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29.公爵と言う存在は、遠くから眺めて楽しむものである
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公爵家へと向かう日。
迎えとして寄越された馬車には、なぜかエミリーも一緒に乗り込んできた。
「何故?」
「フィーアお姉様はノルダン伯爵家を恨んでおります。 そのような方に我が家の命運を託せる訳などありませんでしょう」
めちゃくちゃな言い分です。 静かにしたかったのに……。 道すがら、エミリーは自分の立場と言うものを私の上位に位置づけするための発言を続け、私はエミリーの声を意識の外に外す事にしました。 魔術的に、ヒッソリこっそりと。
『祖母様と、フリーダ様は大丈夫でしょうか?』
私はエミリーを無視してルークに尋ねた。
『問題ない。 入れ違いに安全な場所へと移送することになっている』
『では、これで、私の使命は終わりと言う事ですね』
ホッとする反面、口うるさくも自分を思いやってくれた小さな存在との別れを思うと寂しく思えてしまう。 だけど、そんな私の憂い等を一切気にかける様子なく、ルークは言う。
『ドレス、良く似合っている』
濃い青色に銀糸で花を描かれたドレスに、真珠の髪飾り、ドレスは祖母と一緒に選んだもので、髪飾りは祖母が嫁入りの時に持たされたものだと言う。 今、祖母にとって出来る限りのことで送り出してくれたのだろうと思えば、公爵からの命で屋敷内を探っていただけという事実が申し訳なく感じると言うものです。
そんな会話と並行してエミリーが語るのは、
「ズルイですわ。 ずっとノルダン伯爵家を無視しておいて、突然に表れたと思えば、お婆様の寵愛を奪い取り、私が本来受け取るべき装飾品まで、ですが、今日の所は我慢致します。 何しろ公爵様からのお招きなのですから。 ですが、それが終われば、その真珠は自分には出来すぎたものだからと、私に贈るようお婆様にいってくださいませ。 どうせ、その黒髪をどれほど飾ろうと、辛気臭さは変わらないのですから」
視線から外してしまえば、口をパクパク動かしている事も気にならないのですけどね。
『祖母様は、私に似合う最高のものを選んでくださいました』
『妙に卑屈な言い方だな』
『ルークには分かりませんわ』
『そりゃぁ、言ってくれなければ分からないな』
『公爵様に会わなければいけ……ませんよね……』
ノルダン伯爵家の内情を探ると言うだけならルークの報告で良いでしょう。 だけど、祖母とフリーダの庇護を願う以上は、呼ばれて無視できる訳ありません。
『ノルダン伯爵家の失態を言っているのなら、それに関してフィーアに嫌味を言うことはない。 むしろ、よく頑張ってくれたと感謝しているくらいだから、何も心配することはないさ』
『それは! ルークがそう思って頂けるように報告したからでしょう』
『どうした、珍しく荒れている。 何がそう不安なんだ』
『頭の中がグチャグチャしますの』
『緊張で?』
『しない訳ないでしょう。 いえ、でも、それもあると言うか……私、アナタに会えなくなると思うと、寂しいわ』
『それは、俺もフィーアに会えなくなれば寂しいさ』
なんの悩みも間もなく返される返事は、妙に軽々しく思われ、悲しかった。 エミリーがいなければ思い切り掴んでムニムニしてやるのに!
『フィーアは公爵と会うのは嫌なのか?』
どうして、そこに戻るのでしょうか?
『いや……というべきか、公爵様と言う存在は、普通は遠くから拝見する類の方でしょう?』
『……それは……何か違う気がするが、フィーアにとって公爵はオブジェ的な何かなのか?』
『いえ、むしろ、芸術的な?』
『んんんん? 嫌っている訳ではないのだな?』
『嫌うほど知りませんし? ただ、1度お会いしたことがあって、その……』
『どうした?』
『とてもきらびやかな方だったのを覚えております』
『余り、褒めているようには聞こえないな』
『そうですね。 自分にはかかわりのない世界の方と言う印象ですから』
『その……俺は、公爵からフィーアは命の恩人だと聞いているのだが?』
迎えとして寄越された馬車には、なぜかエミリーも一緒に乗り込んできた。
「何故?」
「フィーアお姉様はノルダン伯爵家を恨んでおります。 そのような方に我が家の命運を託せる訳などありませんでしょう」
めちゃくちゃな言い分です。 静かにしたかったのに……。 道すがら、エミリーは自分の立場と言うものを私の上位に位置づけするための発言を続け、私はエミリーの声を意識の外に外す事にしました。 魔術的に、ヒッソリこっそりと。
『祖母様と、フリーダ様は大丈夫でしょうか?』
私はエミリーを無視してルークに尋ねた。
『問題ない。 入れ違いに安全な場所へと移送することになっている』
『では、これで、私の使命は終わりと言う事ですね』
ホッとする反面、口うるさくも自分を思いやってくれた小さな存在との別れを思うと寂しく思えてしまう。 だけど、そんな私の憂い等を一切気にかける様子なく、ルークは言う。
『ドレス、良く似合っている』
濃い青色に銀糸で花を描かれたドレスに、真珠の髪飾り、ドレスは祖母と一緒に選んだもので、髪飾りは祖母が嫁入りの時に持たされたものだと言う。 今、祖母にとって出来る限りのことで送り出してくれたのだろうと思えば、公爵からの命で屋敷内を探っていただけという事実が申し訳なく感じると言うものです。
そんな会話と並行してエミリーが語るのは、
「ズルイですわ。 ずっとノルダン伯爵家を無視しておいて、突然に表れたと思えば、お婆様の寵愛を奪い取り、私が本来受け取るべき装飾品まで、ですが、今日の所は我慢致します。 何しろ公爵様からのお招きなのですから。 ですが、それが終われば、その真珠は自分には出来すぎたものだからと、私に贈るようお婆様にいってくださいませ。 どうせ、その黒髪をどれほど飾ろうと、辛気臭さは変わらないのですから」
視線から外してしまえば、口をパクパク動かしている事も気にならないのですけどね。
『祖母様は、私に似合う最高のものを選んでくださいました』
『妙に卑屈な言い方だな』
『ルークには分かりませんわ』
『そりゃぁ、言ってくれなければ分からないな』
『公爵様に会わなければいけ……ませんよね……』
ノルダン伯爵家の内情を探ると言うだけならルークの報告で良いでしょう。 だけど、祖母とフリーダの庇護を願う以上は、呼ばれて無視できる訳ありません。
『ノルダン伯爵家の失態を言っているのなら、それに関してフィーアに嫌味を言うことはない。 むしろ、よく頑張ってくれたと感謝しているくらいだから、何も心配することはないさ』
『それは! ルークがそう思って頂けるように報告したからでしょう』
『どうした、珍しく荒れている。 何がそう不安なんだ』
『頭の中がグチャグチャしますの』
『緊張で?』
『しない訳ないでしょう。 いえ、でも、それもあると言うか……私、アナタに会えなくなると思うと、寂しいわ』
『それは、俺もフィーアに会えなくなれば寂しいさ』
なんの悩みも間もなく返される返事は、妙に軽々しく思われ、悲しかった。 エミリーがいなければ思い切り掴んでムニムニしてやるのに!
『フィーアは公爵と会うのは嫌なのか?』
どうして、そこに戻るのでしょうか?
『いや……というべきか、公爵様と言う存在は、普通は遠くから拝見する類の方でしょう?』
『……それは……何か違う気がするが、フィーアにとって公爵はオブジェ的な何かなのか?』
『いえ、むしろ、芸術的な?』
『んんんん? 嫌っている訳ではないのだな?』
『嫌うほど知りませんし? ただ、1度お会いしたことがあって、その……』
『どうした?』
『とてもきらびやかな方だったのを覚えております』
『余り、褒めているようには聞こえないな』
『そうですね。 自分にはかかわりのない世界の方と言う印象ですから』
『その……俺は、公爵からフィーアは命の恩人だと聞いているのだが?』
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