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序章 異世界
冒険記録1.異世界に行く理由
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「目を覚ましましたね。これからあなたを異世界へ送ります」
妙な浮遊感を感じて、目を覚ましたヨシュアの横に立って見下ろしていた謎の女性からいきなり言われた一言だ。
お酒が程よく体の中を回り、眠気も相まってか覚醒しきれていない頭で突如言われ、ヨシュアは混乱していた。
女性は健康的な白い肌を持ち、その肌を包み、なおかつ際立だせる白い服に金の花の装飾が付いた服。漆黒のように黒く、光が反射し、天使の輪っかが出来るほど艶がある髪を持っている。
それを知ってか知らずか、女性は彼の顔を見ながら説明を続けていた。
「す、少し待ってくれないか。突然説明を始められても、私には何がなんだが理解できないのだが。ここはどこだ? そしてあんたは一体何者だ」
ベッドに寝転がった状態から飲み過ぎで痛む頭を押さえながら、ゆっくり体を起こした彼は苦痛な声を上げながら白く輝くただただ広い空間を軽く見渡した後、次に話を進めようとしている目の前の女性を慌てて止める。
「ここは世界の狭間です」
「ということは私は死んだという事か?」
「いいえ、まだ死んでいませんよ」
「まだ……?」
矢継ぎ早に質問するヨシュアに女性は、しっかりと答えていく。白く輝く空間をいまだ慣れていない目で見たがために、頭痛が増したのか頭を押さえ、なんとか耐えながら何度も瞬きをし、女性の含みがある言葉に片眉を上げて首を傾げた。
「私の事ですが、後ほどお話致します。そうでなければ貴方は興奮してしまいますから」
「そう言われると更に気になってしまうが……」
ヨシュアについて何もかも知っているかのような口ぶりに、怪訝な顔をしながら彼女を見つめるも、そのことはどうでもいいという顔をして、説明の続きを始めていた。
「これから話す事について反復することは御座いませんので、一度で理解してください」
「無茶苦茶言いよる」
理不尽なことを言う目の前の人物に、彼は困った顔をする。海賊として生きてきた34年の間、いろいろな女性に話しかけられてきたが、ここまで理不尽なことを言って、強引に進める相手は初めてだった。まさにどうやって相手をしたらいいか分からないという状況だ。
「今までの貴方の行動、言動を見てきた上で言いますが、私は貴方を評価しているのですよ。その探求心の強さを」
ヨシュアから離れた女性は煌めく大理石の長机に向かう。そこにある水晶玉には、彼が生まれてから今までにしてきたことが映像として流れていた。大事なものを扱うかのように優しくそれを手に取ると、ゆっくりとした足取りで彼のところに戻ってくる。
「人として当然ではないか。何かを知りたい、理解したいと思うことは」
「それが、そうではないのです」
両手で大事そうに持つ彼女が水晶に視線をおろすと、先ほどまで流れていた映像が渦を巻き始め、次の瞬間には別の人物の過去が流れている。
「どういうことだ」
「世の中には何にも興味を示さない人間もいます。貴方の周りにいませんでしたか? ライバルや同盟を組んでいた相手の中に」
水晶玉から目線を外し、女性はヨシュアの顔を見つめる。その問いかけにしばらく考えた彼は1人の人物を思い出し、眉間にしわを寄せた。過去に戦った相手を思い出したのだろう。
「……そういえばいたな」
その答えに満足した彼女は微笑み、頷いた。
「幸いにも、貴方の周りは貴方と似た人物達で構成されましたが、世界は広いのです」
「随分と回りくどい言い方だが、つまりはあんたが言う異世界とやらに行って、今までとは違った人達を助けろと言いたいわけか」
「理解が早くて助かります」
「……行くのは面白そうだが、断らせてもらう」
腕を組み、ヨシュアは不貞腐れた表情を浮かべていた。
「なぜ?」
彼にとって面白い事は、知識の幅を広げる事だと知っている女性は、不思議そうに首を傾げている。
「私が今までで得た知識を、見知らぬ他人の為に使いたくないのだ。使うのならば仲間達のために使う」
「ああ、そうでした。貴方は昔からそういう人でしたね」
疑問が晴れた女性は納得した顔で頷き、聖母のごとく微笑んだ。
「分かっているのならば、何故私にあのようなことを言ったのだ」
「その理由は二つございまして、一つは貴方が今までしてきた殺人・略奪への贖罪です」
「私に罪を償えと?」
「ええ」
妙な浮遊感を感じて、目を覚ましたヨシュアの横に立って見下ろしていた謎の女性からいきなり言われた一言だ。
お酒が程よく体の中を回り、眠気も相まってか覚醒しきれていない頭で突如言われ、ヨシュアは混乱していた。
女性は健康的な白い肌を持ち、その肌を包み、なおかつ際立だせる白い服に金の花の装飾が付いた服。漆黒のように黒く、光が反射し、天使の輪っかが出来るほど艶がある髪を持っている。
それを知ってか知らずか、女性は彼の顔を見ながら説明を続けていた。
「す、少し待ってくれないか。突然説明を始められても、私には何がなんだが理解できないのだが。ここはどこだ? そしてあんたは一体何者だ」
ベッドに寝転がった状態から飲み過ぎで痛む頭を押さえながら、ゆっくり体を起こした彼は苦痛な声を上げながら白く輝くただただ広い空間を軽く見渡した後、次に話を進めようとしている目の前の女性を慌てて止める。
「ここは世界の狭間です」
「ということは私は死んだという事か?」
「いいえ、まだ死んでいませんよ」
「まだ……?」
矢継ぎ早に質問するヨシュアに女性は、しっかりと答えていく。白く輝く空間をいまだ慣れていない目で見たがために、頭痛が増したのか頭を押さえ、なんとか耐えながら何度も瞬きをし、女性の含みがある言葉に片眉を上げて首を傾げた。
「私の事ですが、後ほどお話致します。そうでなければ貴方は興奮してしまいますから」
「そう言われると更に気になってしまうが……」
ヨシュアについて何もかも知っているかのような口ぶりに、怪訝な顔をしながら彼女を見つめるも、そのことはどうでもいいという顔をして、説明の続きを始めていた。
「これから話す事について反復することは御座いませんので、一度で理解してください」
「無茶苦茶言いよる」
理不尽なことを言う目の前の人物に、彼は困った顔をする。海賊として生きてきた34年の間、いろいろな女性に話しかけられてきたが、ここまで理不尽なことを言って、強引に進める相手は初めてだった。まさにどうやって相手をしたらいいか分からないという状況だ。
「今までの貴方の行動、言動を見てきた上で言いますが、私は貴方を評価しているのですよ。その探求心の強さを」
ヨシュアから離れた女性は煌めく大理石の長机に向かう。そこにある水晶玉には、彼が生まれてから今までにしてきたことが映像として流れていた。大事なものを扱うかのように優しくそれを手に取ると、ゆっくりとした足取りで彼のところに戻ってくる。
「人として当然ではないか。何かを知りたい、理解したいと思うことは」
「それが、そうではないのです」
両手で大事そうに持つ彼女が水晶に視線をおろすと、先ほどまで流れていた映像が渦を巻き始め、次の瞬間には別の人物の過去が流れている。
「どういうことだ」
「世の中には何にも興味を示さない人間もいます。貴方の周りにいませんでしたか? ライバルや同盟を組んでいた相手の中に」
水晶玉から目線を外し、女性はヨシュアの顔を見つめる。その問いかけにしばらく考えた彼は1人の人物を思い出し、眉間にしわを寄せた。過去に戦った相手を思い出したのだろう。
「……そういえばいたな」
その答えに満足した彼女は微笑み、頷いた。
「幸いにも、貴方の周りは貴方と似た人物達で構成されましたが、世界は広いのです」
「随分と回りくどい言い方だが、つまりはあんたが言う異世界とやらに行って、今までとは違った人達を助けろと言いたいわけか」
「理解が早くて助かります」
「……行くのは面白そうだが、断らせてもらう」
腕を組み、ヨシュアは不貞腐れた表情を浮かべていた。
「なぜ?」
彼にとって面白い事は、知識の幅を広げる事だと知っている女性は、不思議そうに首を傾げている。
「私が今までで得た知識を、見知らぬ他人の為に使いたくないのだ。使うのならば仲間達のために使う」
「ああ、そうでした。貴方は昔からそういう人でしたね」
疑問が晴れた女性は納得した顔で頷き、聖母のごとく微笑んだ。
「分かっているのならば、何故私にあのようなことを言ったのだ」
「その理由は二つございまして、一つは貴方が今までしてきた殺人・略奪への贖罪です」
「私に罪を償えと?」
「ええ」
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