20 / 59
20話 応戦
しおりを挟む
洞窟らしき場所の前にたどり着き、門をくぐる。
中は私が想像しているような薄暗く、線路が地面にひかれ、蜘蛛の巣などが張ってあるようなところだ。
蜘蛛か。嫌な思い出しかないな。アラクネの毒でこんな姿になったのだ。しかも、力まで奪われた。
アラクネを倒す。
私をこんな姿にした報いは受けさせる。その為には早く元の姿に戻らなくては。
悶々と私が頭の中で恨み辛みを吐き出している間に、アレシアが魔法で松明に火を付けた。
そして、もう一本を剣士ローリンが持つ。松明で照らしているとはいっても、明かりで見える広さには限界がある。
私を中心に縦に並んで移動しているが、これでは後ろの人物がなにかあった時、すぐ知らせるのは難しいだろうな。
「足元気を付けて。滑りやすくなってるから」
そういえば、入る前に戦うのはダメだと言われたが、襲われてし返すのはダメとは言われていない。仕方なくだ。仕方なくし返すのだ。
なるべくバレないように武者震いを自制してはいるが、戦いたくて仕方がない。
ギルドの仕事の手伝いも有意義ではあるが、ここに来る前はずっと戦いっぱなしだったせいか、求めてしまうのだ。
戦いを。
だが、ルールがあるならば守らねばならない。目立ち過ぎないようにして。
恫喝していた男とのやりとりでもう難しいかもしれんが、しばらく大人しくしていたら人の記憶から私のことは薄れていくだろう。
その時にひっそりと活動すればいい。
「何か来る」
前を歩いていた斥候のカリスタが全員を止めた。この何か来るで既に分かっていなくてはならないが、ここで言ってしまえばこの4人の実力を上げる妨《さまた》げになるだろう。
私の耳に届く音は、二足歩行で軽い体重のものだ。時々壁に重いものを当てたような金属音と木の音がする。
棍棒を持っているのだろう。
洞窟にいるのはドワーフかゴブリンだな。
ただ、ここはダンジョンと呼ばれるところだ。そんなところにドワーフはいない。そもそも壁を削っているような採掘音が聞こえない。
なら、ゴブリンだろうな。
「来る!」
前から大量のゴブリンが現れた。
棍棒、弓、投石機。そして、杖を持っている者。
とりあえず私は下がろう。
皆の戦闘の邪魔になる。
アレシアの後ろに下がり、背後を警戒する。
下がった途端に、混戦が始まった。ローリンが剣で応戦しているが、少し長すぎるな。時々壁にぶつけている。
さて、どうするのだろうか。
「アーロ君助けて……」
「私に頼ったらダメだろ」
ふむ。剣士ローリンは武器を小型ナイフに変えて盾で応戦しているのか。考えたな。魔法使いマリンダも小さい石を空中に出現させゴブリンに向けて撃っている。
アレシアが槍を持ちながら私の隣に来た。
こそこそと小さい声で話しかけてくるが、ここで私が応戦したら違反になる。
「参戦は出来んが、助言はしてやる。槍を持って右手を後ろに。左手は前の方を持て」
言われた通りの持ち方をしているが、前過ぎるな。
「もう少し短くだ」
さきほどまで刃がある場所に近かったが、今は離れている。
「それで刺せ。刺しまくってぶつけろ」
「え、でも」
「味方に当たりそうだと思うなら一歩下がれ。もしくは後ろに来ているやつのことだけ考えろ」
私が後ろを振り返れば、多くの足音が近づいてくる。
「きゃあ!」
「絶対に途中で手を止めるな」
悲鳴を上げたアレシアを見上げたが、怖くなって目を閉じていた。
万が一のことを考えてナイフに手をかけてはいるが、ここは自制しなくては。
「アレシア、目を開けろ。でなければ皆もろとも死ぬぞ」
「で、でも」
「でもと言ってる場合ではない。覚悟を決めろ」
震えながら目を開けるとすぐ目の前にゴブリンが迫っている。
前も迫りくるゴブリンで対処に追われている。こっちの救助は難しいだろうな。
「や、やぁああああ!」
目を瞑《つぶ》りなら突き出した槍が一体のゴブリンに突き刺さり、その感触が伝わったのだろう。
アレシアが悲鳴を上げながら槍を上下左右に振っている。それほど激しく降ったら刺さったゴブリンが抜けて飛んでいきそうだが、何故か抜けていない。
そして、巻き込まれたゴブリンが次々と倒れていく。
「やれば出来るじゃん、アレシアお姉ちゃん」
最後の一体を倒し、前もひと段落着いたのか、その場でしゃがみ込んでいる。
アレシアは終わったことに気づいていないのかまだ槍を振っていた。
「アレシアお姉ちゃん、終わったよ」
アレシアの服をグイっと引き、地面に尻餅をつかせた。
短い悲鳴を上げた後、荒い呼吸が聞こえてくる。
「お疲れ様。よく頑張ったじゃん」
よく頑張った。だが、まだ1階層目だ。この調子で進めるのだろうか。
さて、記録をしとかなくてはな。
記録
ダイムサルンダンジョン 1階層目
敵 ゴブリン
死傷者 0
中は私が想像しているような薄暗く、線路が地面にひかれ、蜘蛛の巣などが張ってあるようなところだ。
蜘蛛か。嫌な思い出しかないな。アラクネの毒でこんな姿になったのだ。しかも、力まで奪われた。
アラクネを倒す。
私をこんな姿にした報いは受けさせる。その為には早く元の姿に戻らなくては。
悶々と私が頭の中で恨み辛みを吐き出している間に、アレシアが魔法で松明に火を付けた。
そして、もう一本を剣士ローリンが持つ。松明で照らしているとはいっても、明かりで見える広さには限界がある。
私を中心に縦に並んで移動しているが、これでは後ろの人物がなにかあった時、すぐ知らせるのは難しいだろうな。
「足元気を付けて。滑りやすくなってるから」
そういえば、入る前に戦うのはダメだと言われたが、襲われてし返すのはダメとは言われていない。仕方なくだ。仕方なくし返すのだ。
なるべくバレないように武者震いを自制してはいるが、戦いたくて仕方がない。
ギルドの仕事の手伝いも有意義ではあるが、ここに来る前はずっと戦いっぱなしだったせいか、求めてしまうのだ。
戦いを。
だが、ルールがあるならば守らねばならない。目立ち過ぎないようにして。
恫喝していた男とのやりとりでもう難しいかもしれんが、しばらく大人しくしていたら人の記憶から私のことは薄れていくだろう。
その時にひっそりと活動すればいい。
「何か来る」
前を歩いていた斥候のカリスタが全員を止めた。この何か来るで既に分かっていなくてはならないが、ここで言ってしまえばこの4人の実力を上げる妨《さまた》げになるだろう。
私の耳に届く音は、二足歩行で軽い体重のものだ。時々壁に重いものを当てたような金属音と木の音がする。
棍棒を持っているのだろう。
洞窟にいるのはドワーフかゴブリンだな。
ただ、ここはダンジョンと呼ばれるところだ。そんなところにドワーフはいない。そもそも壁を削っているような採掘音が聞こえない。
なら、ゴブリンだろうな。
「来る!」
前から大量のゴブリンが現れた。
棍棒、弓、投石機。そして、杖を持っている者。
とりあえず私は下がろう。
皆の戦闘の邪魔になる。
アレシアの後ろに下がり、背後を警戒する。
下がった途端に、混戦が始まった。ローリンが剣で応戦しているが、少し長すぎるな。時々壁にぶつけている。
さて、どうするのだろうか。
「アーロ君助けて……」
「私に頼ったらダメだろ」
ふむ。剣士ローリンは武器を小型ナイフに変えて盾で応戦しているのか。考えたな。魔法使いマリンダも小さい石を空中に出現させゴブリンに向けて撃っている。
アレシアが槍を持ちながら私の隣に来た。
こそこそと小さい声で話しかけてくるが、ここで私が応戦したら違反になる。
「参戦は出来んが、助言はしてやる。槍を持って右手を後ろに。左手は前の方を持て」
言われた通りの持ち方をしているが、前過ぎるな。
「もう少し短くだ」
さきほどまで刃がある場所に近かったが、今は離れている。
「それで刺せ。刺しまくってぶつけろ」
「え、でも」
「味方に当たりそうだと思うなら一歩下がれ。もしくは後ろに来ているやつのことだけ考えろ」
私が後ろを振り返れば、多くの足音が近づいてくる。
「きゃあ!」
「絶対に途中で手を止めるな」
悲鳴を上げたアレシアを見上げたが、怖くなって目を閉じていた。
万が一のことを考えてナイフに手をかけてはいるが、ここは自制しなくては。
「アレシア、目を開けろ。でなければ皆もろとも死ぬぞ」
「で、でも」
「でもと言ってる場合ではない。覚悟を決めろ」
震えながら目を開けるとすぐ目の前にゴブリンが迫っている。
前も迫りくるゴブリンで対処に追われている。こっちの救助は難しいだろうな。
「や、やぁああああ!」
目を瞑《つぶ》りなら突き出した槍が一体のゴブリンに突き刺さり、その感触が伝わったのだろう。
アレシアが悲鳴を上げながら槍を上下左右に振っている。それほど激しく降ったら刺さったゴブリンが抜けて飛んでいきそうだが、何故か抜けていない。
そして、巻き込まれたゴブリンが次々と倒れていく。
「やれば出来るじゃん、アレシアお姉ちゃん」
最後の一体を倒し、前もひと段落着いたのか、その場でしゃがみ込んでいる。
アレシアは終わったことに気づいていないのかまだ槍を振っていた。
「アレシアお姉ちゃん、終わったよ」
アレシアの服をグイっと引き、地面に尻餅をつかせた。
短い悲鳴を上げた後、荒い呼吸が聞こえてくる。
「お疲れ様。よく頑張ったじゃん」
よく頑張った。だが、まだ1階層目だ。この調子で進めるのだろうか。
さて、記録をしとかなくてはな。
記録
ダイムサルンダンジョン 1階層目
敵 ゴブリン
死傷者 0
1
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる