英雄の息子は英雄になりたい~エドガー・マキーナルトの野望~

イノナかノかワズ

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第4話 エドガー・マキーナルトの冒険者ギルド

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 早朝。ようやく東の空が白み始めた頃。

 王都の北東にあるテゥラー森林を駆けるいくつかの人影があった。

 身長と同じ程度の無骨な鋼鉄の斧を担ぎ、走るその人影の一つはエドガー。

 無属性魔法の一つで、身体能力を強化する〝身体強化〟により、驚異的な身体能力を得ているエドガーは残りの人影を追いかける。

「チッ。やっぱり、最初の奇襲で全て終わらせておくべきだったな」
「ギャガァー!!」

 わっぱほど身長に猿のような体躯。皮膚は緑で、体毛は少ない。目は黄色く、尖がった耳と額から生えている小さな角が特徴的だ。

 ゴブリン。五歳児並みの知能を持ち、手先が器用で簡単な道具や家など作る特性を持った社会性の魔物だ。

 一体だけならば駆け出しの冒険者でもたおせないことはないが、数が増えるごとにその難易度は上がっていく。

 基本十匹以上の集団で動き、連帯をして武器や罠を使うのだ。しかも、猿のような凶暴性と身体能力を持っている。

 基本的に、新人である石ランクを卒業した銅ランクの冒険者が、万全の準備をして挑む魔物である。準備をしなくてもたおせるレベルだと、二つ上の銀ランクとなる。

 エドガーの実力は銀ランク相当か、それ以上。

 しかしエドガーは油断することなく、日が昇る直前にゴブリンの群れに奇襲を仕掛けたのだが、五体ほど取り逃してしまったのだ。

 エドガーはその残りを追いかけていたのだ。

「まずは一体」
「グギャア!」

 季節は既に秋に差し掛かり、魔物だけでなく肉食動物の動きも活発になる。特にゴブリンの肉は魔物や動物にとって美味くはないが、栄養を得るには可もなく不可もない肉だそうだ。

 つまり、それなりに喰われる。

 エドガーは血などで魔物や肉食動物を集めないために、斧の腹でゴブリンの頭を軽く打ち、気絶させる。

 水魔法、〝水球〟で水の球を作り出し、その中に失神したゴブリンを突っ込む。窒息死させた。

 エドガーはそのまま死んだゴブリンが入っている〝水球〟を消すことなく、再び走り出す。〝水球〟が後ろをついてくる。

「これで最後だな」

 そうして、残り四体のゴブリンを同じように気絶させて〝水球〟に入れて窒息死させた。

 そして最初の奇襲地点に戻った。

 水魔法の〝水縄みずなわ〟という水の縄で手足を拘束したゴブリンたちを小さな〝水球〟を使って、窒息死させて、それから解体をする。

は壊したし、魔石と角と耳の回収も済んだ。肉や骨とかも、魔力が含まれてるから肥料にはなるんだが……」

 エドガーは目の前に積み重なったゴブリンの死体の山を見やる。

 数は三十一体。流石に、持ち帰るには量が多すぎる。

「冒険者ギルド自体も買取は殆どしてねぇしな。ひと際健康なやつの肝臓と腎臓は薬として需要があるだろうから、そこだけ抜き取ってあとは規定に従って埋めるか」

 そうつぶやき、エドガーは黙々と作業をした。ちょうど、全てが終わるころには朝日が昇り切っていた。


 Φ


 自由ギルドの起源は千年以上前にあり、魔物が蔓延はびこる世界を旅したキャラバンが最初だった。

 そのキャラバンは旅で得た知識や技術、そして特別な力が込められた道具であるアーティファクトを使い、世界各地に魔物に襲われにくく、災害にも襲われにくい道を創り上げた。

 その道を使い、運送業として成功。

 それから、盗賊や魔物から道と運送を守るために傭兵ギルド。運送の市場を発展させるための商業ギルド。また、運送によって集めた素材を生かして物を作る鍛冶ギルド。

 殆どの国は自由ギルドが作り出した道以上の物を作り出すことができず、また国という獣の血管をなすのが、道である。

 そのため、最初に道という血管を確保した自由ギルドは次々に新しいギルドを創設し、あらゆる国に対して公平的な立場を保つ独立組織へと成長した。

 それが五百年前。

 そして、独立組織になったときに創設されたのが冒険者ギルド。

 冒険者ギルドが創設される前は比較的各国が安定的な政治を行い始めた頃で、人口がそれなりに増え始めたこともあって、仕事にありつけない人たちが増えてきたのだ。

 そんなこともあって、自由ギルドが小さな雑事に関しての仕事を貰い、あぶれている人たちにそれらの仕事を紹介し始めたのが始まりだった。

 そこから、薬や物を作りための素材採取としての仕事。傭兵のように守るのではなく、魔物を狩るという仕事。

 ただ、そのころになると、傭兵は魔物ではなく人間専門の戦闘職となり、輸送の護衛の仕事も流れ始めた。

 そうすると金が流れ、運と実力さえあればどんな者でも仕事を紹介され金を得られることから、一攫千金を狙う阿呆ども……つまり冒険者が誕生した。

 そうして形作られたのが、魔物の討伐や素材の採取を主としながらも、依頼さえあればなんでも引き受けるいわゆる何でも屋冒険者を管理し、仕事を紹介する冒険者ギルドである。

 そんな冒険者ギルドの受付にエドガーはいた。

 冒険者ギルドにはかなりの人数がおり、中にはエドガーの顔を知っている者がいる可能性も高いため、エドガーは視界を阻害しない特別な仮面を着けていた。

「確かに、大銀貨三枚と小銀貨十六枚、大銅貨十三枚だな。ありがとう」

 間違えがないようにお金を数えたエドガーは、ゴブリンの素材の換金して得たお金を懐にしまい、受付嬢に礼を言って去ろうとした。

 しかし、受付嬢が慌てて止める。

「ちょっと、待ってください!」
「……なんだ?」
「え、ええっと、銅ランクの昇格試験を受ける条件を十分に満たされたので、試験のご案内を……」
「依頼は受けていないが?」

 昨日冒険者登録をしたエドガーは冒険者ランク最下位の石ランクである。

 つまり、石ランクであるエドガーはゴブリンの討伐依頼を受けることはできないのだが、素材換金はどのランクでも問題なく行える。

 そのため、何かと入用のエドガーは素材換金のためにゴブリンを討伐した。

 その場合、冒険者としての実績は何もつかない。冒険者は受けた依頼を達成して始めて評価されるのだ。

 そのため、依頼を受けていないエドガーは自分が昇格する理由など思い当たらないのだが……

「確かにそうですが、条件を満たしたと。ですので、今、時間があるのであれば、昇格試験を受けていってはどうでしょうか?」
「……いや、やめておく」

 受付嬢も少し戸惑っているらしい。ただ、業務なので機械的に文句を並べているとエドガーは分かり、少し考えこんだ後首を横に振った。

 知らないことが多い。情報を集めてからにしよう。そう思ったのだ。

 と、その時、

「まぁ、いいじゃねぇか、坊主。事情も説明してやるし、直ぐに終わっからよ」
「ッ」

 いつの間にか、エドガーの背後に二メートル近い身長を持つ強面の大男がいた。褐色の肌に禿頭。鋭い眼光。

 エドガーは思わず飛びのき、強面の大男を睨んだ。

 大男は気にする様子もなく、背負っていた大きな大剣の柄に触れて言った。

「手合わせしようや。それが試験だ」

 エドガーは周りを見渡し、肩を竦めた。多くの冒険者たちが注目していたからだ。

 ここで首を横に振ってもいいが、それはそれで面倒な気もする。

 それにここ最近は弱い魔物しか狩っておらず、マキーナルト領にいたころの戦いらしい戦いをしていない。

 目の前の強面の大男はかなりの実力者と伺えるため、エドガーも手合わせしたい気持ちがあるのだ。

「分かった。いいだろう」

 少しだけ興奮した声音でエドガーは頷いた。齢十一の男の子らしい思考である。


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