悪役令嬢が四つ子だなんて聞いてません!

青杜六九

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学院編 1 魔力測定で危機一髪

12 悪役令嬢の作戦会議 3

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エミリーは魔力が回復していなかったが、本人の希望もあり、四人は作戦会議をすることにした。
「改めて、私達の今の状況と、これからすべきことを整理したいのだけど」
というマリナの呼びかけに三人が応えた。寝る準備をしてベッドに集まった。
「アリッサ、ノートにメモしてくれる?」
「分かった。ちょっと待っててね」
机の引き出しからクリーム色のノートと彫り模様が美しいペンを持ってくる。
「……それ可愛い」
エミリーが目を輝かせた。表情が変わったのは姉妹にしか分からないくらいだ。
「いいでしょ?色違いもあったから、お揃いにする?」
「こら。文具談義は後にしてくれる?」
「ごめん」
「では、始めるわよ」
「オッケー!」

「私達は、ヒロインが攻略対象の誰か一人でも攻略すれば、没落か死ぬか、で間違いないわね。ヒロインのパラメーターが低くても、好感度だけでアウトよね」
「うん。王太子殿下の場合は没落して死ぬか、幽閉されて発狂するかでしょ。アレックスの場合は夫に殺されるかアレックスに殺されるか。やだなー、あいつに殺されるのは」
「ジュリアちゃんは剣を練習してきたもの。簡単にはやっつけられないよね」
「いやあー、勝率は五分五分と言いたいところだけど、最近アレックスに勝てないんだよね」
「レイ様の場合は、服毒自殺させられるか、処刑されちゃう……」
アリッサが涙ぐんだ。
「マシューは魔王エンドしか見てない」
「それも気になるわね。マシューの魔王エンドは、王都が壊滅するんだものね。魔王化する以外のエンディングをエミリーは見ていないんでしょう?」
「そう。見る前に寝落ちした」
「全然ハッピーじゃないから、ええと?」
「エミリーがイベントを拾い忘れて、バッドエンドだった可能性もあるわね」
「全部拾った!」
エミリーが必死に訴える。
「大事なのは、ヒロインと攻略対象が接近すると危険、てことよね」
「殿下なんか、パラメーターが上がれば、近づいただけでイベント発生だからね」
「アイリーンは授業中寝てる。……パラメーターは上がらない」
魔法科の教室でエミリーが見ている限り、アイリーンは睡眠学習派のようだった。
「そうなの?」
「レイ様を攻略するには、テストで上位に入らなきゃだめなのに?」
「運動もしてそうにないよね。アレックスは運動のパラメーターが重要だよ」
四人は「うーん」と唸って黙り込んだ。
「ヒロインの狙いが分からないわ……」
「逆ハーレムじゃないの?魔法科に入ってるし」
「……マシューも戻った」
「狙える要件が整ったわね。攻略対象者にどの程度アクションしてくるか、少し様子を見ましょう」
「大丈夫?気づいた時には手遅れになってたりしない?」
「私も心配だなあ。レイ様とは学年が違うから、ずっと見張ってもいられないもの」
四人も三つの科に分かれて在籍しており、すぐに相談できる環境にはない。ジュリアとエミリーは一人で考えて行動する必要がある。
「必ず夜に報告し合いましょう、ね?」
「了解!」
「……うん」
夜は皆で報告、とアリッサがノートにメモした。

「明日から私達が何をするか、についてよ」
「マリナとアリッサは生徒会活動をするんでしょ」
「ヒロインは生徒会に入るよね?」
「入った方が確実にイベントを狙える……」
「生徒会に入ってないと、レイ様を卒業までに攻略できなくなっちゃうもの」
「一番期間が短いのはレイモンドね。逆に、この一年でレイモンドを攻略できなければ、逆ハーレムにはならないということだわ」
「賢いな、マリナ!」
ジュリアが目をキラキラさせている。
「三年生の教室にいる時以外、レイモンドを一人にしないことね。休み時間は殿下と一緒のことが多いから、放課後を押さえれば……」
「頑張る!」
拳を握りしめてアリッサが気合を入れた。
「ヒロインを生徒会に入れないように、残り一枠を埋めておかなきゃ」
「……キースを応援する」
「キースの他にもう一人よ。誰かいい人知らない?」
マリナの呼びかけに三人は首を振る。
「アレックスも断ったって言ってたよ。放課後は練習する約束だから」
「候補者はアリッサと私で探してみるわ。ジュリアはアレックスに声をかけてみて。エミリーは……」
「……アイリーンの、監視?」
「だよねー。一番近くで見られるもん」
「よろしくね。ヒロインに動きがあったら、また四人で相談しましょう」
うんうんと頷き、視線を合わせて確認し合う。
「よおっし、皆で力を合わせて生き抜こう!……円陣、ほら」
三人が手を重ね、上にジュリアが手を乗せた。
「私、これよく分かんない……」
エミリーがぼそりと呟く。
「絶対に生き残るぞー!おー!」
マリナはタイミングよく「おー」と言い、アリッサとエミリーはやはりワンテンポ遅れてしまったのだった。
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