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168 郷ははるか天弓にあり
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「エルフの郷は宇宙にあるわ。といっても、そんなに遠いわけじゃない。衛星軌道上ね」
「ふつう、エルフの郷っていうと、森の中の聖域とかなんじゃ?」
「なにがふつうなのかわからないけど、プラントの中は自然は多いわよ。自然といっても、培養されたものだけどね」
「さっき飛び出してきたって言ってましたけど、アーネさんはどうやって地上に?」
「転移用の遺跡がいくつか生きてるのよ」
ああ、魔王城と似たようなものか。
「でも、問題があるわ」
「なんですか?」
「あたしは、勝手に出てきた身だから、遺跡のゲートに弾かれちゃうのよ。他の人ももちろん弾かれる」
「連絡手段はないんですか?」
「ない……と思うわ。すくなくともあたしは教えられてない」
「じゃあどうすれば」
「う……ど、どうしようもないかも。プラントに直接乗りつけちゃえば話くらいは聞いてくれると思うんだけど、宇宙船を建造する技術なんてとうの昔に失われてるし。
ああ、ごめん。期待だけさせてがっかりさせちゃったわね」
アーネさんの言葉にしばし考える。
「ええと、あはは。それならなんとかできます」
「へっ? なんとかって」
「宇宙船です。実は、魔王城に何隻か保存されてまして」
「な、なんですって!」
「状態のいいのは一隻だけですけどね。詳しい知識が失われてたせいでずっと動かせなかったんですが、最近地球のインターネットから情報が得られるようになったおかげで、エルミナーシュが宇宙関連の知識を再構成することに成功しました。魔法と科学をつぎはぎしたような不恰好なもの、なんて言ってたけど、シャトルはいつでも使えるって話だったはず」
『ミナト、聞いていたぞ。例のスペースシャトルなら問題ない。そのエルフのプラントとやらとドッキングできるかどうかは不安だが、近くにまでは行けるだろう』
突然聞こえたエルミナーシュの声にみんなが驚く。
「ああ、ごめん。魔王城の管理システムのエルミナーシュ」
『声だけで失礼する、ミナトの友人がた。魔王城を管理しているエルミナーシュだ』
「は、はぁ、どうも」
シズーさんが、視線の向け先に困りながらそう返す。
「ほ、本当に行けるの!?」
アーネさんががたっと立ち上がって言った。
『行ける。必要な準備はしておこう。ミナト、話し合いが終わったら宇宙に行くメンバーを魔王城まで連れてきてくれ。ああいや、状況を考えると、そこにいる者たちや避難している冒険者たちも受け入れるべきだな』
「そうだね。地上で灰から逃げてる人たちがいたら助けてあげたいんだけど」
『緊急時だ。魔王城の航空機で捜索することを提案する』
「それしかないかな。なるべく見つからないようにってできる?」
『ステルス性の高い機体はあるが、敵にレーダーがあるわけでもないからな。地球風のカモフラージュ塗装と魔法による光学迷彩でごまかそう』
「操縦はエルミナーシュ?」
『うむ。問題は、要救助者がこちらの言うことを素直に聞いてくれるかだがな』
「それなら、希望の村組の守護者から、優しそうな女性を選んで乗せてったら?」
『シュモスが行くと言っている』
「うーん、シュモスか。もっと無難な人選はないものか」
探検家シュモスが飛行機から現れ、さぁ乗るんだ!っていうのはちょっとシュールすぎないかな。
「まぁ、やりたいって言うならいいか。不測の事態に備えて守護者の人にも入ってもらおう」
『では、そのようにしておく』
エルミナーシュとの会話を終えて振り向くと、
「な、なんかすごいのね」
「魔王になったと聞いてはいたけど、想像以上ね」
「お姉ちゃんみたいな盗賊士になりたいって思ってたけど、もう盗賊士とかいうレベルじゃないんだね」
アーネさん、シズーさん、シャリオンが言う。
「あはは……じ、じゃあ、宇宙に行きたい人は?」
「あたしはもちろん行くわよ」
アーネさんが真っ先に手を挙げた。
「わたしは……魔王城で待機しようかしら。空の果てとやらには行ってみたいけど、冒険者たちの窓口は必要でしょう?」
シズーさんは後方支援をしてくれるようだ。
「あの、私も行っていい?」
シャリオンが遠慮がちに聞いてくる。
「危険がないならいいかな。こっちからはアルミィも行くと思う」
留守番はグリュンブリンとボロネールか。
魔王がいちばん留守にしてる感じだな。
「ポポラックさんたちはどうする?」
「そうさの。ダンジョンマスターである同胞については、もはや終わらせてやるのがよかろうという話にはなっておる。ダンジョンコアを回収し、魔王城に移住させてもらえればと思うのじゃが」
「もちろん。コアの回収は手伝ったほうがいいのかな?」
「すまぬが、頼む。ダンジョンマスターの間には強力なドラゴンがおって、ノームにはいかんともしがたいのじゃ」
「わかった」
私がうなずく。
「あ、それならあたしも手伝うわ」
「アーネさんが?」
私が言うと、アーネさんが頬を膨らませた。
「なによう。これでも、あれから修練を積んだのよ。ミナトの足は引っ張らないわ」
「じゃあお願いします」
というわけで、シズーさんたちが避難してきた冒険者を魔王城に誘導し、そのあいだに私とアーネさん、ポポラックさんでダンジョンマスターに挑むことになった。
「ふつう、エルフの郷っていうと、森の中の聖域とかなんじゃ?」
「なにがふつうなのかわからないけど、プラントの中は自然は多いわよ。自然といっても、培養されたものだけどね」
「さっき飛び出してきたって言ってましたけど、アーネさんはどうやって地上に?」
「転移用の遺跡がいくつか生きてるのよ」
ああ、魔王城と似たようなものか。
「でも、問題があるわ」
「なんですか?」
「あたしは、勝手に出てきた身だから、遺跡のゲートに弾かれちゃうのよ。他の人ももちろん弾かれる」
「連絡手段はないんですか?」
「ない……と思うわ。すくなくともあたしは教えられてない」
「じゃあどうすれば」
「う……ど、どうしようもないかも。プラントに直接乗りつけちゃえば話くらいは聞いてくれると思うんだけど、宇宙船を建造する技術なんてとうの昔に失われてるし。
ああ、ごめん。期待だけさせてがっかりさせちゃったわね」
アーネさんの言葉にしばし考える。
「ええと、あはは。それならなんとかできます」
「へっ? なんとかって」
「宇宙船です。実は、魔王城に何隻か保存されてまして」
「な、なんですって!」
「状態のいいのは一隻だけですけどね。詳しい知識が失われてたせいでずっと動かせなかったんですが、最近地球のインターネットから情報が得られるようになったおかげで、エルミナーシュが宇宙関連の知識を再構成することに成功しました。魔法と科学をつぎはぎしたような不恰好なもの、なんて言ってたけど、シャトルはいつでも使えるって話だったはず」
『ミナト、聞いていたぞ。例のスペースシャトルなら問題ない。そのエルフのプラントとやらとドッキングできるかどうかは不安だが、近くにまでは行けるだろう』
突然聞こえたエルミナーシュの声にみんなが驚く。
「ああ、ごめん。魔王城の管理システムのエルミナーシュ」
『声だけで失礼する、ミナトの友人がた。魔王城を管理しているエルミナーシュだ』
「は、はぁ、どうも」
シズーさんが、視線の向け先に困りながらそう返す。
「ほ、本当に行けるの!?」
アーネさんががたっと立ち上がって言った。
『行ける。必要な準備はしておこう。ミナト、話し合いが終わったら宇宙に行くメンバーを魔王城まで連れてきてくれ。ああいや、状況を考えると、そこにいる者たちや避難している冒険者たちも受け入れるべきだな』
「そうだね。地上で灰から逃げてる人たちがいたら助けてあげたいんだけど」
『緊急時だ。魔王城の航空機で捜索することを提案する』
「それしかないかな。なるべく見つからないようにってできる?」
『ステルス性の高い機体はあるが、敵にレーダーがあるわけでもないからな。地球風のカモフラージュ塗装と魔法による光学迷彩でごまかそう』
「操縦はエルミナーシュ?」
『うむ。問題は、要救助者がこちらの言うことを素直に聞いてくれるかだがな』
「それなら、希望の村組の守護者から、優しそうな女性を選んで乗せてったら?」
『シュモスが行くと言っている』
「うーん、シュモスか。もっと無難な人選はないものか」
探検家シュモスが飛行機から現れ、さぁ乗るんだ!っていうのはちょっとシュールすぎないかな。
「まぁ、やりたいって言うならいいか。不測の事態に備えて守護者の人にも入ってもらおう」
『では、そのようにしておく』
エルミナーシュとの会話を終えて振り向くと、
「な、なんかすごいのね」
「魔王になったと聞いてはいたけど、想像以上ね」
「お姉ちゃんみたいな盗賊士になりたいって思ってたけど、もう盗賊士とかいうレベルじゃないんだね」
アーネさん、シズーさん、シャリオンが言う。
「あはは……じ、じゃあ、宇宙に行きたい人は?」
「あたしはもちろん行くわよ」
アーネさんが真っ先に手を挙げた。
「わたしは……魔王城で待機しようかしら。空の果てとやらには行ってみたいけど、冒険者たちの窓口は必要でしょう?」
シズーさんは後方支援をしてくれるようだ。
「あの、私も行っていい?」
シャリオンが遠慮がちに聞いてくる。
「危険がないならいいかな。こっちからはアルミィも行くと思う」
留守番はグリュンブリンとボロネールか。
魔王がいちばん留守にしてる感じだな。
「ポポラックさんたちはどうする?」
「そうさの。ダンジョンマスターである同胞については、もはや終わらせてやるのがよかろうという話にはなっておる。ダンジョンコアを回収し、魔王城に移住させてもらえればと思うのじゃが」
「もちろん。コアの回収は手伝ったほうがいいのかな?」
「すまぬが、頼む。ダンジョンマスターの間には強力なドラゴンがおって、ノームにはいかんともしがたいのじゃ」
「わかった」
私がうなずく。
「あ、それならあたしも手伝うわ」
「アーネさんが?」
私が言うと、アーネさんが頬を膨らませた。
「なによう。これでも、あれから修練を積んだのよ。ミナトの足は引っ張らないわ」
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