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第51話

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「・・・かなり難しいわね」

“箱”の話を一通り聞いての第一声はあたしの言葉だった。

「単純だろう?」

“箱”があたしの言葉に異論を挟む。

「『審査するもの』を倒して、その瞬間にこの箱を開けるだけではないか」

“箱”は自分の足元を指差して言う。あたしは肩をすくめる動作をしてから反論する。

「言うのは簡単だけど、一瞬で意識を絶たなければならないなんて不可能に近いわよ」

「なんでだ?」

“箱”が意外そうに尋ねる。

「そうか、お前は私の肉体が頑丈になったことをしらなかったな」

そういって『審査するもの』が自分の特性について“箱”に説明していく。

・・・なるほど、そう言えばそうだったわね・・・納得だわ。

「・・・何とかならんの・・・?」

『審査するもの』の話を聞いて、“箱”が呆然と聞いてきた。

一瞬で意識を絶つにはやっぱり頭を攻撃するしかないわよね?

でも、あの硬度を考慮するとかなり厳しいのは否めないのよね・・・さてさてどうしたものか。

「すまん。私が自分を攻撃できたら一番手っ取り早いのだが・・・何故かできないみたいなんだ」

『審査するもの』が本当に申し訳なさそうに謝る。

「あんたの力は?またあたしに貸すことってできないの?」

あまり期待せずに“箱”に尋ねる。

返ってきた答えは予想どおりの内容で

「残念ながら、私には箱を開けたときに精神を導くための力しか残っていない。これを使ってしまっては本末転倒だろうな」

そうなるとやっぱりレベンに頼むしかなさそうね。

ふと、目を向けると力なく座り込んでいるレベンが目に入った。

「やっぱり・・・僕がやるしかない・・・のかな?」

あたしが声をかける前にレベンが尋ねてきた。

相当辛いのだろう、とぎれとぎれに声を出す。

「現状では今のところそれが一番可能性があるわ」

自分でも酷なことを言っていると分かってはいるが、こういうしかない。

「もう・・・少し・・・休ませて」

「ええ、休んでいていいわよ」

あたしは頷き、レベンは目をつぶった。

「ねえ、あたしたちってあとどのくらいこの“世界”にいられるの?」

『審査するもの』に疑問に思っていたことを尋ねる。

「厳密にはわからないが、あと一時間ほどといったところだな」

「あと一時間か・・・」

あたしにはたったそれだけの時間でレベンが回復するとは思えなかった。
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