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恋する魔女
02.私は悪い魔女 01
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「止めるんだ……」
熱のこもった声。
それが拒絶であっても、その色香にゾクッとした。
「どうしたの? 公爵様」
私は無邪気を装い、シャワーを浴び濡れたままの身体でベッドに座る公爵ディック・オークランス公爵の肌に指先を這わせる。
乱暴で狂暴で暴力的で衝動的な王太子殿下(現国王)を王に据える事を嫌がる者は多かったが、先王陛下であるディック様の父上が7年前に正体不明の奇病を患った時、ディック様は王位継承権を放棄し公爵の身分を得た。
今のディック様に王位継承権はないと言うのに、彼にかけられた呪いは解けず、定期的に彼は熱と痛みに苦しんでいる。
だけど……。
それは嘘。
呪いは既に解けている……。
ねぇ、貴方が呪いだと思っているソレは、私の醜い欲望なの。 大好きな貴方を私に縛り付けるための……。 私は、薬師に特化しただけの魔女。 本当なら貴方の人生に交わる事などありえない。
仕方のない事だと分かっているわ。
でも、もう少し……。
ベッドの縁に座るディック様の両足の間に身を置いて、冷たい頬を両手で挟む。 王都の門をくぐり屋敷へとたどり着いた時、不審者のようにすら見えた無精ひげは剃られ、伸びた髪はスッキリと整えられていた。
私をジッと見つめる視線が熱っぽく、私の頬に触れてくる。 親子のようなこのやり取りは……好きだけど……私が欲しい物では決してない。
「大きくなったな」
曾祖母が死に、過去の経歴を隠し、娘として迎えられたのは5年前。
「成長期ですから」
私は少しふざけた様子で言いながら、ディック様の額に軽くチュッと口づけ、視線を交わして静かに微笑んで見せた。
赤い瞳が私を見つめる。
王からかけられた呪いの副作用でディック様の瞳は一族特有の紺色から赤へと変色している。 彼が悪魔と呼ばれ、戦場へと駆り出される理由の1つ。
彼を不幸へと追いやるから嫌い。
でも、彼を独占できるから好き。
「綺麗な赤い瞳」
「悪魔と契約した証と言われているがな」
自嘲気味に言う彼は……この赤を好きだと言ってくれる女性と出会ったらどうするのだろうか? そんな事を考えている間も、ディック様の呼吸は荒くなり、ベッドの上に座る彼と密着して立っている私を濡れた瞳で見つめてきた。
口づけを誘っているのかしら?
そうだと言いな……。
あり得ないけど。
そんな風にふざけた事を思いながら、タオルで濡れた髪をぬぐう。
彼ディック・オークランス公爵が王位継承を放棄したのは7年前。 だけれど、現国王陛下から投げかけられた呪いは解ける事は無かった。 最初から解く気が無いのか? 解く術を知らないのか? 呪われている彼を思ってほくそ笑んでいたのか……。 それでも新たな呪いが上書きされなかったため未熟な私の術でも3年もあれば、呪いは綺麗に解除された。
ディック様を愛している私は、ディック様を呪い、曾祖母や魔法薬師協会の人達を皆殺しとした現国王陛下を恨む等できない。 私に大切なものを与えてくれたから。
私の愛情は醜く、身勝手過ぎる。
分かってはいる。
それでも、出会う事の無い出会いをし……、触れる事の許されない身体に触れ、その肌に口づけを落とす機会を与えてくれた陛下をどうして恨む事が出来るだろうか?
曾祖母は長く行き過ぎたと死を望んでいたし、自分の血統の者に極めぬいた技の全てを譲る事が出来たことに満足だと言っていた。 そう言い訳じみた事を考え、ごめんなさいと心の中で謝った。
「公爵様」
呼べば切なそうな目で見返された。 彼の膝の上に乗せられている両手に私の両手を重ねようとすれば、その指先は私の指先を捕らえ絡み手のひらが重ねられた。
ゆっくりとした甘い時間。
ベッドの上で座るディック様から向けられる視線に、思わず口づけしたいと言う欲求にかられるが、その額に口づけをした。 その間も重ねた指先は、触れ合い擦れあう。
私はその手を、自分の手事持ち上げて、手首に口づけた。 右と左と両方に、出現するのは魔力の手枷。
「痛くはございませんか?」
囁くようにたずねれば、短く返される。
「いや……」
「そう、ですか」
重ねた手を離そうとすれば指先が追ってくるから、私は身体全体で倒れ込むように体を預けた。 そうすればディック様は私を支えるために、私の手を離さなければいけないから。
甘い、甘い時間。
国王陛下の呪いを利用した私のエゴ。
熱のこもった声。
それが拒絶であっても、その色香にゾクッとした。
「どうしたの? 公爵様」
私は無邪気を装い、シャワーを浴び濡れたままの身体でベッドに座る公爵ディック・オークランス公爵の肌に指先を這わせる。
乱暴で狂暴で暴力的で衝動的な王太子殿下(現国王)を王に据える事を嫌がる者は多かったが、先王陛下であるディック様の父上が7年前に正体不明の奇病を患った時、ディック様は王位継承権を放棄し公爵の身分を得た。
今のディック様に王位継承権はないと言うのに、彼にかけられた呪いは解けず、定期的に彼は熱と痛みに苦しんでいる。
だけど……。
それは嘘。
呪いは既に解けている……。
ねぇ、貴方が呪いだと思っているソレは、私の醜い欲望なの。 大好きな貴方を私に縛り付けるための……。 私は、薬師に特化しただけの魔女。 本当なら貴方の人生に交わる事などありえない。
仕方のない事だと分かっているわ。
でも、もう少し……。
ベッドの縁に座るディック様の両足の間に身を置いて、冷たい頬を両手で挟む。 王都の門をくぐり屋敷へとたどり着いた時、不審者のようにすら見えた無精ひげは剃られ、伸びた髪はスッキリと整えられていた。
私をジッと見つめる視線が熱っぽく、私の頬に触れてくる。 親子のようなこのやり取りは……好きだけど……私が欲しい物では決してない。
「大きくなったな」
曾祖母が死に、過去の経歴を隠し、娘として迎えられたのは5年前。
「成長期ですから」
私は少しふざけた様子で言いながら、ディック様の額に軽くチュッと口づけ、視線を交わして静かに微笑んで見せた。
赤い瞳が私を見つめる。
王からかけられた呪いの副作用でディック様の瞳は一族特有の紺色から赤へと変色している。 彼が悪魔と呼ばれ、戦場へと駆り出される理由の1つ。
彼を不幸へと追いやるから嫌い。
でも、彼を独占できるから好き。
「綺麗な赤い瞳」
「悪魔と契約した証と言われているがな」
自嘲気味に言う彼は……この赤を好きだと言ってくれる女性と出会ったらどうするのだろうか? そんな事を考えている間も、ディック様の呼吸は荒くなり、ベッドの上に座る彼と密着して立っている私を濡れた瞳で見つめてきた。
口づけを誘っているのかしら?
そうだと言いな……。
あり得ないけど。
そんな風にふざけた事を思いながら、タオルで濡れた髪をぬぐう。
彼ディック・オークランス公爵が王位継承を放棄したのは7年前。 だけれど、現国王陛下から投げかけられた呪いは解ける事は無かった。 最初から解く気が無いのか? 解く術を知らないのか? 呪われている彼を思ってほくそ笑んでいたのか……。 それでも新たな呪いが上書きされなかったため未熟な私の術でも3年もあれば、呪いは綺麗に解除された。
ディック様を愛している私は、ディック様を呪い、曾祖母や魔法薬師協会の人達を皆殺しとした現国王陛下を恨む等できない。 私に大切なものを与えてくれたから。
私の愛情は醜く、身勝手過ぎる。
分かってはいる。
それでも、出会う事の無い出会いをし……、触れる事の許されない身体に触れ、その肌に口づけを落とす機会を与えてくれた陛下をどうして恨む事が出来るだろうか?
曾祖母は長く行き過ぎたと死を望んでいたし、自分の血統の者に極めぬいた技の全てを譲る事が出来たことに満足だと言っていた。 そう言い訳じみた事を考え、ごめんなさいと心の中で謝った。
「公爵様」
呼べば切なそうな目で見返された。 彼の膝の上に乗せられている両手に私の両手を重ねようとすれば、その指先は私の指先を捕らえ絡み手のひらが重ねられた。
ゆっくりとした甘い時間。
ベッドの上で座るディック様から向けられる視線に、思わず口づけしたいと言う欲求にかられるが、その額に口づけをした。 その間も重ねた指先は、触れ合い擦れあう。
私はその手を、自分の手事持ち上げて、手首に口づけた。 右と左と両方に、出現するのは魔力の手枷。
「痛くはございませんか?」
囁くようにたずねれば、短く返される。
「いや……」
「そう、ですか」
重ねた手を離そうとすれば指先が追ってくるから、私は身体全体で倒れ込むように体を預けた。 そうすればディック様は私を支えるために、私の手を離さなければいけないから。
甘い、甘い時間。
国王陛下の呪いを利用した私のエゴ。
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