ヒロイン(=俺)、王子との初夜を全力で回避します!

青杜六九

文字の大きさ
1 / 10
プロローグ

まさかの初夜!?

しおりを挟む
 美しく流れる豪華な天蓋が、薄明かりを纏って妖しく煌めく。
「あ、あのっ……エヴェラルド様?」
震える私を見て、王太子エヴェラルド殿下は優しく微笑んだ。ベッドサイドの僅かな明かりの中でも、彼の美しさは陰ることがない。私に覆いかぶさるようにして最上級品のネグリジェを撫でていた指先が、つうっと胸元のリボンを引いた。
「怖がらないで」
「……っ!」
「どうしたの?」
首を傾げると、肩にかかる金色の髪がさらりと揺れた。彼の全てが絵になると、貴族学校の同級生が言っていたのを思い出す。……カッコイイ……んだよね、多分。
「わ、私っ……そ、その、む、胸があまり……」
謙遜ではなく、私の胸は真っ平だ。夜会の時に、胸元の開いたドレスを着たことはない。寄せて上げようにも上げるものがなかった。襟が詰まったドレスを着て、それらしく詰め物をしていたのだが、このネグリジェ姿では隠しようもない。
「私は君を愛している。……それは、まあ、こういうことを考えたことがないと言えばうそになるが、君が気にしているほど、私は……」
「恥ずかしいです……」
ベッドの上で膝を折り曲げて、防御の姿勢を取りつつ見つめれば、彼は身体を起こして私の隣に座った。
「では、こうしよう。私が先に服を脱ぐ。君の服を脱がすのはそれからだ」
私のピンク色の髪を撫でて耳元で囁く。
「約束だよ……いいね?」
「はいぃ……」
王子に言われてダメと言えるはずもなく、私は暗闇に顔を向けた。背後でシーツが擦れる音がした。ベルトを外す金属音がやけに大きく聞こえて、エヴェラルド殿下が一糸まとわぬ姿になったのだと思った。
「こちらを向いて。……フランチェスカ」
優しく、それでいて有無を言わせない強さがあった。
もう逃げられない。恥ずかしいなどと言っていられない。
今夜、私はこの方の妃になるのだ。

パシュッ。
「……!?」
薄暗い部屋にいるはずなのに、一瞬辺りが白く発光した気がした。
恐る恐る振り向いた私の目に、驚くべき光景が飛び込んできた。
「……ん?」
「あ、れ?で、殿下は、え、え?」
おかしい。
な……ん、で?
殿下に私と同じアレがついてるの?
家でも父親や兄弟と一緒にお風呂に入るわけじゃないし、男の裸なんて見たことがない。男女はあの部分が根本的に違うと聞いた。それなら、私は……?
「どうしたんだい?フラン?」
殿下が女なわけはないし、厚い胸板は半裸で邸をうろうろしている兄と同じだ。だとすると、――私は……男?
道理で今まで違和感があったわけだ。父の言いなりで殿下に近づき、寵愛を受けるまでになったのに、彼を間近に見ても恋愛小説にあるような恋の高揚感を感じたことがなかった。
「い、いえ……」
殿下は男を妃にしたとは思っていない。真実を知ったら、驚き、悲しみ、怒るに違いない。王族を騙した私はどうなる?ちょっとした誤解どころじゃない。女と偽ってベッドインまでしてしまったのだ。断頭台が待っている。
「ほら。観念して、フラン。次は君の番だ。約束しただろう?」
「ちょ、え、あ、待っ……」
「私は約束を違えることと、嘘をつくのは嫌いだよ」
「嘘!?」
今まで女だって騙していたって今気づいたんです。思いっきり嘘をついていました!すみません!
……って言って許されたらどんなに楽か。

冷や汗が一気に噴き出し、心臓がこれでもかと高鳴る。
「で、殿下、仮に……ですね」
「何かな」
「私がおと……」
言えない。
唇が震える。歯がかみ合わない。
「私が男だったら……」
「ふふっ。フランはとても面白いね。こんなに可憐で、妖精のように愛らしい君が、男であるわけがないよね」
殿下はくすくす笑いながら、じりじりと私に近寄ってくる。獲物を狙う猛禽類のような鋭い視線に射すくめられる。
絶体絶命だ。
「……捕まえた」
王太子らしからぬ邪悪な笑みで、エヴェラルド殿下が私の顎を掬った。
――キスされる!?
結婚式では恥ずかしがってもじもじしていたら「フリ」で済んだのに。

ってか、絶対無理!
男とキスなんてありえない!
リセット!リセットしてくれ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

乙女ゲームに転生した悪役令嬢! 人気が無い公園で出歯亀する

ひなクラゲ
恋愛
 私は気がついたら、乙女ゲームに転生していました  それも悪役令嬢に!!  ゲーム通りだとこの後、王子と婚約させられ、数年後には婚約破棄&追放が待っているわ  なんとかしないと…

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

悪役王女に転生したのでお兄様達に媚を売る…のはちょっと無理そうなので聖女候補になれるよう頑張ります!

下菊みこと
恋愛
悪役王女が頑張ってみるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

処理中です...