死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第14章・灰は撒かれた

◆ 5・繰り返す人生 ◆

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 他人の半生を外側から見続けている。
 どこにでもいる平凡な母子の人生だ。

 母親は私も知っての通り兵士らしく、仕事に行く時にはシッターが雇われている。このシッターも普通のどこにでもいるバイトの町娘だ。
 少しだけ違う事と言えば、彼女たちが赤子に与える飲み物に聖女の血が混じるくらいで、他に怪しい点もない。

 正直、私は飽きていた。

 すでに十数回目の、親子の出会いを見ている。

 彼らの穏やかな生活が突然停止し、最初に振り戻るせいだ。
 もちろん、理由も分かっている。
 私だ。
 きっと私が死んだのだ。

 一回目は驚いた。
 周囲の景色がピタリと止まり、世界が光って――次の瞬間には、また母親が彼女をエイベルを呼んでいた。今までこうした風な『戻る』瞬間を見た事がなかったため、何が起きたのか分からなかった。
 内部で会話をしていたエイベルも、何度呼びかけても返答がなく、存在すら感じられないほどだった。
 やがて――『あぁ、オネーサマ……そうだった』という言葉で、理解した。
 彼もリスタートで一瞬、記憶が飛ばされたのだと。

 何度も繰り返すうちに次第に色々、想像できた。


〈エイベル、あんたの記憶が壊れたのって、私のリスタートに巻き込まれたせい?〉
 さぁ。
 でもそうかも?
 前の記憶もどんどん減っていったし、こっちの事を覚えようとしてもうまくいかなくなったし。だんだん、どうでも良くなったよね。
 また振り出しに戻るなら、何したっていいよなって感じにもなったし。


 聞き捨てならない言葉だ。


〈まさか、あんたを人殺しに踏み切らせたのって……〉
 うん、振り出しに戻るならいいかって殺したら、戻らなくなった。


 思い出すのはおっさん天使の言葉だ。
 私の赤子スタート計画をとん挫させた理由が、記憶云々の支障がどうのと言う話だった。


〈あれ、私の事じゃなくて……あんたの事だったのかも〉
 天使の事は分からない。
 オレはこの世界になじめてないんだと思う。
〈でも、古い本は読めたじゃない?〉
 あれ、多分オレの元々の使ってた言葉だと思う。……かなり記憶壊れて、はっきりは言えないけど。あぁ、でも……オレが言葉、通じてないって、あの王子は分かったみたい。
〈アレックス?〉
 うん。
 それで、なんか特殊なタリスマン取ってこいって言われて……。


 つまり、アレックスのお使いは悪役や魔王云々の問題に関わる事ではなく、普通に円滑な生活の為のお使いだったわけだ。
 確かに、言葉が通じないのは辛すぎる。
 ただ、この子がガキでバカなせいと割り切っていたが、こうして話してみれば普通に普通の、それなりの年齢の人物に感じる。


〈で、今はソレを使ってるのね?〉
 あの堕天使が、あんたに埋め込んだ。
〈うめ……こん……????〉


 額に突き立てられた手を思い出す。


 だから、今後は伝わるんじゃない?
 あぁ、それと、タリスマンには面白い効果があるって、あの王子が言ってたっけ。


 なおも、もちゃもちゃと言う彼の言葉は右から左に流れていく。
 そんな事よりも現在、生身の身体に可笑しなモノを埋め込まれたらしいのだから、他の事など些細な問題だった。

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