異世界でショタ指揮官になりました

yasaca

文字の大きさ
41 / 59

41話 しつこい男

しおりを挟む
「本当に人間?」
「人間だとも」
「怪しい」

 魔法については詳しくないが、少なくとも人の思考を読むような奴が人間だとは思わない。

「お主こそ、本当に子供か?」
「子供に決まってるでしょ」

 言い合いをしている私と冒険者の男に、エンベルトと御者がおろおろしている。

「そもそも、それだけ強いなら僕なんていらないでしょ」
「お前の将来を見越して言っているのだがな」
「将来なんてどうなるかわからないし、もし僕があなたの理想通りになったとしても仲間にはならない」
「そうか」

 エンベルトと御者に別れのあいさつをして、その場から逃げるように去る。早くこの場から立ち去ろう。あの男とは一秒も長く共に居たくない。

「アーロ君、おかえり……?」
「ただいま」

 走ってギルドの裏に逃げ込んだ。ギルドには来ても裏なら追ってくることもないだろう。走ってきたことで受付の人たちが驚いていたが、やっと落ち着ける。
 必死に走ったものだから息が途切れて苦しいが、あの男のそばにいるよりかいい。

「アーロ君、大丈夫?」
「うん、大丈夫」

 息を整え、心配するユルリカに返事をし、こっそりとギルド内の様子を見る。良かったついてきていない。

「誰かに追われてたの?」
「追われてたというか狙われてた」

 私と同じように壁に隠れながら見ているユルリカ。

「アーロ君を? いったい誰が?」
「Sランク冒険者のガスネトって人」
「え?」

 名前すらも言いたくないが、言わないと伝わらない。あの男の名前を言うとユルリカが目を見開いて驚いている。私の声が聞こえていた他の受付の人も驚いて振り返っていた。なんだ、そんなにすごいのか?
 ただしつこいだけの男だぞ。
 確かにこの街に戻ってきた時に、エンベルトが言っていた魔法三重掛けはすごいのかもしれんが、実感がない。見えもしないしな。

「知ってるの?」
「それはもちろんよ。今までいろいろな冒険者の方々がいたけど、最速でSランクになったのよ。それにSランクは世の中で5人しかいないと言われているわ」
「へぇ、それはすごいね」

 最速がどれくらいなのかはわからんが、何十、何百といる冒険者の中で、5人の中の1人はすごいと思う。だからこそ、怪しい。近接で戦っている所を見たことがないが、私が近くにいなくても十分戦えそうではあった。

「そんな冒険者さんに狙われてって何かしたの?」
「力とかでなにかしたわけではないけど、僕が将来化けるから仲間にしたいらしいんだ」
「アーロ君を?」
「そう」
「確かに、その年にしてはすごいスキルを持ってはいたけど、それでもEからDランクの冒険者さんと同じくらいよ」

 不思議ねと言いながら首を傾げるユルリカ。

「冒険者登録できていない僕を仲間にしようなんて不思議でしかない」
「そうねぇ」

 私とユルリカの会話を聞いている受付の人たち。邪魔してごめんなさいと謝り、受付の人たちがゆっくりしている場所に向かった。ここならば仕事の邪魔にはならないだろうし、あの男に見つかることもない。

「そういえばアーロ君、食事するところにりんごジュースとかが追加されたから次からはそれを飲みましょ」
「え、やった。あとで提供してくれる人にお礼しよう」
「そうね」

 微笑ましそうにふふふっと笑うユルリカ。子供っぽい反応をしてしまったが、ミード以外ならなんでも構わん。元の姿に戻ったとしても、ミードは飲まんだろうな。もとより今までもそれほど飲んでいなかったし、ここでも変わらんだろう。椅子に座り休もうとした瞬間に肌が粟立った。それと同時にギルド内が騒がしくなる。この感じは……。

「ガスネトさんがアーロ君に用事があるみたいだけど」
「いないって言って」

 裏にきた受付さんに、小声で伝える。普通の声を出したらバレそうな気がする。

「ここにいるだろうって言っているわ」
「じゃあ、会いたくないって言っておいて欲しい」

 私につられるように小声で話し始める受付さん。何がなんでも会いたくない。というかしつこいなあの男。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...