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1章 潮
07.合流
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高木の仕事の都合から、倉敷駅で合流となった。
秋の空を見上げながら道路脇に立っていると、軽いクラクションと共に白のカローラが止まった。
朝早く出て幾つかの撮影地点を経由してくると言っていた彼は、カジュアルな服装に身を包んでいた。
車の後部座席にチラッと視線を送れば、撮影道具やノートパソコンが乱雑に置かれて座る所はない。開かれる助手席のドア。
「お疲れ様です」
緊張した声に気付かないように高木は爽やかに声をかけてきた。
「待たせてしまったね。何か食べる?」
昼食には遅く、夕食には早い時間。
「軽く何か食べたいかな?」
高木は笑いながら言う。
「じゃぁ、香川県に入ったら、軽くうどんでも食べるかい?」
「それは軽いんでしょうか?」
デートみたいだ、と思って慌ててその考えを打ち消した。
香川といえばうどんだ。その土地の文化に触れる方が、きっと贅沢だ。
「いや?」
「いえ、是非食べたいです!」
「良かった」
昼食におにぎりを食べたのは3時間前、ガッツリいけるかなぁ?と思えば、小サイズがあったので、それを選ぶ。チラッと高木を見れば小サイズを2つ、そして、大量の天ぷらを選ぶ高木。
「食事をする暇がなかったんですか?」
何度か食事を一緒にしたけれど、こうガッツリと食べている印象はない人だ。
「地元に戻ったせいかな?なんだか妙に腹が減っていて……」
そう笑って見せる高木はなんだか困った様子に見えた。
私は少し考え込んで高木を見た。
「体調は大丈夫ですか?」
「お腹は空いているけど、気力は十分だよ。で、シンジュちゃんは出汁、熱い方にする冷たい方にする?私はどっちも選ばせてもらうんだけどね」
本当に嬉しそうに、出汁タンクから出汁を注ぐ高木。そして私は熱い方を選んだ。
うどんは、太い、程よいコシにもちもちな柔らかみのある麺で、私が育った地元で人気のうどんとはかなり食感が違っていた。
「どう?」
「食べ応えがありますよね。もちもちで思っていたよりも柔らかくておいしいです。それに温かくて優しい味わいの出汁が日常って感じでほっとします。これ、毎日でも食べられる味ですよね!」
「そうそう米を毎日食べるのと同じ感覚かな?冷たい方はコシのある固めの麺だよ、食べてみる?」
私は首を横に慌てて振りながらも笑っていた。
「そう言う割には、うどん食べている所はあまり見たことないですけど?」
「それだけ地元愛が強いってことだよ」
余程腹が減っているのか、箸が止まらない。うどんをすすり、天ぷらにかぶりつき、照れたように笑う。
可愛いかも……。
そして、改めて高木の生まれ育ち、地元愛を抱く故郷なのだと思えば、少しばかり緊張してくる。
「ところで、この後はどうするんですか?その、まだ結構早い時間ですけど。宿までは距離があるんですか?」
「そうだね……撮影を少ししていきましょうか」
絶景と呼ばれる地は何処にでもあるけれど、やはりそれを神秘として見せるのは、何処までも撮影技術と加工技術なのだと学んでいた。それでも、高木と素敵な景色を一緒に見ると思うと……勝手にロマンティックな様子を想像してしまう。
「シンジュちゃん?」
「ぇ、ぁ、はい、何か?」
「ボーっとしていたけど、気分転換になってない?」
「いえ、そんな事はないです」
むしろ……自分の想像力に、今は夢の中の出来事のような折り重なった恐怖心が妄想だったのでは?と思えるほどなのだ。
秋の空を見上げながら道路脇に立っていると、軽いクラクションと共に白のカローラが止まった。
朝早く出て幾つかの撮影地点を経由してくると言っていた彼は、カジュアルな服装に身を包んでいた。
車の後部座席にチラッと視線を送れば、撮影道具やノートパソコンが乱雑に置かれて座る所はない。開かれる助手席のドア。
「お疲れ様です」
緊張した声に気付かないように高木は爽やかに声をかけてきた。
「待たせてしまったね。何か食べる?」
昼食には遅く、夕食には早い時間。
「軽く何か食べたいかな?」
高木は笑いながら言う。
「じゃぁ、香川県に入ったら、軽くうどんでも食べるかい?」
「それは軽いんでしょうか?」
デートみたいだ、と思って慌ててその考えを打ち消した。
香川といえばうどんだ。その土地の文化に触れる方が、きっと贅沢だ。
「いや?」
「いえ、是非食べたいです!」
「良かった」
昼食におにぎりを食べたのは3時間前、ガッツリいけるかなぁ?と思えば、小サイズがあったので、それを選ぶ。チラッと高木を見れば小サイズを2つ、そして、大量の天ぷらを選ぶ高木。
「食事をする暇がなかったんですか?」
何度か食事を一緒にしたけれど、こうガッツリと食べている印象はない人だ。
「地元に戻ったせいかな?なんだか妙に腹が減っていて……」
そう笑って見せる高木はなんだか困った様子に見えた。
私は少し考え込んで高木を見た。
「体調は大丈夫ですか?」
「お腹は空いているけど、気力は十分だよ。で、シンジュちゃんは出汁、熱い方にする冷たい方にする?私はどっちも選ばせてもらうんだけどね」
本当に嬉しそうに、出汁タンクから出汁を注ぐ高木。そして私は熱い方を選んだ。
うどんは、太い、程よいコシにもちもちな柔らかみのある麺で、私が育った地元で人気のうどんとはかなり食感が違っていた。
「どう?」
「食べ応えがありますよね。もちもちで思っていたよりも柔らかくておいしいです。それに温かくて優しい味わいの出汁が日常って感じでほっとします。これ、毎日でも食べられる味ですよね!」
「そうそう米を毎日食べるのと同じ感覚かな?冷たい方はコシのある固めの麺だよ、食べてみる?」
私は首を横に慌てて振りながらも笑っていた。
「そう言う割には、うどん食べている所はあまり見たことないですけど?」
「それだけ地元愛が強いってことだよ」
余程腹が減っているのか、箸が止まらない。うどんをすすり、天ぷらにかぶりつき、照れたように笑う。
可愛いかも……。
そして、改めて高木の生まれ育ち、地元愛を抱く故郷なのだと思えば、少しばかり緊張してくる。
「ところで、この後はどうするんですか?その、まだ結構早い時間ですけど。宿までは距離があるんですか?」
「そうだね……撮影を少ししていきましょうか」
絶景と呼ばれる地は何処にでもあるけれど、やはりそれを神秘として見せるのは、何処までも撮影技術と加工技術なのだと学んでいた。それでも、高木と素敵な景色を一緒に見ると思うと……勝手にロマンティックな様子を想像してしまう。
「シンジュちゃん?」
「ぇ、ぁ、はい、何か?」
「ボーっとしていたけど、気分転換になってない?」
「いえ、そんな事はないです」
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