【R18】聖女は生贄として魔王に捧げられました。 勝手に救われた気になっていますが大丈夫ですか?

迷い人

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34.それは愛と言うより、どこか契約めいて

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 息を奪うような口づけ。
 私と言う存在が、魔物である彼にとって食事である以上。 ここで「美味しかった?」と聞けば、そりゃぁ美味しいってなるだろう。

 それは、不満だ。

 唇が離され、ソレを意思表示するように拗ねて見せれば、困ったような表情で頬を撫でられた。

『そんなに、嫌だったか?』

「私はビスケットの味を聞きたかったのに、それだと私の味になる。 だから不満」

『なるほど……』

 そう告げた彼は、ハンカチで包まれたビスケットの中から1枚つまみ口に放り込んだ。 私は彼が食事をした姿を見たことが無い事を思い出した。

「もしかして、人間の食べ物を食べることができなかった?」

『そう言う訳では……ただ、人間の食べ物は人間のためのものだ』

「でも、これらは魔物たちが材料を準備したよ」

『だが、人間の食べ物は限りがある。 栄養にもならないものを無暗に食べるべきではない』

「言わんとすることはわかるけど、私が作ったものは別だって皆言っているよ?」

『そうだな。 ルシェの作ったものは意味がある。 もう1つ貰えるか?』

「欲しいの?」

『あぁ』

「仕方ないなぁ~」

 その日、半年以上も姿すら見せなかったルシェと意味のない話を沢山した。 もし、ツガイとなるなら、1日の半分は私にくれるとルシェが言うから、夕食の時間から、朝食の時間までを貰う事にした。 と言っても、私は眠らないと生きていけないから、それは彼等にとって無駄な時間になる。 だから……これは、ただ、試すための質問。

『構わない。 人の世に馴染み、都市をまとめる仕事に就きたいと言う者も増えている。 それらを登用すれば時間はいくらでもつくれる。 それに……人間は生きるために、魔物を受け入れるしかない。 そう思う日が来るだろう。 だから……』

「そんな言葉よりも、嘘でもいいから、愛の言葉が欲しい」

『生涯をかけて何よりも大切にしよう』

 ルシェはそっと私を抱きしめれば、酔っぱらったような陶酔したかのような声で囁いた。

『甘い、甘い匂いがする……』

「ずっと、お菓子を作っていたし、余り匂いがうつったのかも」

『そんなものより、ラフィの香りが何よりも俺達を酔わせる』

 抱き上げて、ベッドの上に私をそっと置けば、ふわりと白いドレスが広がった。 そのドレスを脱がせ、下着替わりの薄衣のドレスが露わとなる。 それは、白色の肌が透けて見えるほどにどこまでも薄い。

『綺麗だ……』

 耳元で囁かれれば、耳から首筋にかけてザワザワとした感触がかけ巡り、小さく声を漏らす。触れるか触れないかのようにそっと耳から首筋を降りてくる。

「ふっ……ぅん」

 顔を背ければ、強引に唇が奪われた。 唾液を舐めとるように丁寧にだけど優しく、口内をユックリと細く長い舌が舐めれば、自然と声が漏れ出た。

「んっ、ふぅ……はぁ……」

 口を塞がれ思うように呼吸が出来ず、息があらくなれば口内の責めは優しく舌を絡めあうものへと変わった。強弱をつけ、舌を絡めて行けば、お互いの唾液が絡み合いクチュクチュと音を立て始める。それを全て奪うように更に舐めとるように、チュっと音をたてて舌を吸われ、微かな甘い痛みに甘い声が漏れた。

 口内を満遍なく犯しながらも、ルシェの右手は胸の膨らみを包む薄衣にそっと触れる。柔らかなドレスを通じて、肌を撫でる感触だけが伝わり、もどかしい。

 糸を引きながら唇が離れれば、私は大きく新鮮な空気を肺に取り入れた。

 もっと触れてほしいのだと、肌に直接……言葉には出来なかった。

 ルシェは私の思いに気づくことなく、頬に触れている白い髪を手でそっと退かし、肩口へと顔を埋める。チュッと音をたてて首筋を吸われれば、ピリッとした感覚に身が震える。

「んっ……」

 首筋を舌先でなぞられ、吸われ……チクリと牙があたった。 ルシェは自分の行為に慌てたかのように身を起こし、困ったように笑って見せる。

「いいんですよ?」
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