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プロローグ
まさかの初夜!?
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美しく流れる豪華な天蓋が、薄明かりを纏って妖しく煌めく。
「あ、あのっ……エヴェラルド様?」
震える私を見て、王太子エヴェラルド殿下は優しく微笑んだ。ベッドサイドの僅かな明かりの中でも、彼の美しさは陰ることがない。私に覆いかぶさるようにして最上級品のネグリジェを撫でていた指先が、つうっと胸元のリボンを引いた。
「怖がらないで」
「……っ!」
「どうしたの?」
首を傾げると、肩にかかる金色の髪がさらりと揺れた。彼の全てが絵になると、貴族学校の同級生が言っていたのを思い出す。……カッコイイ……んだよね、多分。
「わ、私っ……そ、その、む、胸があまり……」
謙遜ではなく、私の胸は真っ平だ。夜会の時に、胸元の開いたドレスを着たことはない。寄せて上げようにも上げるものがなかった。襟が詰まったドレスを着て、それらしく詰め物をしていたのだが、このネグリジェ姿では隠しようもない。
「私は君を愛している。……それは、まあ、こういうことを考えたことがないと言えばうそになるが、君が気にしているほど、私は……」
「恥ずかしいです……」
ベッドの上で膝を折り曲げて、防御の姿勢を取りつつ見つめれば、彼は身体を起こして私の隣に座った。
「では、こうしよう。私が先に服を脱ぐ。君の服を脱がすのはそれからだ」
私のピンク色の髪を撫でて耳元で囁く。
「約束だよ……いいね?」
「はいぃ……」
王子に言われてダメと言えるはずもなく、私は暗闇に顔を向けた。背後でシーツが擦れる音がした。ベルトを外す金属音がやけに大きく聞こえて、エヴェラルド殿下が一糸まとわぬ姿になったのだと思った。
「こちらを向いて。……フランチェスカ」
優しく、それでいて有無を言わせない強さがあった。
もう逃げられない。恥ずかしいなどと言っていられない。
今夜、私はこの方の妃になるのだ。
パシュッ。
「……!?」
薄暗い部屋にいるはずなのに、一瞬辺りが白く発光した気がした。
恐る恐る振り向いた私の目に、驚くべき光景が飛び込んできた。
「……ん?」
「あ、れ?で、殿下は、え、え?」
おかしい。
な……ん、で?
殿下に私と同じアレがついてるの?
家でも父親や兄弟と一緒にお風呂に入るわけじゃないし、男の裸なんて見たことがない。男女はあの部分が根本的に違うと聞いた。それなら、私は……?
「どうしたんだい?フラン?」
殿下が女なわけはないし、厚い胸板は半裸で邸をうろうろしている兄と同じだ。だとすると、――私は……男?
道理で今まで違和感があったわけだ。父の言いなりで殿下に近づき、寵愛を受けるまでになったのに、彼を間近に見ても恋愛小説にあるような恋の高揚感を感じたことがなかった。
「い、いえ……」
殿下は男を妃にしたとは思っていない。真実を知ったら、驚き、悲しみ、怒るに違いない。王族を騙した私はどうなる?ちょっとした誤解どころじゃない。女と偽ってベッドインまでしてしまったのだ。断頭台が待っている。
「ほら。観念して、フラン。次は君の番だ。約束しただろう?」
「ちょ、え、あ、待っ……」
「私は約束を違えることと、嘘をつくのは嫌いだよ」
「嘘!?」
今まで女だって騙していたって今気づいたんです。思いっきり嘘をついていました!すみません!
……って言って許されたらどんなに楽か。
冷や汗が一気に噴き出し、心臓がこれでもかと高鳴る。
「で、殿下、仮に……ですね」
「何かな」
「私がおと……」
言えない。
唇が震える。歯がかみ合わない。
「私が男だったら……」
「ふふっ。フランはとても面白いね。こんなに可憐で、妖精のように愛らしい君が、男であるわけがないよね」
殿下はくすくす笑いながら、じりじりと私に近寄ってくる。獲物を狙う猛禽類のような鋭い視線に射すくめられる。
絶体絶命だ。
「……捕まえた」
王太子らしからぬ邪悪な笑みで、エヴェラルド殿下が私の顎を掬った。
――キスされる!?
結婚式では恥ずかしがってもじもじしていたら「フリ」で済んだのに。
ってか、絶対無理!
男とキスなんてありえない!
リセット!リセットしてくれ!
「あ、あのっ……エヴェラルド様?」
震える私を見て、王太子エヴェラルド殿下は優しく微笑んだ。ベッドサイドの僅かな明かりの中でも、彼の美しさは陰ることがない。私に覆いかぶさるようにして最上級品のネグリジェを撫でていた指先が、つうっと胸元のリボンを引いた。
「怖がらないで」
「……っ!」
「どうしたの?」
首を傾げると、肩にかかる金色の髪がさらりと揺れた。彼の全てが絵になると、貴族学校の同級生が言っていたのを思い出す。……カッコイイ……んだよね、多分。
「わ、私っ……そ、その、む、胸があまり……」
謙遜ではなく、私の胸は真っ平だ。夜会の時に、胸元の開いたドレスを着たことはない。寄せて上げようにも上げるものがなかった。襟が詰まったドレスを着て、それらしく詰め物をしていたのだが、このネグリジェ姿では隠しようもない。
「私は君を愛している。……それは、まあ、こういうことを考えたことがないと言えばうそになるが、君が気にしているほど、私は……」
「恥ずかしいです……」
ベッドの上で膝を折り曲げて、防御の姿勢を取りつつ見つめれば、彼は身体を起こして私の隣に座った。
「では、こうしよう。私が先に服を脱ぐ。君の服を脱がすのはそれからだ」
私のピンク色の髪を撫でて耳元で囁く。
「約束だよ……いいね?」
「はいぃ……」
王子に言われてダメと言えるはずもなく、私は暗闇に顔を向けた。背後でシーツが擦れる音がした。ベルトを外す金属音がやけに大きく聞こえて、エヴェラルド殿下が一糸まとわぬ姿になったのだと思った。
「こちらを向いて。……フランチェスカ」
優しく、それでいて有無を言わせない強さがあった。
もう逃げられない。恥ずかしいなどと言っていられない。
今夜、私はこの方の妃になるのだ。
パシュッ。
「……!?」
薄暗い部屋にいるはずなのに、一瞬辺りが白く発光した気がした。
恐る恐る振り向いた私の目に、驚くべき光景が飛び込んできた。
「……ん?」
「あ、れ?で、殿下は、え、え?」
おかしい。
な……ん、で?
殿下に私と同じアレがついてるの?
家でも父親や兄弟と一緒にお風呂に入るわけじゃないし、男の裸なんて見たことがない。男女はあの部分が根本的に違うと聞いた。それなら、私は……?
「どうしたんだい?フラン?」
殿下が女なわけはないし、厚い胸板は半裸で邸をうろうろしている兄と同じだ。だとすると、――私は……男?
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「い、いえ……」
殿下は男を妃にしたとは思っていない。真実を知ったら、驚き、悲しみ、怒るに違いない。王族を騙した私はどうなる?ちょっとした誤解どころじゃない。女と偽ってベッドインまでしてしまったのだ。断頭台が待っている。
「ほら。観念して、フラン。次は君の番だ。約束しただろう?」
「ちょ、え、あ、待っ……」
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「嘘!?」
今まで女だって騙していたって今気づいたんです。思いっきり嘘をついていました!すみません!
……って言って許されたらどんなに楽か。
冷や汗が一気に噴き出し、心臓がこれでもかと高鳴る。
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「私がおと……」
言えない。
唇が震える。歯がかみ合わない。
「私が男だったら……」
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