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恋心
32.よくじょう 02
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覚える欲情を抑える事には慣れてきていた。 浴室に向かい劣情を少しでも抑えようと冷たいシャワーに身を晒した。 リーリヤの肌に触れ唇を合わせ、甘い声で鳴く様子にどこまで正気を保てるか……。
そんな不安はあったが、向こうから誘ってきたのだ(ただ、教えて欲しいと言っただけ)この機会を逃すものか……。 逃せばヴァルナの横やりが入りかねないと言う不安もある。
冷えた水で熱を冷まし、深呼吸を繰り返すが、欲情がリーリヤの甘く乱れる姿を想像させ、身体の中心の熱だけは収まる事はなかった。
ディックが全てを諦めたのは、濡れた身体にローブを纏い自らの姿を鏡で見た時だった。
「こ、れは……何をしてくれた!! ばばぁああああああ!!」
そんな叫びにリーリヤが目を覚ましていた。
「なっ、何?」
寝巻姿にローブを纏い、ディック様の部屋へと急ごうとすれば向こうからやってきた老執事ジャックに止められた。
「旦那様は、少し……その……酔いつぶれられているようで。 お嬢様には、しばらくの間お会いできないとおっしゃっておりました」
「でも、あんな大声を出すなんて」
「いえ、問題はありません。 きっと陛下が王妃様を説得してくれますから」
「私が何とかした方が早いと思うんだけど」
「ですが、旦那様はその……落ち着くまでお嬢様にお会いしたくないとおっしゃっておりますので、ここは、旦那様のためにお戻りいただけないでしょうか?」
妙にはっきりしない言いようだった。
「分かりました……」
そう言った先で、ジャック相手に眠りの魔法をかけ使用人に彼の部屋に運んでくれるようにと頼み、ディック様の部屋へと急いだ。
ノックをしても拒否されるだけ。
下手をすれば扉が塞がれる。
静かに静かに鍵を開け、扉を開いた。
「リーリヤ、悪いがシバラク……近寄らないでくれないか……」
布団から顔を出すこともなく言えば、リーリヤは
「えっと……でも、呪われていますよね? どうして、今日は呪いを解かせてもらえないんですか?! ディック様!!」
声を上げ強硬手段に出ようとしたリーリヤだったが、布団に手をかける寸前に動きは止まり、そして静かに頭を下げる。
「出過ぎた真似をして、申し訳ありませんでした。 シバラクの間、王宮で世話になる事にします……」
それは、とても静かな声で……、ディックは慌てて布団を跳ね除けリーリヤの手を掴み抱き寄せた。
「ま、待ってくれ」
抱きしめれ……
抱きしめ……
「えっと……、痛いんですけど」
戸惑いに顔を見ようとすれば、頭が抑えられるから何事? と、思うじゃないですか……。 でも、まぁ、それでも懐かしい匂いに固く鍛え抜かれた身体に腕を回した。
湯を使わなかったのか拭いきっていない身体の表面の水滴が冷たく、その割に身体自身は熱を帯び、呼吸が荒く乱れていた。
今回、私は何もしていない訳だし、明らかに王妃様の魔力の痕跡がある。 ねっとりと絡みつく魔力に嫉妬してしまった。
冷えた身体に口づける。
水滴を舐めるように舌を這わせた。
傷を治すように、王妃様の魔力を打ち消していく。
「リーリヤ……やめるんだ」
呻くような声を無視して、ローブの内側に手を回し抱きしめれば戸惑いよりも完全な拒絶で引きはがされ、私は……酷い!! どうして王妃様の魔力を纏わせながら私を拒絶するのよ!! と、叫ぼうとした。
結果として、私は叫ぶ事がなかった。
ただ、顔を見上げて黙り込んでいた。
「ぇ?」
「……」
ディックの頭部には2本の立派なウサギの耳が生えていた……。
そんな不安はあったが、向こうから誘ってきたのだ(ただ、教えて欲しいと言っただけ)この機会を逃すものか……。 逃せばヴァルナの横やりが入りかねないと言う不安もある。
冷えた水で熱を冷まし、深呼吸を繰り返すが、欲情がリーリヤの甘く乱れる姿を想像させ、身体の中心の熱だけは収まる事はなかった。
ディックが全てを諦めたのは、濡れた身体にローブを纏い自らの姿を鏡で見た時だった。
「こ、れは……何をしてくれた!! ばばぁああああああ!!」
そんな叫びにリーリヤが目を覚ましていた。
「なっ、何?」
寝巻姿にローブを纏い、ディック様の部屋へと急ごうとすれば向こうからやってきた老執事ジャックに止められた。
「旦那様は、少し……その……酔いつぶれられているようで。 お嬢様には、しばらくの間お会いできないとおっしゃっておりました」
「でも、あんな大声を出すなんて」
「いえ、問題はありません。 きっと陛下が王妃様を説得してくれますから」
「私が何とかした方が早いと思うんだけど」
「ですが、旦那様はその……落ち着くまでお嬢様にお会いしたくないとおっしゃっておりますので、ここは、旦那様のためにお戻りいただけないでしょうか?」
妙にはっきりしない言いようだった。
「分かりました……」
そう言った先で、ジャック相手に眠りの魔法をかけ使用人に彼の部屋に運んでくれるようにと頼み、ディック様の部屋へと急いだ。
ノックをしても拒否されるだけ。
下手をすれば扉が塞がれる。
静かに静かに鍵を開け、扉を開いた。
「リーリヤ、悪いがシバラク……近寄らないでくれないか……」
布団から顔を出すこともなく言えば、リーリヤは
「えっと……でも、呪われていますよね? どうして、今日は呪いを解かせてもらえないんですか?! ディック様!!」
声を上げ強硬手段に出ようとしたリーリヤだったが、布団に手をかける寸前に動きは止まり、そして静かに頭を下げる。
「出過ぎた真似をして、申し訳ありませんでした。 シバラクの間、王宮で世話になる事にします……」
それは、とても静かな声で……、ディックは慌てて布団を跳ね除けリーリヤの手を掴み抱き寄せた。
「ま、待ってくれ」
抱きしめれ……
抱きしめ……
「えっと……、痛いんですけど」
戸惑いに顔を見ようとすれば、頭が抑えられるから何事? と、思うじゃないですか……。 でも、まぁ、それでも懐かしい匂いに固く鍛え抜かれた身体に腕を回した。
湯を使わなかったのか拭いきっていない身体の表面の水滴が冷たく、その割に身体自身は熱を帯び、呼吸が荒く乱れていた。
今回、私は何もしていない訳だし、明らかに王妃様の魔力の痕跡がある。 ねっとりと絡みつく魔力に嫉妬してしまった。
冷えた身体に口づける。
水滴を舐めるように舌を這わせた。
傷を治すように、王妃様の魔力を打ち消していく。
「リーリヤ……やめるんだ」
呻くような声を無視して、ローブの内側に手を回し抱きしめれば戸惑いよりも完全な拒絶で引きはがされ、私は……酷い!! どうして王妃様の魔力を纏わせながら私を拒絶するのよ!! と、叫ぼうとした。
結果として、私は叫ぶ事がなかった。
ただ、顔を見上げて黙り込んでいた。
「ぇ?」
「……」
ディックの頭部には2本の立派なウサギの耳が生えていた……。
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