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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件
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「弦助。八階へ行くぞ」
「はい」
大串が待つ八階へ、僕と長兄と鈴木巡査は向かった。
「沖塩氏は恋人想いの良人だったみたいですね」
僕は長兄に話しかけた。
「政治家とは威張っているものかと思いましたが、身分の違う小波津に優しくするなんて、感動的です」
「それはね、沖塩氏の一面に過ぎない」
長兄の声は冷たかった。階段を上りながら続けて言った。
「氏は善人ではないかもしれない」
「どういう意味です? 何を根拠に?」
「誰だって身近な人間には親切にするが、赤の他人には冷たいものだよ」
たしかに、そうだが……それだけで善人ではないだなんて言い過ぎではないか。
「修助もそうじゃないか」
「修助兄上は身近な僕にも意地悪です」
「そうかな」
「僕の嫌がる事ばかりします」
「たとえば?」
「東京に来て一番最初にしてくれた事は、切断された遺体を見せてくれた事でした」
「ハハッ、それは酷い兄だ。きっと私達の探偵業に無理矢理でも引き込みたかったのだろうね」
「はい」
大串が待つ八階へ、僕と長兄と鈴木巡査は向かった。
「沖塩氏は恋人想いの良人だったみたいですね」
僕は長兄に話しかけた。
「政治家とは威張っているものかと思いましたが、身分の違う小波津に優しくするなんて、感動的です」
「それはね、沖塩氏の一面に過ぎない」
長兄の声は冷たかった。階段を上りながら続けて言った。
「氏は善人ではないかもしれない」
「どういう意味です? 何を根拠に?」
「誰だって身近な人間には親切にするが、赤の他人には冷たいものだよ」
たしかに、そうだが……それだけで善人ではないだなんて言い過ぎではないか。
「修助もそうじゃないか」
「修助兄上は身近な僕にも意地悪です」
「そうかな」
「僕の嫌がる事ばかりします」
「たとえば?」
「東京に来て一番最初にしてくれた事は、切断された遺体を見せてくれた事でした」
「ハハッ、それは酷い兄だ。きっと私達の探偵業に無理矢理でも引き込みたかったのだろうね」
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