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71.完結
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聖女様とカトス国神殿へと戻れば、何故か、ソファーとテーブルを取り出し何かを読み党論しているゼルと豊穣神の姿があった。
思わず首を傾げれば、聖女様が先に歩み寄って行った。
「ご無沙汰しております。 豊穣神様」
膝をつき丁寧な挨拶をすれば、書籍ではなくファイルとして綴ってある書面から豊穣神は顔を上げた。
「久しいの、輝ける子よ」
回復はしてもらったものの、シンプルな寝不足と過労故に、未だ少しオカシイところが残っている私はこう思った。
ハゲ?
「話は娘から伺いました。 本気で出奔なさろうとお考えなのですか? この国の民は、豊穣神様の恵み合って初めての命なのです。 娘からの供物は使いを通して十分ではありませんか」
聖女様が説明を始めるのだけれど、私は私が『娘』と言われた事が嬉しくて、頬が緩んでいた。
「大切な話をしているのに、ダラシナイ顔をしない」
「……ママ……」
ちょっと呼んでみた。
「……豊穣神よ少しばかり失礼します」
ガシッと抱きしめられて、頭をワシワシされた。 およそ2分ほどの会話中断。
「申し訳ありませんでした」
聖女様が神と向かい合えば、ソロソロとゼルが気配を消して側に来て、乱れた頭をそっとなで、櫛でといで、結びなおして、抱き上げ頬すりをする。
『色々と見せつけてくれるのぉ』
「申し訳ございません。 うちの子達が」
『そなたもじゃ』
呆れたような声が響く。
何しろ神様は、妖精の幽霊ぐらいにしか見えないのだから、その表情等もわからない。 ただ……思った訳……羨ましいのかな? って、でも……この国だって幸せな人はいると思う。 いえ、むしろ、前世とは違い、食文化を司るような存在が、こんなに身近にいるのだから、みんな美味しいものを食べて、幸せなのでは?!って、思うでしょう?
『神が国の主神となれば、それだけで国に加護を与える。 この大地に作物を植えれば、大きな実りが与えられる。 この国の民が、作物を植えれば、そこには成長の加護が与えられる。 その加護の源はなんだと思う?』
「祈り、願い、感謝」
人の思いや思い込みは、神の存在を確定する。 だから神に貢物をすると言う私が、闇神に安らぎと言う価値を与えた事で、神の性質が少しばかりぶれてきている。 良いのか悪いのか分からないけれど、恐怖と言う一面が突然に喪失されても困るから、ゼルをどっかの戦場に参戦させておくか等と王様が言っていた。
まぁ、今回は戦争したくない国からのSOSが原因で、今に至るのだが……。
『そうじゃ、この国は、我が一人で支えておる。 故に大水となろうが、山火事が起ころうが、そんな中でも飢える事の無い食糧が確保されてきた。 それが当たり前になった時、人はどうしたと思う?』
民の声は知らずとも、各国の状況は耳に入るようになっている聖女様は、口をキツク結んだ。 とうとう髪を編み込みだしたゼルが、別に質問した訳でもなく私に説明し始める。
「神に不満を言い出したのですよ。 なぜ災害が起きるんだ? なぜ自分達は豊かにならない、贅沢をできないのだと」
「なぜ?」
ゼルに問えば。
「簡単ですよ。 神は加護をくださるが、政治は人が行うものだからです。 陛下が忙しいのも、シワ寄せが来るのも、他国との友好関係を保つ必要があるのも……戦争も、全てが政治であり、人のためなんですよ。 さぁ、できました」
聖女様は、肩をすくめてみせた。
「オルグレンは、その主神の性質上、属国を所有しても侵略はしない。 なら、カトスであればどうするのがベストだと思う?」
聖女様は私を振り向いた。
なぜ2人とも私に話しかける?
「えっと……国の一部を取り上げ、その国の発展のために一部を残し、属国とするかな?」
「そう、そういう方法もある訳だ。 まぁ、仕方がないか。 チビちゃん。 豊穣神様に寄り城を、そして坊主は転移の準備を。 感が良いものは、豊穣神が消えた事に気づくかもしれないからね」
私が首を傾げれば、
「依り代って言うのは、神にとって収めるべき国の代替えのようなものとして扱われる可能性があるからね。 直ぐに逃げた方がいい」
そう聖女様は言いながら光の転移陣を作り出す。 人数的にはゼルの作るもので構わないと思うのだけど。
「何、犯人の隠蔽作業さ。 光と闇が同時に発生すればソレは相殺される」
ポムっと私は手を打った。
陣が完成すると同時に、豊穣神様は野菜人形に入り軽四サイズの狐になる。 弱っているといっても大神は大神と言うところでしょうかね? そして私達はオルグレンへと戻るのだった。
「オマエ等……出現場所を選べ……」
巨体な狐の圧力が、王様の執務室を圧迫すれば、王様は呻くようにつぶやいていた。
空白期を前にリエルは、豊穣の大神を神使に持つ事となる。 これによりゼルによる軍事、リエルによる食物生産、ヒューバートによる政治、全ての準備が整った形となる。
ゼルとリエルの管理にヒューバートの苦労は尽きる事はないだろうが、少なくともかつてない安定した空白期を迎え平和で、彼等なりの幸福な日々を送ることとなるだろう。
完結
思わず首を傾げれば、聖女様が先に歩み寄って行った。
「ご無沙汰しております。 豊穣神様」
膝をつき丁寧な挨拶をすれば、書籍ではなくファイルとして綴ってある書面から豊穣神は顔を上げた。
「久しいの、輝ける子よ」
回復はしてもらったものの、シンプルな寝不足と過労故に、未だ少しオカシイところが残っている私はこう思った。
ハゲ?
「話は娘から伺いました。 本気で出奔なさろうとお考えなのですか? この国の民は、豊穣神様の恵み合って初めての命なのです。 娘からの供物は使いを通して十分ではありませんか」
聖女様が説明を始めるのだけれど、私は私が『娘』と言われた事が嬉しくて、頬が緩んでいた。
「大切な話をしているのに、ダラシナイ顔をしない」
「……ママ……」
ちょっと呼んでみた。
「……豊穣神よ少しばかり失礼します」
ガシッと抱きしめられて、頭をワシワシされた。 およそ2分ほどの会話中断。
「申し訳ありませんでした」
聖女様が神と向かい合えば、ソロソロとゼルが気配を消して側に来て、乱れた頭をそっとなで、櫛でといで、結びなおして、抱き上げ頬すりをする。
『色々と見せつけてくれるのぉ』
「申し訳ございません。 うちの子達が」
『そなたもじゃ』
呆れたような声が響く。
何しろ神様は、妖精の幽霊ぐらいにしか見えないのだから、その表情等もわからない。 ただ……思った訳……羨ましいのかな? って、でも……この国だって幸せな人はいると思う。 いえ、むしろ、前世とは違い、食文化を司るような存在が、こんなに身近にいるのだから、みんな美味しいものを食べて、幸せなのでは?!って、思うでしょう?
『神が国の主神となれば、それだけで国に加護を与える。 この大地に作物を植えれば、大きな実りが与えられる。 この国の民が、作物を植えれば、そこには成長の加護が与えられる。 その加護の源はなんだと思う?』
「祈り、願い、感謝」
人の思いや思い込みは、神の存在を確定する。 だから神に貢物をすると言う私が、闇神に安らぎと言う価値を与えた事で、神の性質が少しばかりぶれてきている。 良いのか悪いのか分からないけれど、恐怖と言う一面が突然に喪失されても困るから、ゼルをどっかの戦場に参戦させておくか等と王様が言っていた。
まぁ、今回は戦争したくない国からのSOSが原因で、今に至るのだが……。
『そうじゃ、この国は、我が一人で支えておる。 故に大水となろうが、山火事が起ころうが、そんな中でも飢える事の無い食糧が確保されてきた。 それが当たり前になった時、人はどうしたと思う?』
民の声は知らずとも、各国の状況は耳に入るようになっている聖女様は、口をキツク結んだ。 とうとう髪を編み込みだしたゼルが、別に質問した訳でもなく私に説明し始める。
「神に不満を言い出したのですよ。 なぜ災害が起きるんだ? なぜ自分達は豊かにならない、贅沢をできないのだと」
「なぜ?」
ゼルに問えば。
「簡単ですよ。 神は加護をくださるが、政治は人が行うものだからです。 陛下が忙しいのも、シワ寄せが来るのも、他国との友好関係を保つ必要があるのも……戦争も、全てが政治であり、人のためなんですよ。 さぁ、できました」
聖女様は、肩をすくめてみせた。
「オルグレンは、その主神の性質上、属国を所有しても侵略はしない。 なら、カトスであればどうするのがベストだと思う?」
聖女様は私を振り向いた。
なぜ2人とも私に話しかける?
「えっと……国の一部を取り上げ、その国の発展のために一部を残し、属国とするかな?」
「そう、そういう方法もある訳だ。 まぁ、仕方がないか。 チビちゃん。 豊穣神様に寄り城を、そして坊主は転移の準備を。 感が良いものは、豊穣神が消えた事に気づくかもしれないからね」
私が首を傾げれば、
「依り代って言うのは、神にとって収めるべき国の代替えのようなものとして扱われる可能性があるからね。 直ぐに逃げた方がいい」
そう聖女様は言いながら光の転移陣を作り出す。 人数的にはゼルの作るもので構わないと思うのだけど。
「何、犯人の隠蔽作業さ。 光と闇が同時に発生すればソレは相殺される」
ポムっと私は手を打った。
陣が完成すると同時に、豊穣神様は野菜人形に入り軽四サイズの狐になる。 弱っているといっても大神は大神と言うところでしょうかね? そして私達はオルグレンへと戻るのだった。
「オマエ等……出現場所を選べ……」
巨体な狐の圧力が、王様の執務室を圧迫すれば、王様は呻くようにつぶやいていた。
空白期を前にリエルは、豊穣の大神を神使に持つ事となる。 これによりゼルによる軍事、リエルによる食物生産、ヒューバートによる政治、全ての準備が整った形となる。
ゼルとリエルの管理にヒューバートの苦労は尽きる事はないだろうが、少なくともかつてない安定した空白期を迎え平和で、彼等なりの幸福な日々を送ることとなるだろう。
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