【R18】聖女は生贄として魔王に捧げられました。 勝手に救われた気になっていますが大丈夫ですか?

迷い人

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19.私は魔物に寄り添い生きる

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 そして、今、私は魔王様、いえ……ルシェから引き続き力の使い方を学んでいる。

「白姫様、お目覚めください。 魔王様がお待ちになっておいでです」

 そう話しかけてきたのは、下半身が蛇の美人なお姉さん。

「はい……」

 蛇のお姉さんは、ボンヤリしている私の寝間着を脱がせ、羽毛の生えた肌と大きく育っている翼を露わにさせる。 小鳥型の魔物が私の羽毛を毛繕いし、蛇のお姉さんは私の顔を洗うために水の入った桶を準備し、猫の顔で人の身体を持った女性が私の髪をとかす。

 なんだか、慣れなくて自分の世話は自分ですると言えば、人との共存を願う魔物達にとっては、私の世話もまた楽しみなのだと言っていた。 私達の楽しみを奪わないでくれと言われた。

 人とは言い切れない姿なのに、魔物にとって私は人の範疇なのだと知って複雑な気分になり、人に捨てられた私が魔物に大事にされるのだから、より複雑な思いが胸の中でモヤモヤする。

『どうかなさいましたか? 白姫様』

「私も、アナタ達と同じが良かったな……」

 ポソリと呟けば、返事はないが爬虫類独特の瞳が笑い、猫姉さんや小鳥たちも笑い、何も聞かなかった様子でウットリとした声で私を褒める。

『ほんに美しい白でございます』

 慣れないなぁ……。

「ありがとうございます」

 私には優しい彼女達だが、15日間の間、多くの人を殺し食らっていた。 この街の人間、特に領主家の使用人になる者達は大きな差別意識が根付いていた。

 当初、私には人間の世話役がつけられていた。 だけれど、魔物に対する鬱屈した思いを私にぶつけた。 廃棄者である、都市のごみである存在の私に。 それが3日続いた後、その者達は魔王の敵として処分された。

 身支度を整え、軽く食事をし、猫姉さんが私の羽毛の上から闇色のローブを羽織らせる、すると白い翼が自然とローブの外側に現れた。 ローブの前が留められた瞬間、それは闇色のドレスに変わった。

『お似合いですよ。 さぁ、魔王様の元へ』

 私達は魔王ルシェの元へと向かう。

 彼が使う部屋の前に立てば、

『ラフィだけを入れろ』

 淡々とした声。

 私が扉を開き中に入れば、廃棄者を演じていた頃のルシェよりも、少しだけ年齢が増し、身体が大きく、そして貫禄を増した姿がそこにあった。

 手を差し出されれば、私は彼の元に進みその手を取る。 すると、腕の中に抱き入れられ、口づけられた。

『おはよう、よく眠れたか?』

「はい、お気遣いありがとうございます。 魔王様は、お疲れのようですがこれから御就寝ですか?」

 ここから近しい都市を滅ぼした魔物達はルシェとは違う魔王を擁しているのだと言う。 魔王と言うのは、長命であるとか力ある者の庇護下に入ろうとする魔物が主に対してつける称号で、そういう特別な生まれという訳ではないそうだ。

 だから、結構沢山いるらしい。 そしてルシェは自分の計画を邪魔させないように、他の魔物の群れの長である魔王たちと交渉だったり殺し合いだったり忙しいそうだ。

『俺は別に眠る必要はない。 あと、その口調は辞めろ。 ラフィは俺の臣下な訳ではないのだから。 だが、疲れたのは確かだ……。 魔力コントロールの訓練の前に、その血を少し分けてもらうぞ』

 私がコクリと頷けば、首筋が唾液を絡めた舌先でピチャピチャ舐められた。 牙を通しても痛くないように麻痺させているらしい。 痛みを与えない事で、回復を遅らせると言う意味もあるそうだ。

 ぴちゃぴちゃと闇の中に水音が響き、プチッと軽い音がした。

「ぁ……」

 それは、痛みというよりも快楽と言う方が余程近い。

「んっ」

 血の塊が大概へ出れば結晶化する、ソレがルシェの口に含まれる事で甘く熟れ切った果実のように芳醇な香りを醸し出すのだと言う。 私には分からないけれど、魔物達はそう感じるらしい。

 闇がざわざわと動いており、ソワソワすれば、ルシェは笑う。

『安心しろ、奴等には見えないし聞こえない。 ただ、香りに酔うだけだ。 好きなように甘い声で鳴くといい』
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