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23.身内の前では、話しにくいこと
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祖母から聞いたフリーダの朝食の席不在は、かなり長い期間でした。 なぜその間、直接確認しなかったのでしょう? という思いもありましたが、祖母の年齢を考えれば、祖父の死後も祖母が受け取っている祖父の遺族報奨金を考えれば、祖母の体調を優先することもオカシイ事ではありません。
結果論で語るのは良くない事と、私は私に言い聞かせます。
オカシイとするなら、フリーダが病床にあったとされた期間。 公爵様の婚約者として社交界に出て、乱交パーティの主催を行っていると言う事です。
祖母の記憶から、日程表を書きだし、治療を終えやってきた先生と共に確認する私。
祖母は先生の奥様と、世間話に興じ始めていました。 寂しがりやな祖母は、社交界に出れずとも年の近い、同じ苦労を分かち合えるお友達を作った方が良いのかもしれません。
そんなことを横目で見ながら考えつつも、先生との会話は続けていました。
「戦場での恐怖排除用の薬は、戦場と言う非日常であることもあり一見効果が分かりにくく気付いた頃には、中毒になっていると言う事も多いですが、性的興奮を目的とした薬は効果が分かりやすいものなんですよね」
今も先生は、幾人かの患者を抱えているらしく、よどみなく説明をなさいます。
この場合の中毒は、セックス時に薬を使うと気持ちいいから使おう。 という時期ではなく、薬を使用していない時も、快楽を常に求めるようになり、通常の快楽では物足りないと薬を求める。 薬を服用後は絶頂後も快楽を延々と求め続け、以下略。
医療的な発言でも、慣れない言語で私の顔面は凍り付き、助手の方がお茶をだしてくださいました。
お茶を飲み冷静になったところで、私は会話を再開します。
「ようするに部屋にこもりだした時、この薬を求める中毒循環に入ったと考えられますが、そうなると……公爵様の婚約者としてパーティを主催したものは誰か? ということになるんですよね」
「フィーアではないのですよね?」
私とフリーダは、色も造形も似ているからこその先生からの質問で、侮辱ではありません。
「私ではありませんわ。 どうしてもと疑われても魔術師の塔で、私の居場所の確認が出来ますから私は自分の無罪を証明することができます」
「では……末の妹君」
「彼女は、似てませんよね?」
先生の言葉に私が言えば、横合いから話を聞いていたらしい祖母が口をだしてきました。 これはこれで何やら気分となると言うものです。
「あの子は色味こそフリーダやフィーアと違いますが、顔立ちは2人とよく似ておりますよ。 でなければ、ノルダン伯爵家の娘として認める訳ありません」
少しばかり苦々しそうに言った。
そういえばエミリーの母を未だ見かけた事がないのですが……。 ソレを祖母に尋ねてみれば、
「人前に出て恥ずかしくないよう、礼儀と貴族のルール、伯爵夫人の仕事を教え込もうといたしましたら、1月も耐える事が出来ず逃げ出してしまいましたわ。 ただ……、今も、街で家を借りて面倒を見ていると言う噂が……」
誰が……というのは問わない方が良いのでしょう。
「ということは、エミリー様がかつらをかぶり、フリーダ様のマネをした可能性が0ではないと言うことなのですね」
とは言え、流石に数か月も前の事、アナタが出会ったフリーダ伯爵令嬢の瞳の色は何色でしたか? 等と聞いても覚えて等いないでしょう。 となれば、ここは既にエミリーがフリーダに成りすましていたと考えるべきでしょう。
では、エミリーが誰から薬を得たか? 部屋に置かれていた魔術師の塔以外の術式はどこから来た者なのか?
「目的を持ち、フリーダ伯爵令嬢に害を催したとなっては、ソレを表ざたにしたくはないと考え、治療の妨害、悪い場合は暗殺も考えられるのではありませんか? 大丈夫ですか?」
先生が眉間にしわをよせたずねてきます。
「そう、なのですよね……」
ここで手詰まりと言う奴です。
公爵様に安全を頼むには、ノルダン伯爵家は余りにも公爵様の好意を無下にしています。 もう1つの選択肢である塔は、魔術師しか招かないが塔のルールとなっており、だからこそ魔術師が住まう村というダミーが置かれているのです。
後は戻ってルークに相談しましょう。
因みにルークは、屋敷で留守番をしエミリーにアヤシイ人間が接触しないかを監視してもらっているのです。
その後、先生の所で祖母を預かってもらい、私と奥さんは買い物にでかけ、戻ってきてからは奥さんお勧めの店で食事をし、屋敷に戻ったのは夕刻過ぎでした。
「祖母様、今日はありがとうございました。 おかげでとても楽しい時間を過ごす事ができましたわ」
「そうね。 たまには外に出るのも悪くはないわね。 ありがとう」
そんな言葉を祖母から聞くこともできました。
「あと、祖母様さえよろしければ、腰と足を治療させていただけませんか?」
「これが、私の歩いてきた歴史です。 オマエの技術は本当に必要なものに与えなさい」
「あら、お婆様だって魔力は多い方なのですから……」
私は、お婆様の腰痛、足の関節の痛みが、魔力を上手く流せなくなっていることが原因だと告げ。 慣れさえすれば自分で治療も出来る事を告げた。
「祖母様がもし、同じ原因で痛みを抱えていらっしゃる方を助けてくださるなら、魔術師に対する偏見が薄まるきっかけになるのですが……ダメでしょうか?」
「……本当に、面倒臭い子だね」
そう語る祖母の魔力の風は、喜び、切なさ、後悔、愛おしいと言う思い……。
本当、不器用な方なんです。
結果論で語るのは良くない事と、私は私に言い聞かせます。
オカシイとするなら、フリーダが病床にあったとされた期間。 公爵様の婚約者として社交界に出て、乱交パーティの主催を行っていると言う事です。
祖母の記憶から、日程表を書きだし、治療を終えやってきた先生と共に確認する私。
祖母は先生の奥様と、世間話に興じ始めていました。 寂しがりやな祖母は、社交界に出れずとも年の近い、同じ苦労を分かち合えるお友達を作った方が良いのかもしれません。
そんなことを横目で見ながら考えつつも、先生との会話は続けていました。
「戦場での恐怖排除用の薬は、戦場と言う非日常であることもあり一見効果が分かりにくく気付いた頃には、中毒になっていると言う事も多いですが、性的興奮を目的とした薬は効果が分かりやすいものなんですよね」
今も先生は、幾人かの患者を抱えているらしく、よどみなく説明をなさいます。
この場合の中毒は、セックス時に薬を使うと気持ちいいから使おう。 という時期ではなく、薬を使用していない時も、快楽を常に求めるようになり、通常の快楽では物足りないと薬を求める。 薬を服用後は絶頂後も快楽を延々と求め続け、以下略。
医療的な発言でも、慣れない言語で私の顔面は凍り付き、助手の方がお茶をだしてくださいました。
お茶を飲み冷静になったところで、私は会話を再開します。
「ようするに部屋にこもりだした時、この薬を求める中毒循環に入ったと考えられますが、そうなると……公爵様の婚約者としてパーティを主催したものは誰か? ということになるんですよね」
「フィーアではないのですよね?」
私とフリーダは、色も造形も似ているからこその先生からの質問で、侮辱ではありません。
「私ではありませんわ。 どうしてもと疑われても魔術師の塔で、私の居場所の確認が出来ますから私は自分の無罪を証明することができます」
「では……末の妹君」
「彼女は、似てませんよね?」
先生の言葉に私が言えば、横合いから話を聞いていたらしい祖母が口をだしてきました。 これはこれで何やら気分となると言うものです。
「あの子は色味こそフリーダやフィーアと違いますが、顔立ちは2人とよく似ておりますよ。 でなければ、ノルダン伯爵家の娘として認める訳ありません」
少しばかり苦々しそうに言った。
そういえばエミリーの母を未だ見かけた事がないのですが……。 ソレを祖母に尋ねてみれば、
「人前に出て恥ずかしくないよう、礼儀と貴族のルール、伯爵夫人の仕事を教え込もうといたしましたら、1月も耐える事が出来ず逃げ出してしまいましたわ。 ただ……、今も、街で家を借りて面倒を見ていると言う噂が……」
誰が……というのは問わない方が良いのでしょう。
「ということは、エミリー様がかつらをかぶり、フリーダ様のマネをした可能性が0ではないと言うことなのですね」
とは言え、流石に数か月も前の事、アナタが出会ったフリーダ伯爵令嬢の瞳の色は何色でしたか? 等と聞いても覚えて等いないでしょう。 となれば、ここは既にエミリーがフリーダに成りすましていたと考えるべきでしょう。
では、エミリーが誰から薬を得たか? 部屋に置かれていた魔術師の塔以外の術式はどこから来た者なのか?
「目的を持ち、フリーダ伯爵令嬢に害を催したとなっては、ソレを表ざたにしたくはないと考え、治療の妨害、悪い場合は暗殺も考えられるのではありませんか? 大丈夫ですか?」
先生が眉間にしわをよせたずねてきます。
「そう、なのですよね……」
ここで手詰まりと言う奴です。
公爵様に安全を頼むには、ノルダン伯爵家は余りにも公爵様の好意を無下にしています。 もう1つの選択肢である塔は、魔術師しか招かないが塔のルールとなっており、だからこそ魔術師が住まう村というダミーが置かれているのです。
後は戻ってルークに相談しましょう。
因みにルークは、屋敷で留守番をしエミリーにアヤシイ人間が接触しないかを監視してもらっているのです。
その後、先生の所で祖母を預かってもらい、私と奥さんは買い物にでかけ、戻ってきてからは奥さんお勧めの店で食事をし、屋敷に戻ったのは夕刻過ぎでした。
「祖母様、今日はありがとうございました。 おかげでとても楽しい時間を過ごす事ができましたわ」
「そうね。 たまには外に出るのも悪くはないわね。 ありがとう」
そんな言葉を祖母から聞くこともできました。
「あと、祖母様さえよろしければ、腰と足を治療させていただけませんか?」
「これが、私の歩いてきた歴史です。 オマエの技術は本当に必要なものに与えなさい」
「あら、お婆様だって魔力は多い方なのですから……」
私は、お婆様の腰痛、足の関節の痛みが、魔力を上手く流せなくなっていることが原因だと告げ。 慣れさえすれば自分で治療も出来る事を告げた。
「祖母様がもし、同じ原因で痛みを抱えていらっしゃる方を助けてくださるなら、魔術師に対する偏見が薄まるきっかけになるのですが……ダメでしょうか?」
「……本当に、面倒臭い子だね」
そう語る祖母の魔力の風は、喜び、切なさ、後悔、愛おしいと言う思い……。
本当、不器用な方なんです。
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