モフモフ叔父との田舎暮らしがカオスすぎる

迷い人

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07.パンダ叔父は、見つめたい

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 翌朝、目覚めてもパンダテーマパークが頭の中を駆け巡った。いや、夢の中でモフモフパンダパラダイスは続いていて、むしろ増殖している分、現実よりもパワフルだったかもしれない。あまり考えたくはない……あの叔父を可愛いだなんて、あり得ない!!

 まあ、感謝はしているけれど。

「仲良くなりたい」と言われて、悪く思えるはずもない。

 竹モチーフの菓子は、あくまでモチーフでどれも美味しく食べることができた。

「ねえ、オジサン!!」

 外で草むしりをしているパンダの背中に声をかける。

「よぉ~」

「おはよう! 昨日のお菓子の残り、学校に持って行っていい? 友達と食べるから」

「おはよう! おぉ、姪っ子ちゃんは転校してすぐ友達ができるなんて凄いなぁ~。よしよし、可愛くラッピングしてやろう。どこかにパンダ柄の箱があったはずだ」

 イソイソとワクワクした様子で草むしりをやめ、いつもよりワントーン高めの宇宙パンダ体操の鼻歌が聞こえ始めた。

 私は冷蔵庫を開き、素早く8枚切りの食パン、チーズ、ハム、レタスを取り出す。マヨネーズとマスタードを加えてサンドイッチを作り、齧り付く。そして素早く材料を冷蔵庫に戻す……ウニウニと動き、感情的に輝いて「Hello」と挨拶をする自然派栄養ドリンクと視線が合うのを避けるためだ。

「増えていた……気がする。いや、冷静に考えるのよ。あれはただの手作りジャム……かもしれない。そう、そうよ……ご近所さんがフルーツくれたし……」

 自分を納得させ、冷凍庫を開けて凍らせたペットボトルをカバンにしまう。その時、渡し忘れていたパンダマグネットを思い出した。

「今渡すと、昨日のパーティの感謝だと思われるのも……なんだか嫌……」

 目の前の冷蔵庫にペタペタと貼り付けていく。

 気に入るといいな。

「♪パン! ダ! パンダ~♪」

 宇宙パンダ体操のメロディが徐々に近づいてくる。頭にグルグル響かないように、別の歌を声に出して口ずさむ。

「姪っ子ちゃん、歌、上手いなぁ~~」

 そう言いながら、何かを手にクネクネと踊って近づいてきた。クネクネに合わせて揺れる布地……。

「ひっ!」

 悲鳴のような声を上げたのは……見られている。無数の目が私を見ている。

「なっ、何それ……!!」

 逃げ腰な態度で、私の叫びが響く。

 パンダはサングラスをクイッと上げ、ニヒルに(たぶん)笑う。

「ハハ、姪っ子ちゃん、いい質問だ!! これは俺の極上アニマルセラピー、第二弾だ! ほら、姪っ子ちゃんにプレゼントだ! 俺特製のパンダマフラー、白黒柄で俺の癒しパワーを感じな!」

「普通、白黒って、縞模様とか水玉模様だよね?! これ、なんか……」

「いけてるだろう? いつだって俺が見守っているぜ! って、少し重いかなぁとも思ったけど、俺の姪っ子ちゃんへの愛の深さを隠すことなんてできるわけないからな」

 白いマフラーに、黒いパンダの目の周りと目! そんなマフラーが押し付けられた。

 暑い。

「……え、マフラー!? 今日30℃超えだよ!? 暑いんだけど」

「俺の熱い想いを受け取ってくれ!」

「暑苦しいんだけど」

「俺の暑苦しい想いを受け取ってくれ!」

 感謝の気持ちゲージが徐々に下がっていく……そんな気がしたところに、

「それとコレ、友達と仲良く食べるんだぞ」

 可愛い紙袋に入れられたパンダクッキー。イソイソとリボンをつけて、ピッピッと端を整える気遣いに、ほんの少しだけ心がほだされる。暑いけど……暑いけど……大事なことだから何度となく呟くことになりそうだけど。

 見た目はアレだけど、肌触りは良い。柔らかいのにしっかりと編まれている。緩すぎず、きつ過ぎず……プロか!? だが、印象的な目は……角度によっては、こちらをチラチラ見ているような……。

「ねえ、これ、寝ずに編んだ? 目、赤いよ」

 そう、今気づいたが、爛々と赤くて、獲物を前に興奮しているかのようにすら見えて怖い。

「ハァハァ、叔父さんの愛はね、24時間営業だぜ姪っ子ちゃん。これで絆、ぐっと深まったかな?!」

 期待交じりのドヤ顔は、モフモフの耳と鼻先をピクピクさせて、お褒めの言葉を期待しているのが丸わかりだ。ツッコミ、ツッコミたい……でも、ダメかぁ……期待を裏切りたくない、そんな気分が芽生えていた。

「絆って、こんなのより写真見せてくれた方が早くない? オジサンの証拠って手書きスケッチだけでしょ!!」

 そう言うと、ノンノンと指を立てて振って見せる。

「ふっ、姪っ子ちゃん、疑り深いな。……ほら、これ見てみな。俺とお前の家族の歴史だぜ」

 封筒を開けると、ボロボロの紙に**「パンダ家家系図」**と書いてあって、私の名前が「姪っ子ちゃん♡」って!?

 ……いや、手書きすぎ! インクがまだ乾いてないんだけど!?

「これ、昨日書いたでしょ!? 雑すぎて証拠にならない、いや、そうじゃなくて、パンダ家って何!?」

「ハハハハッハ、心の目で見なきゃ、姪っ子ちゃん。家族の絆はここにあるぜ」

 パンダがモフモフの胸(たぶん)をドンと叩く。その瞬間、鍋の中から「プク……」って音!

 ……緑汁!? また隠してる!?

「待って、また汁の音!? 絶対そこに緑汁あるよね!? ホラーやめてって言ったじゃん!」

「ハハ、細かいこと気にするなよ! ほら、マフラー巻いて、癒しセラピー開始だぜ!」

 パンダがマフラーを私の首にグイグイ巻いてくる。……って、モフモフで暖かい!? なんか、ちょっと癒される!?

「う、うそ、なんで!? 怪しいのに、なんでちょっと心和むの!? 怪しい!!」

 その時、ピンポーン!

 玄関のチャイムが鳴り、ドアを開けると……ご近所のおばちゃん軍団が出現!

「パンダさぁ~ん。例のアレ、肌がピチピチツルツル10歳は若返ったって、皆言うのよぉおおおお。よければ実家の母のためにも分けてもらえないかしらぁ~。あら、サキちゃん今から学校?! 素敵ねぇ~そのマフラー。パンダさんの愛が漏れ出しているようだわぁあああ」

 パンダがニヤリと牙を見せながら、竹スティックを咥えてウインクする。

「レディース達、癒し効果バッチリだろ? 姪っ子ちゃんも、ほら、仲間に入りなよ。俺の活躍見てくれよ。叔父様凄いって……」

 期待に満ちた瞳に返すのは、私ではなく、ご近所のおばさん軍団だ。例のアレを褒めまくる。その声に合わせて……台所から嬉しそうに聞こえるのだ。

「プク……ククク、Hello……」

 私は、前向きに未来志向、ポジティブな心持ちで……学校へ逃げるように向かうのだった。
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