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10.それは祝福と言う名の呪いのようだ
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20日間の間、私はルシェから多くを学んでいた。
生命あるものは、生命力、魔力、祝福を与えられ誕生する。
生命力は生きるための力。
魔力は活動するための力。
祝福は力の方向性。
神が与える祝福、例えるなら腕力、これを使うためには魔力が必要となる。 魔力の量が多すぎる場合、祝福の持つ性質の1つである獣性が強く表面化するのではないかという話だ。 なので、魔力を垂れ流しにするのではなく制御することで、獣性は表面化しなくなるのだと言う。
今の私は、翼を消す事は出来ないが、身体を覆っている羽毛を消すぐらいは出来るようになっていた。
「すべすべだな」
湖に連れてきてもらった私は水浴びをしていた。 その様子を見ていたルシェの言葉だ。
「うん、不思議な感じがする。 人間に見られたくて、引き抜いていた時期があったのが馬鹿みたいに思える」
「そんなことをしていたのか」
「だって、街で人間のように買い物をしてみたかったんだもの」
長い年月を生きた長老は、今では人よりも喋る獣と言う方が正しいくらいだけど、廃棄者の住まう要塞に捨てられる者の最初と言えば些細な印しかもたない。 だから服で隠しさえすれば、人の街にも買い物に行くことができる。
だけど、私が捨てられた赤ん坊の頃から翼があったし羽毛もあったのだと言う。
ソレはさておき……たかが印程度なら人として人間と共に暮らせるのでは? と言われた場合に問題となるのは、獣性の強さ。 人の持つ常識の欠如から来る不安、人にはない身体能力によって、バレてしまう事も多い。 だから、見つかって狩りの練習に使われてしまう。
これはルシェに学んだのではなく、身体の身軽な私が、人間を観察して知った事。
「いつまで水浴びをしているんだ? 風邪を引くぞ」
「ひかないよ。 廃棄者は基本的に丈夫だから」
「まぁ、それもそうだが。 でも、おいで。 今日は一緒に食べようと思って饅頭をかってきたから」
言われて私はルシェの元に駆け寄れば、黒い夜のような布地でルシェは私の身体を抱きしめ拭い、膝の上に乗せ、手のひらに饅頭が置いてくれる。 ルシェの与えてくれる食べ物は決して豪華ではない、ザレアが与えてくれる食べ物のほうが豪華だ。 それでもルシェと食べるご飯の方が何万倍も美味しい。
「ねぇ、ルシェ」
「なんだ?」
「貿易都市に幻滅していない?」
「どうして? この街の人達は寛容だし、混ざり者に怯えず、利益を見出し共存している。 多少の差別は仕方がないものだ。 誰だって強い者は怖いと思う。 できるなら、その強い者に強者であると気づかれないまま支配したいと思うのも当然だろう」
饅頭を食べ終えた私に、ルシェは林檎を差し出してきた。 ルシェは何時も酸味の強く果汁の溢れる林檎をくれる。 ソレを食べると、どんなに夜遅くても、眠たくても、目が覚めるような、そんな感じがして、物を良く考えられるようになる。
そして私は考える。
ルシェの言葉は確かにその通りだ。
だけど、そう思うほどに、私は腹立たしさを思えて、私は拗ねて見せる。 とは言っても、怒っているとかそういう風に思われるのは嫌で、ギュッとルシェに両腕を回し抱き着き顔を隠すのだ。 ついでに林檎の果汁で濡れた口回りをルシェの服で拭ってやる。
「こら」
「ふふ~ん。 だって、ルシェの言葉は正しいと思うけど、それだとザレアがエライって言っているみたいで腹が立つんだもん」
「彼は、そうだな……。 人と廃棄者の間に立って上手くやっていると思うよ」
「ザレアを褒めちゃ嫌だ!!」
「はいはい」
ポンポンと背を軽く宥めるように叩かれ、そして髪を翼を撫でられる。
正直……今日のように要塞の者達が馬鹿をするたびに、人間が私を盗み出そうとするたびに、力のないザレアが私を守るためには今の対処法が最善なのだと思えてしまう。
むかつく……。
「そういえば、要塞の、廃棄者達がどうなったか知ってる?」
「あぁ、もともと回復力があるから、凄惨な見た目ほど酷い状況な訳じゃない。 ただ、自分が道具扱いされ切られれば誰だって相手を嫌いになるだろう? 切られたくなくて抵抗をするのも当然だし」
抱き着いたまま顔を見上げる私に、ルシェはニッコリと笑って見せた。
「そう……やっぱり馬鹿だよね」
私は、私を含めた廃棄者達のことを口にした。 何とも表現しがたい気分になれば、よしよしと翼の付け根部分を撫でられる。
生命あるものは、生命力、魔力、祝福を与えられ誕生する。
生命力は生きるための力。
魔力は活動するための力。
祝福は力の方向性。
神が与える祝福、例えるなら腕力、これを使うためには魔力が必要となる。 魔力の量が多すぎる場合、祝福の持つ性質の1つである獣性が強く表面化するのではないかという話だ。 なので、魔力を垂れ流しにするのではなく制御することで、獣性は表面化しなくなるのだと言う。
今の私は、翼を消す事は出来ないが、身体を覆っている羽毛を消すぐらいは出来るようになっていた。
「すべすべだな」
湖に連れてきてもらった私は水浴びをしていた。 その様子を見ていたルシェの言葉だ。
「うん、不思議な感じがする。 人間に見られたくて、引き抜いていた時期があったのが馬鹿みたいに思える」
「そんなことをしていたのか」
「だって、街で人間のように買い物をしてみたかったんだもの」
長い年月を生きた長老は、今では人よりも喋る獣と言う方が正しいくらいだけど、廃棄者の住まう要塞に捨てられる者の最初と言えば些細な印しかもたない。 だから服で隠しさえすれば、人の街にも買い物に行くことができる。
だけど、私が捨てられた赤ん坊の頃から翼があったし羽毛もあったのだと言う。
ソレはさておき……たかが印程度なら人として人間と共に暮らせるのでは? と言われた場合に問題となるのは、獣性の強さ。 人の持つ常識の欠如から来る不安、人にはない身体能力によって、バレてしまう事も多い。 だから、見つかって狩りの練習に使われてしまう。
これはルシェに学んだのではなく、身体の身軽な私が、人間を観察して知った事。
「いつまで水浴びをしているんだ? 風邪を引くぞ」
「ひかないよ。 廃棄者は基本的に丈夫だから」
「まぁ、それもそうだが。 でも、おいで。 今日は一緒に食べようと思って饅頭をかってきたから」
言われて私はルシェの元に駆け寄れば、黒い夜のような布地でルシェは私の身体を抱きしめ拭い、膝の上に乗せ、手のひらに饅頭が置いてくれる。 ルシェの与えてくれる食べ物は決して豪華ではない、ザレアが与えてくれる食べ物のほうが豪華だ。 それでもルシェと食べるご飯の方が何万倍も美味しい。
「ねぇ、ルシェ」
「なんだ?」
「貿易都市に幻滅していない?」
「どうして? この街の人達は寛容だし、混ざり者に怯えず、利益を見出し共存している。 多少の差別は仕方がないものだ。 誰だって強い者は怖いと思う。 できるなら、その強い者に強者であると気づかれないまま支配したいと思うのも当然だろう」
饅頭を食べ終えた私に、ルシェは林檎を差し出してきた。 ルシェは何時も酸味の強く果汁の溢れる林檎をくれる。 ソレを食べると、どんなに夜遅くても、眠たくても、目が覚めるような、そんな感じがして、物を良く考えられるようになる。
そして私は考える。
ルシェの言葉は確かにその通りだ。
だけど、そう思うほどに、私は腹立たしさを思えて、私は拗ねて見せる。 とは言っても、怒っているとかそういう風に思われるのは嫌で、ギュッとルシェに両腕を回し抱き着き顔を隠すのだ。 ついでに林檎の果汁で濡れた口回りをルシェの服で拭ってやる。
「こら」
「ふふ~ん。 だって、ルシェの言葉は正しいと思うけど、それだとザレアがエライって言っているみたいで腹が立つんだもん」
「彼は、そうだな……。 人と廃棄者の間に立って上手くやっていると思うよ」
「ザレアを褒めちゃ嫌だ!!」
「はいはい」
ポンポンと背を軽く宥めるように叩かれ、そして髪を翼を撫でられる。
正直……今日のように要塞の者達が馬鹿をするたびに、人間が私を盗み出そうとするたびに、力のないザレアが私を守るためには今の対処法が最善なのだと思えてしまう。
むかつく……。
「そういえば、要塞の、廃棄者達がどうなったか知ってる?」
「あぁ、もともと回復力があるから、凄惨な見た目ほど酷い状況な訳じゃない。 ただ、自分が道具扱いされ切られれば誰だって相手を嫌いになるだろう? 切られたくなくて抵抗をするのも当然だし」
抱き着いたまま顔を見上げる私に、ルシェはニッコリと笑って見せた。
「そう……やっぱり馬鹿だよね」
私は、私を含めた廃棄者達のことを口にした。 何とも表現しがたい気分になれば、よしよしと翼の付け根部分を撫でられる。
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