【R18】聖女は生贄として魔王に捧げられました。 勝手に救われた気になっていますが大丈夫ですか？

24.ちょっと過去、領主屋敷に来た当初の小型魔物と人 02

　犠牲を演じられるほどに魔力コントロールに慣れた頃。



　ルシェは小型魔物を恐れ恐慌状態に陥った使用人達を謁見室に呼び出し、こう尋ねたのです。

『善良なる魔物を悲しませた罪をどう償う？』

「わ、私は、死にかけました。　殺されかけました。　十分に恐怖を味わいました！！　聖女様がいなければ、私は、私は……何が、何が共存ですか！！　結局は、食糧としか思っていない癖に！！」

　魔王の問いにそこまで答えた侍女は、いっそ見事だと思ったけれど、既に狂っているのかも？　共にその場に並べられた使用人達も、瞳と呼吸の荒さを見る限り発狂寸前のように見えます。

　そこで、私は予定していた通り、仰々しく訴えて見せる。

「魔王様、尊き方、偉大なる方、この者達に慈悲を与えてください。　私が、この者達の罪を背負いましょう。　だから、お願いですこの者達に自由を与えてください」

　向けられた視線は怪訝。

　正直、あ～～～そうなりますよねぇ～って思った。

　何しろ、私は使用人達と仲が良かった訳ではないですし？　だからと言って私と言う個に対して、敵意を向けられたことはありませんが。　それでも、廃棄者とひとくくりにされた先では、蔑みで、そうしてきた自覚はあるのでしょう。

　聖女様と私を言ったけれど、きっとそこには敬意とか尊敬とかある訳ではなく『聖女様』までが名前と割り切っているんだろうなと思う訳。　所詮はその程度の関係性な訳なんですよ。

　だから、使用人の人達は怪訝になるのも分かるのです。　でも、ここまではキッチリとザレアが予想していた通りです。

『どうにも、これらはオマエラフィを信用ならぬと思っているようだが？』

「私は……ザレアに守られて日々を過ごしていました。　彼等を助けるのも、また彼への恩義となるでしょう。　彼等が私に対して恩義を感じずとも、ザレアに感謝してくれればソレでいいのです」

　そして、剣で切られ、槍で突かれ、弓を射られ、傷を与えられた……ふりをした。　私を傷つけた武器も与えられたドレスもルシェの魔力で作られたもので、実際に私が傷つくことはありません。　いかに傷ついた風に見せかけるかが問題だったわけですし。

　1切りされて、1人の使用人が解放される。

「屋敷でのことは、魔物の事は、誰にも語ってはいけません。　アナタの自由は、聖女によって確保されたことを忘れないでください」

　ザレアは使用人に語り解放した。

　約束された沈黙。

　だけど、

　沈黙のまま領地を出る者。
　外部に助けを求めようと旅立つ者。
　魔物退治が必要だと血気にはやる者。
　恩義に報いようと屋敷に残る者。

　反応は人それぞれ。



　そして敵となる人に対して、魔物達は制裁する。

『聖女の命を代償に得た自由の意味を理解できぬなら、死んでしまえ』

　その声は、周囲には聞こえず。　聞いた次の瞬間にはその者の命は失われるため突然死の理由を知る者はいない。



　そんな経験もあり、聖女の犠牲計画は、状況を踏まえて日々修正が入れられている訳なのですよ。