169 / 375
第9章・思惑の行方
◆ 28・悪魔と王子(後) ◆
しおりを挟む
身の丈三メートル強、横幅も長く棘が無数に突き出た尻尾を入れると五メートルはありそうだ。食堂が縦にも横にも広くて良かったが、テーブルも椅子も料理も惨憺たる有様だ。
逃げまどう生徒の中、竜を見上げる私は、さぞかし毅然として見えるだろう。
こんな所で『感情を押し殺す』淑女教育が役立つとは思わなかった。
竜とかないわ……。
ただ唖然としてるのだ。
確かに私は長い人生、何度も学校に通った。このループから抜け出そうと勉学に勤しんだ事だってある。
その結果、分かった事といえば努力では埋められない現実もあるという残酷社会だ。仕方ない、私には勉学が向いてないのだ。今後も、そういった全てはカエルにぶん投げる予定なのだから問題ないが――。
こうして竜を前にして、改めて思う。
残酷世界が残酷するぎる……。
もちろん分かっている。相手は只の勇壮な竜ではなく知人悪魔なルーファだ。そしてヤラセ試合だって事も互いに理解しあえているはずだ。
ルーファは尾を震わせた。
トゲトゲ尻尾は床にぶつかり、簡単に叩き割られる。
いやいや、ルーファ……分かってるよね? ヤラセ試合だって、分かってるよね??
数度スナップする尻尾はどんどん床を破壊するし、なんなら壁にもぶち当たって壊している。
ルーファが吠える――割れる窓ガラス。
大音響だ。耳を塞ぐも、鼓膜がクワンクワンしている。
いや、マジで……分かって……、る、よね????
うん、これはアレよ……いわゆる、アピールよね……アピール。俺様は悪い竜だぜーっていう……そういう……。
「チャーリー!」
駆け寄ってきたのはライラと、スライ先輩だ。
「おいっ、これはどういう事だ! アイツはお前の……っ」
「先輩! 周りの目がありますから声を……」
ライラにたしなめられて先輩は口を噤む。
「いわゆるぅ……その、アレよ……ヤラセ試合する感じに……」
ライラ達は顔を見合わせ、頷く。
いかにもヤラセなら放置でも大丈夫とばかりの顔になっている。
……でも、見るからにヤラセ感ないというか……ルーファ本気じゃないよねってドキドキしてるんだけどっ。
〈チャーリー……ルフスと戦うの?〉
元天使の声に希望が開ける。
そうよ、ルーファの愛するアーラがこっちにいるのよ!!!! ヤラれる心配はないわね? いやいや、待て待て、アイツ……前に私の事、一回殺したよね????
……いや、でも今はアーラの意識もしっかりある状態なわけで……うん、愛に生きるルーファを信じるしかないな?!
「そ、そこまでよ!」
とりあえず言うべき事を叫んでみた。
ピタリと止まるルーファ。
絡み合う視線。
心なしかさっさと先に進めと言われている気分だ。
「それ以上の暴挙は、このシャーロット・グレイス・ヨーク……と、仲間が許しません! ……えー、っと、る、……あく、魔竜!」
さりげなくライラと先輩も共に戦う設定を盛り込む。ルーファという名は今後の為にも伏せることにした。
ルーファの呼称も決まった以上、次の段階へ移行する。
ビシッと人差し指を突きつけ、ふんぞり返る。
「魔竜、勝負よ!! 皆を殺すのはその後にするのねっ」
「チャーリー……一言多いです」
ボソリとライラが呟いた。
逃げまどう生徒の中、竜を見上げる私は、さぞかし毅然として見えるだろう。
こんな所で『感情を押し殺す』淑女教育が役立つとは思わなかった。
竜とかないわ……。
ただ唖然としてるのだ。
確かに私は長い人生、何度も学校に通った。このループから抜け出そうと勉学に勤しんだ事だってある。
その結果、分かった事といえば努力では埋められない現実もあるという残酷社会だ。仕方ない、私には勉学が向いてないのだ。今後も、そういった全てはカエルにぶん投げる予定なのだから問題ないが――。
こうして竜を前にして、改めて思う。
残酷世界が残酷するぎる……。
もちろん分かっている。相手は只の勇壮な竜ではなく知人悪魔なルーファだ。そしてヤラセ試合だって事も互いに理解しあえているはずだ。
ルーファは尾を震わせた。
トゲトゲ尻尾は床にぶつかり、簡単に叩き割られる。
いやいや、ルーファ……分かってるよね? ヤラセ試合だって、分かってるよね??
数度スナップする尻尾はどんどん床を破壊するし、なんなら壁にもぶち当たって壊している。
ルーファが吠える――割れる窓ガラス。
大音響だ。耳を塞ぐも、鼓膜がクワンクワンしている。
いや、マジで……分かって……、る、よね????
うん、これはアレよ……いわゆる、アピールよね……アピール。俺様は悪い竜だぜーっていう……そういう……。
「チャーリー!」
駆け寄ってきたのはライラと、スライ先輩だ。
「おいっ、これはどういう事だ! アイツはお前の……っ」
「先輩! 周りの目がありますから声を……」
ライラにたしなめられて先輩は口を噤む。
「いわゆるぅ……その、アレよ……ヤラセ試合する感じに……」
ライラ達は顔を見合わせ、頷く。
いかにもヤラセなら放置でも大丈夫とばかりの顔になっている。
……でも、見るからにヤラセ感ないというか……ルーファ本気じゃないよねってドキドキしてるんだけどっ。
〈チャーリー……ルフスと戦うの?〉
元天使の声に希望が開ける。
そうよ、ルーファの愛するアーラがこっちにいるのよ!!!! ヤラれる心配はないわね? いやいや、待て待て、アイツ……前に私の事、一回殺したよね????
……いや、でも今はアーラの意識もしっかりある状態なわけで……うん、愛に生きるルーファを信じるしかないな?!
「そ、そこまでよ!」
とりあえず言うべき事を叫んでみた。
ピタリと止まるルーファ。
絡み合う視線。
心なしかさっさと先に進めと言われている気分だ。
「それ以上の暴挙は、このシャーロット・グレイス・ヨーク……と、仲間が許しません! ……えー、っと、る、……あく、魔竜!」
さりげなくライラと先輩も共に戦う設定を盛り込む。ルーファという名は今後の為にも伏せることにした。
ルーファの呼称も決まった以上、次の段階へ移行する。
ビシッと人差し指を突きつけ、ふんぞり返る。
「魔竜、勝負よ!! 皆を殺すのはその後にするのねっ」
「チャーリー……一言多いです」
ボソリとライラが呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
勇者の後物語
波動砲
ファンタジー
表面上とはいえこの世界は平和になった。至って平穏無事で退屈な日常を人々は送れるようになった。そんな平和が来たゆえに、一つの疑問が持ち上がってしまった。
今の世界に『勇者』は必要か否か
勇者とは
曰く。魔王を打ち倒す者
曰く。人類の希望
曰く。救世主
曰く。曰く。曰く
しかし、悲しいかな。魔王が死に世界が平和になって数十年。勇者に対する敬意も感謝の気持ちも人々にはなくなり始めていた。平和な世界に勇者はもはや不必要な存在となっていた。この世界に魔王はいない。故にこの世界に絶望はなく。だから希望も必要なく。救世主も必要とされないのだ
そして勇者は一通の書き置きと共に忽然と姿を消した
『旅に出ます。探さないでください by勇者』
これは役目を終えた勇者のお話。
※この作品は筆者が学生の頃に書いた作品です。折角なので投稿しました
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。
第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。
生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。
その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。
「加護縫い」
(縫った布に強力な祝福を込められる)
「嘘のほころびを見抜く力」
(相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする)
を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。
さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王太子が近付いて来て……?
蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー
みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。
魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。
人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。
そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。
物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる