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第16章・リスタート
◆ 2・早すぎる展開(後) ◆
しおりを挟む「そ、その子は、どういった子なの?」
とりあえず質問する。
父は数枚の書類を差し出し、説明を始める。
いわく、後継者にするためではなく貴族としての務めと、価値ある子への投資だと。私が自分の立場を脅かされる心配はしなくてよいとも付け加えた。
いやいや、もうそんなのどうでもいいし……ってか、お父様のコレはわざとなの? 突っ込んでいいの? いや危険を自分から犯す必要はないわよね?
「私は、別にいいわ……その子を弟にすること」
だってもう弟だったし。
上司な魔王だし。
「でもなんだか……急に感じて驚いたわ」
窺うように言えば、父は笑った。
「とても能力値の高い子だからね、前々から話自体はでていたんだよ」
あきらかに可笑しい。
エイベルが引き取られることになったのは、エイベルが売り込んできてからだ。それもエイベルの母がモンスターな猪被害で亡くなってからのことだったはずだ。
「お母様には、もう話したの?」
話しているわけがないが、敢えて聞く。父は驚くことに二つ返事で応じた。
「もちろんだよ。すでに了承を得ている話さ」
私のリスタートは誕生日の朝からだ。
それ以前の変動があるわけがない。
どういうことよ……っ!
「お前さえよければ、夜会前に顔合わせをしないか?」
断る口実はない。
魔王とて枠外の存在だ。私以外の記憶保持者と思えば是非、話を聞きたい。
「します」
「良かったよ。そのように取り計らうね。じゃあ、また後で」
父は話が終わったとばかりに机に戻っていく。こうなれば、私としては部屋を出るしかない。
どうする、もっと突っ込んだことを聞くべき? でもせっかく生き返ったのに死ぬ危険は犯したくない……。どうっする?
どうせ死ぬなら意味のある死……ってわけじゃないけど、何か、もっと……意味のある、繋がる何かを……。
「お父様……」
「ん? まだ何かあるのかい?」
柔和な顔の父が今は怖い。
色々知ってしまった今となっては、柔和な顔すら、底意地悪く見えてくる。
「お父様……、フローには、話したの?」
私が殺して動かなくしたフローレンス。
あの子はどうなったろう。フローレンスも聖女で枠外の存在だ。記憶を保持していれば、私に殺されたまま復活していることになる。
「誰だって?」
「フロー、……娘2よ」
「どうしてあの子の了承がいるんだい?」
父は読めない笑みのまま紡ぐ。
「娘1、お前たちを父様は1と2、順序をつけて呼んでいるけれどそれは便宜上の呼び名だよ。娘2も息子1も我がヨーク家の養子ではあるが、立場まで同じではないからね」
……そうなんでしょうね。
フローを売り物のように扱っていた書類を思い出す。
「お父様、フローレンスはどこ?」
「今日はお前の夜会で手一杯だよ」
すなわち『知らない』わけだ。父にとっては本当に関係がないのだろう。
「……弟がきたら、私の部屋に案内してください」
「あぁ」
部屋を出て、唇をかみしめる。
同情かもしれないし、憐憫かもしれない。だがそれこそ傲慢な話だ。今、私にできることは――すべきことは父と喧嘩することではない。
前回との違いをエイベルと話す!
全てはそれからだ。
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