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01.聖人誕生の裏側
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川と海と隣接する岩壁の上に作られた都市ビアスは、近隣の重要貿易拠点となっており多くの人が住んでいる。 そんな地で私『ラフィ』は生まれ育った。
この地はとても恵まれた地だと他所の人は言う。 海を背にした街の正面は、塩害の影響もなく麦が育つ。 背にする海からは魚が取れる。 船をつけるのに適した湾もあり、左右を挟む森からは恵みを得られる。
だけど、呪われている。
この街の住民から稀に『半端者』『混ざり者』『廃棄者』と呼ばれる者が生まれた。 代々この土地に住まう一族の者達が発症した。
それは体のどこかに獣の印を持つ病。
力強い爪がある。
水かきがある。
硬い鱗がある。
尾がある。
角がある。
「薄汚い獣共が……」
そういいながら、廃棄者を生まれると同時に殺そうとしないのは、その身に獣と等しい特別な力が宿るからだ。
そんな土地で私は聖人『ザレア』の道具として扱われていた。
私の体液に病となる特効薬としての効果が見られたためだ。
それが分かったのは、15の年。
分かったのは偶然。
羽毛に覆われたこの廃棄者の身体は、病がうつると疎まれており、雨で暇を持て余した若者達に狩りの練習だと追い回されたのがきっかけだった。 丁度その頃の若者達は、彼等をまとめていた少年が欠けていた。
その少年は、都市の貿易をまとめ、都市の領主のような役割を請け負う男の息子で、廃棄者達の働きを親から説明されていたからこそ、狩りごっこと廃棄者を追い回しても、どこか手心を加えていたのだ。
だけど数日前、その少年は若者達の集団から消えた。
両足を覆うように鱗が生え、爬虫類のような足へと変化したため捨てられたのだ。 その捨てられた少年が蔦を鞭のように使い私の身体に巻き付け、木の上に引き上げ助けてくれる。
「大丈夫か?」
少年は言うが、私の腕からは血が流れていた。 流れ落ちてはそれは固まり宝石のように固まっていく。
「コレは?」
「触らないで!!」
そもそも都市の者達は、私達を汚れた者とし触れれば獣の印がうつると言って忌み嫌っている。 そして、そう言われることで、私自身も、いえ……廃棄者皆がそうだと思い込んでいた訳なのです。
別に自分を追い立てていた人間を庇う気などないけれど、万が一にも人に不幸をもたらしてしまえば自分が呪われた存在だと認めなければいけなくなる。
自分から生まれた欠片に触れられるのは嫌だった。
だから触れるのをとめた。
「なぜ、こんなに綺麗なのに」
少年は言う。
「私達は呪われ、ケガレた存在なのでしょう。 そう言っていたのはアナタじゃない。 貸して捨てるから」
「僕の宝物にしたいんだけど」
「冗談じゃないわ」
「ごめんよ。 僕は今まで君の気持を理解出来なかった。 君たちを獣だと思っていた。 同じようになってみて知った。 君たちは人だ」
少年はそう語る。
だけど、そんな言葉が免罪符となるかと言われれば、そんな訳などありえない。 彼が言った通り、彼等は何時も何時も何時も!! 私達を獣のように追い回していたのだから。
反撃すれば、それこそ本物の獣だと言われ容赦なく全滅させられる。 それでも、獣の印は、血筋ではなく、突然に表れるもので、また隠れ、身を寄せ合うように廃棄者は群をなすのだと言う。
「僕は知らなかったんだ。 君がそんなに美しかったとは……。 白い髪、白い肌、身体を覆う白い羽毛、金色の瞳、なんてなんて愛おしい」
傷はほぼ一瞬で塞がっている。 その傷を見て少年は安堵し、そして私に笑って見せた。
「僕は、君のケガレなら喜んでこの身に受け入れよう」
そして握りこんだ血の結晶を口にすれば、彼の足を侵食していた鱗が消えたのだ。
ケガレが失われた。
だからと言って、容易に屋敷に受け入れられると考えなかった少年は、妙薬を生み出す獣として私を伴い親元に帰ったのだった……。
「事実を知れば、人は君の血を求め争い、そして勝者は君が真っ赤に染まるほどまでに血を搾り取るだろう。 嫌だろう? だから大人しく僕のいう事を聞くんだ。 僕だけのモノになるんだ」
彼は私の耳もとで、そう囁いたのでした。
この地はとても恵まれた地だと他所の人は言う。 海を背にした街の正面は、塩害の影響もなく麦が育つ。 背にする海からは魚が取れる。 船をつけるのに適した湾もあり、左右を挟む森からは恵みを得られる。
だけど、呪われている。
この街の住民から稀に『半端者』『混ざり者』『廃棄者』と呼ばれる者が生まれた。 代々この土地に住まう一族の者達が発症した。
それは体のどこかに獣の印を持つ病。
力強い爪がある。
水かきがある。
硬い鱗がある。
尾がある。
角がある。
「薄汚い獣共が……」
そういいながら、廃棄者を生まれると同時に殺そうとしないのは、その身に獣と等しい特別な力が宿るからだ。
そんな土地で私は聖人『ザレア』の道具として扱われていた。
私の体液に病となる特効薬としての効果が見られたためだ。
それが分かったのは、15の年。
分かったのは偶然。
羽毛に覆われたこの廃棄者の身体は、病がうつると疎まれており、雨で暇を持て余した若者達に狩りの練習だと追い回されたのがきっかけだった。 丁度その頃の若者達は、彼等をまとめていた少年が欠けていた。
その少年は、都市の貿易をまとめ、都市の領主のような役割を請け負う男の息子で、廃棄者達の働きを親から説明されていたからこそ、狩りごっこと廃棄者を追い回しても、どこか手心を加えていたのだ。
だけど数日前、その少年は若者達の集団から消えた。
両足を覆うように鱗が生え、爬虫類のような足へと変化したため捨てられたのだ。 その捨てられた少年が蔦を鞭のように使い私の身体に巻き付け、木の上に引き上げ助けてくれる。
「大丈夫か?」
少年は言うが、私の腕からは血が流れていた。 流れ落ちてはそれは固まり宝石のように固まっていく。
「コレは?」
「触らないで!!」
そもそも都市の者達は、私達を汚れた者とし触れれば獣の印がうつると言って忌み嫌っている。 そして、そう言われることで、私自身も、いえ……廃棄者皆がそうだと思い込んでいた訳なのです。
別に自分を追い立てていた人間を庇う気などないけれど、万が一にも人に不幸をもたらしてしまえば自分が呪われた存在だと認めなければいけなくなる。
自分から生まれた欠片に触れられるのは嫌だった。
だから触れるのをとめた。
「なぜ、こんなに綺麗なのに」
少年は言う。
「私達は呪われ、ケガレた存在なのでしょう。 そう言っていたのはアナタじゃない。 貸して捨てるから」
「僕の宝物にしたいんだけど」
「冗談じゃないわ」
「ごめんよ。 僕は今まで君の気持を理解出来なかった。 君たちを獣だと思っていた。 同じようになってみて知った。 君たちは人だ」
少年はそう語る。
だけど、そんな言葉が免罪符となるかと言われれば、そんな訳などありえない。 彼が言った通り、彼等は何時も何時も何時も!! 私達を獣のように追い回していたのだから。
反撃すれば、それこそ本物の獣だと言われ容赦なく全滅させられる。 それでも、獣の印は、血筋ではなく、突然に表れるもので、また隠れ、身を寄せ合うように廃棄者は群をなすのだと言う。
「僕は知らなかったんだ。 君がそんなに美しかったとは……。 白い髪、白い肌、身体を覆う白い羽毛、金色の瞳、なんてなんて愛おしい」
傷はほぼ一瞬で塞がっている。 その傷を見て少年は安堵し、そして私に笑って見せた。
「僕は、君のケガレなら喜んでこの身に受け入れよう」
そして握りこんだ血の結晶を口にすれば、彼の足を侵食していた鱗が消えたのだ。
ケガレが失われた。
だからと言って、容易に屋敷に受け入れられると考えなかった少年は、妙薬を生み出す獣として私を伴い親元に帰ったのだった……。
「事実を知れば、人は君の血を求め争い、そして勝者は君が真っ赤に染まるほどまでに血を搾り取るだろう。 嫌だろう? だから大人しく僕のいう事を聞くんだ。 僕だけのモノになるんだ」
彼は私の耳もとで、そう囁いたのでした。
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