
あぁ、生き物(植物も可)の体液には魔力が含まれているためで、決して彼が救いようのない変態と言う訳ではないのです。
「殿下、下品です。 魔力補給ならラミアにクロコッタが子育て中なので、乳を分けてもらえばどうでしょうか?」
「お前が自分で、育てろと言ったんだろう?」
ニヤニヤと言われれば、ロイスと呼ばれていた男は深い溜息をつき、私に哀れみの視線を向けてきた。
「申し訳ありません。 私が軽率な発言をしたばかりに」
「あの……私はどうすればいいのでしょうか?」
「なぜ、ロイスを頼る? 俺が面倒を見てやると言っているだろう? 血が嫌なら一度人型に戻れ」
「でも……裸だし……」
「幻獣の癖に細かな事を気にするな」
「……」
元人間だから、気になるんですと言う言葉を飲み込んだ。 なんとなく、なんとなくね、危機感を覚えたわけなのですよ……。 チラチラと私は助けを求めるようにロイスを見れば、部屋の片隅にかけてあった外套を、私の上にかぶせてくれた。 だけど、体力がないのか、竜の姿が小さすぎるのか、外套が立派過ぎるのか、実は想像しているよりもお腹がすいているのか、とても重いの……。
それでも体は隠せるし、大きくなれば服の重さに潰されることもないだろうと、私は半人の姿に戻った。
「それ(で、これから何を)……」
唇が塞がれ驚いていれば、舌が口の中に差し入れられ唾液が流し込まれた。 生ぬるい粘度のある液体が口内を濡らす。
「んっ、やっ」
唇が放され耳元で囁かれる。
「ちゃんと残さず飲み込め。 ソレがオマエのご飯だ」
白銀色の男は私の髪を指先に絡めとり、耳に触れてくる。
「耳は、人のものなんだな」
熱い息が耳をくすぐり、耳の形を確認するように撫でられれば、尻尾や翼の先がプルプルしてしまう。
「可愛いな。 まだ、お腹は満ちてはいないだろう」
チュッと唇の縁が口づけられ、濡れた舌先が唇を舐めて離れた。
なぜ……。
私の呼吸は荒くなっている。 飢えた獣のように頭が痺れ、唇についた唾液を舌先でなぞっていた。 唾液は水を飲むのとは違い、込むのがツラかった。 なのに、私はソレを求めていて。
頭が痺れる……。
「もっと……ちょうだい……」
「誰でもない俺だけを求めるなら、俺が責任をもって君の飢えを満たすよう誓おう」
甘い囁きは、孤独という飢えを満たす。 なのに、その甘い誓いの言葉に狂気を感じてしまうのは……気のせいだでしょうか……。
「舌を出してごらん」
青年は言う。
言われて私は舌先を出し伸ばす。 人のものよりも少しだけ細く長い舌の上に、白銀色の青年は唾液を垂らし落とすから、私はそれを必死に受け止め口内に流し入れる。
ぁ、はっ、んっ
甘い味に酔うように、私はその唇を貪るように合わせ、口内を刺激するように、唾液を舐めとるように舌を這わせ、絡め合わせるために差し出された舌を吸う。
はふぅ……
「美味しかったか?」
「んっ」
今まで向けらえていた優しい視線、微笑みが、アヤシイ色をまとっているが……この時の私は、満足感に気づくことはなく、幼子のようにウトウトと青年の腕の中に倒れこみ眠りについた。
「殿下……幻獣の幼体相手に何をなさっているのですか……」
呆れた声でロイスが言いながら、紅茶を差し出した。
「問題ない」
「殿下には問題ないでしょうが、幼体には刺激が強すぎます。 せめて選択の余地を与えるべきではないでしょうか?」
「普通の幻獣なら配慮もするが、俺が知っている限りこれは人としての生を過ごしていた経験がある。 とはいえ……ここ数年、噂は聞いていなかったのだがなぁ」
「噂ですか?」
ロイスが神妙な表情を見せるのには理由があった。
白銀の竜は王家の象徴とされており、高祖母が王家の血を引いている等の遠い血筋ですら王座を与えてしまうためだ。
「そう、余りよろしくない話があったんだよ。 今の王家は真の王家にあらずってな」
白銀色の青年『ディルク・クライン』クライン王国の王の血をその身に受け継ぐ庶民の子であり、お気楽な三男は、その玉座を手に入れたも同然の立場でありながら、軽々しく他人事のように笑って見せた。
翼は魔力を纏い僅かに身体を浮かせたが、ソレは直ぐに四散しグラリと眩暈を覚える。
人間の時は飛べたのに……。
飛べないだけでなく、グルグルと魔力が異常に体内をかけめぐり気持ち悪くなってくる。
魔法生物なのに……体調が悪くなるってあるの??
この翼は、恰好だけなのかな?
私は幻獣になってもダメな子だ……。
テーブルに手をついて悲しみのポーズをとってみれば、私の様子を黙って見守っていた白銀色の方の青年が、短い腕の両脇に両手で差し入れ、顔の高さまで持ち上げた。
「まだ、飛ぶのは早いだけだ。 落ち込むな」
瞳を細め笑って見せる彼は、私をテーブルの上にトンと置く。
「時間がたてば飛べます?」
私が見上げれば、指で白銀色のタテガミを梳くように撫でてくる。 触れられるのが心地よくて目を覚ましたばかりなのに眠くなる。
「その体は幻獣として形を成したばかりの赤ん坊。 今の状態では魔力を作り出すことが出来ず、生きると言うだけで魔力が消費されてしまう。 君には食事が必要だ。 お腹がすいているだろう?」
ウトウトし始めた頭で少し考えてみるけれど、お腹が空いている様子はないと思う。
「へいき、です」
「そうか? 形を作るのに魔力を使いきっているはずなんだが?」
そう言いながら、白銀色の青年は自分の指を軽く傷をつけた。
「血……でてるよ?」
甘い匂いがしているような気がした。
「ほら、舐めろ」
差し出された指先に、ぷくりと血が溢れ形作る。 奇妙な喉の渇きがあることに気づいた。 だけど……
「人を食べるのは嫌」
幻獣は人を食べないから、人を襲わないから幻獣で、ソレをしてしまえば魔物として狩られてしまう。 それぐらいのことは知っている。
「別に食べられる訳じゃない。 生憎俺は母乳が出ないから仕方ない」
肩をすくめながらけらけらと笑って言うが、いくら中性的と言っても男性から母乳をもらって育つのは嫌だ。 多分、そんなゲンナリした気持ちが顔に出ていたのでしょうね。
あぁ、生き物(植物も可)の体液には魔力が含まれているためで、決して彼が救いようのない変態と言う訳ではないのです。
「殿下、下品です。 魔力補給ならラミアにクロコッタが子育て中なので、乳を分けてもらえばどうでしょうか?」
「お前が自分で、育てろと言ったんだろう?」
ニヤニヤと言われれば、ロイスと呼ばれていた男は深い溜息をつき、私に哀れみの視線を向けてきた。
「申し訳ありません。 私が軽率な発言をしたばかりに」
「あの……私はどうすればいいのでしょうか?」
「なぜ、ロイスを頼る? 俺が面倒を見てやると言っているだろう? 血が嫌なら一度人型に戻れ」
「でも……裸だし……」
「幻獣の癖に細かな事を気にするな」
「……」
元人間だから、気になるんですと言う言葉を飲み込んだ。 なんとなく、なんとなくね、危機感を覚えたわけなのですよ……。 チラチラと私は助けを求めるようにロイスを見れば、部屋の片隅にかけてあった外套を、私の上にかぶせてくれた。 だけど、体力がないのか、竜の姿が小さすぎるのか、外套が立派過ぎるのか、実は想像しているよりもお腹がすいているのか、とても重いの……。
それでも体は隠せるし、大きくなれば服の重さに潰されることもないだろうと、私は半人の姿に戻った。
「それ(で、これから何を)……」
唇が塞がれ驚いていれば、舌が口の中に差し入れられ唾液が流し込まれた。 生ぬるい粘度のある液体が口内を濡らす。
「んっ、やっ」
唇が放され耳元で囁かれる。
「ちゃんと残さず飲み込め。 ソレがオマエのご飯だ」
白銀色の男は私の髪を指先に絡めとり、耳に触れてくる。
「耳は、人のものなんだな」
熱い息が耳をくすぐり、耳の形を確認するように撫でられれば、尻尾や翼の先がプルプルしてしまう。
「可愛いな。 まだ、お腹は満ちてはいないだろう」
チュッと唇の縁が口づけられ、濡れた舌先が唇を舐めて離れた。
なぜ……。
私の呼吸は荒くなっている。 飢えた獣のように頭が痺れ、唇についた唾液を舌先でなぞっていた。 唾液は水を飲むのとは違い、込むのがツラかった。 なのに、私はソレを求めていて。
頭が痺れる……。
「もっと……ちょうだい……」
「誰でもない俺だけを求めるなら、俺が責任をもって君の飢えを満たすよう誓おう」
甘い囁きは、孤独という飢えを満たす。 なのに、その甘い誓いの言葉に狂気を感じてしまうのは……気のせいだでしょうか……。
「舌を出してごらん」
青年は言う。
言われて私は舌先を出し伸ばす。 人のものよりも少しだけ細く長い舌の上に、白銀色の青年は唾液を垂らし落とすから、私はそれを必死に受け止め口内に流し入れる。
ぁ、はっ、んっ
甘い味に酔うように、私はその唇を貪るように合わせ、口内を刺激するように、唾液を舐めとるように舌を這わせ、絡め合わせるために差し出された舌を吸う。
はふぅ……
「美味しかったか?」
「んっ」
今まで向けらえていた優しい視線、微笑みが、アヤシイ色をまとっているが……この時の私は、満足感に気づくことはなく、幼子のようにウトウトと青年の腕の中に倒れこみ眠りについた。
「殿下……幻獣の幼体相手に何をなさっているのですか……」
呆れた声でロイスが言いながら、紅茶を差し出した。
「問題ない」
「殿下には問題ないでしょうが、幼体には刺激が強すぎます。 せめて選択の余地を与えるべきではないでしょうか?」
「普通の幻獣なら配慮もするが、俺が知っている限りこれは人としての生を過ごしていた経験がある。 とはいえ……ここ数年、噂は聞いていなかったのだがなぁ」
「噂ですか?」
ロイスが神妙な表情を見せるのには理由があった。
白銀の竜は王家の象徴とされており、高祖母が王家の血を引いている等の遠い血筋ですら王座を与えてしまうためだ。
「そう、余りよろしくない話があったんだよ。 今の王家は真の王家にあらずってな」
白銀色の青年『ディルク・クライン』クライン王国の王の血をその身に受け継ぐ庶民の子であり、お気楽な三男は、その玉座を手に入れたも同然の立場でありながら、軽々しく他人事のように笑って見せた。
13
あなたにおすすめの小説
(完結)お荷物聖女と言われ追放されましたが、真のお荷物は追放した王太子達だったようです
しまうま弁当
恋愛
伯爵令嬢のアニア・パルシスは婚約者であるバイル王太子に突然婚約破棄を宣言されてしまうのでした。
さらにはアニアの心の拠り所である、聖女の地位まで奪われてしまうのでした。
訳が分からないアニアはバイルに婚約破棄の理由を尋ねましたが、ひどい言葉を浴びせつけられるのでした。
「アニア!お前が聖女だから仕方なく婚約してただけだ。そうでなけりゃ誰がお前みたいな年増女と婚約なんかするか!!」と。
アニアの弁明を一切聞かずに、バイル王太子はアニアをお荷物聖女と決めつけて婚約破棄と追放をさっさと決めてしまうのでした。
挙句の果てにリゼラとのイチャイチャぶりをアニアに見せつけるのでした。
アニアは妹のリゼラに助けを求めましたが、リゼラからはとんでもない言葉が返ってきたのでした。
リゼラこそがアニアの追放を企てた首謀者だったのでした。
アニアはリゼラの自分への悪意を目の当たりにして愕然しますが、リゼラは大喜びでアニアの追放を見送るのでした。
信じていた人達に裏切られたアニアは、絶望して当てもなく宿屋生活を始めるのでした。
そんな時運命を変える人物に再会するのでした。
それはかつて同じクラスで一緒に学んでいた学友のクライン・ユーゲントでした。
一方のバイル王太子達はアニアの追放を喜んでいましたが、すぐにアニアがどれほどの貢献をしていたかを目の当たりにして自分達こそがお荷物であることを思い知らされるのでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
全25話執筆済み 完結しました
顔も知らない旦那様に間違えて手紙を送ったら、溺愛が返ってきました
ラム猫
恋愛
セシリアは、政略結婚でアシュレイ・ハンベルク侯爵に嫁いで三年になる。しかし夫であるアシュレイは稀代の軍略家として戦争で前線に立ち続けており、二人は一度も顔を合わせたことがなかった。セシリアは孤独な日々を送り、周囲からは「忘れられた花嫁」として扱われていた。
ある日、セシリアは親友宛てに夫への不満と愚痴を書き連ねた手紙を、誤ってアシュレイ侯爵本人宛てで送ってしまう。とんでもない過ちを犯したと震えるセシリアの元へ、数週間後、夫から返信が届いた。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
※全部で四話になります。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
氷の公爵は、捨てられた私を離さない
空月そらら
恋愛
「魔力がないから不要だ」――長年尽くした王太子にそう告げられ、侯爵令嬢アリアは理不尽に婚約破棄された。
すべてを失い、社交界からも追放同然となった彼女を拾ったのは、「氷の公爵」と畏れられる辺境伯レオルド。
彼は戦の呪いに蝕まれ、常に激痛に苦しんでいたが、偶然触れたアリアにだけ痛みが和らぐことに気づく。
アリアには魔力とは違う、稀有な『浄化の力』が秘められていたのだ。
「君の力が、私には必要だ」
冷徹なはずの公爵は、アリアの価値を見抜き、傍に置くことを決める。
彼の元で力を発揮し、呪いを癒やしていくアリア。
レオルドはいつしか彼女に深く執着し、不器用に溺愛し始める。「お前を誰にも渡さない」と。
一方、アリアを捨てた王太子は聖女に振り回され、国を傾かせ、初めて自分が手放したものの大きさに気づき始める。
「アリア、戻ってきてくれ!」と見苦しく縋る元婚約者に、アリアは毅然と告げる。「もう遅いのです」と。
これは、捨てられた令嬢が、冷徹な公爵の唯一無二の存在となり、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転溺愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる