青春

オズ

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とりあえず、夏の日

番外編的な…恋?

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誰かが囁いた。
恋に溺れた人魚は泡になってしまう。
あの広い海に泡となって溶けてしまうんだ、そう僕に囁いた。

僕は、あの人の声が好きだった。
真っ直ぐと僕の名前を呼ぶあの人の声。
あれ、今目の前にあるこれは何。
ピクリとも動かない。
僕の好きなあの声も聞こえてこない。
何が起きたのか、どういう状況なのか
まるで分からない。
周りに人が集まってきた。
この音のありふれた世界で、
あの人の声無しでどう過ごせばいいのか
何を聞けばいいのか、、、
分からないんだ。

目を瞑るとあの人との記憶が映像となり勝手に流れてくる。
見たくない。
聞きたくない。
やめて、やめて、、、
もう僕は壊れてしまいそうだよ。
何か言ってよ。
あの人の口で、あの人の、あの声で…



お久しぶりです。
お元気にしてましたか。
お母様

えぇ、そうねぇ。
あなたさえこなければ、
それはもう、元気でしたけれど
あなたの姿を見てからというもの
頭痛が酷くてねぇ。

そう言って、お母様は僕の元を離れていった。きっと、僕がいけなかったのだろう。家を継がずに自分で勝手にやりたいことを始めてしまった。もともと、お母様は僕のことをいいようには思っていなかったようだけど。

ただいま。
と言っても誰もいないのだけれどね。
扉の向こうには、生活感のない部屋
テーブルが1つと1人掛けソファが1つ
本棚が1つある、しかし、本棚の中身は仕事用の書類ばかりだ。
数ヶ月前まではもっと生活感のある部屋だった。だが、もうあの人がいない、
ただそれだけのはずなのに。
僕は、この広い部屋で1人だ。
外に出て散歩でもしよう。
そして、気分を変えよう。
そうすれば、また戻れる。
1人だった頃へと戻れる。

どんなに綺麗なものを見ても、
どんなに素敵なものを見ても、
心が動かない。
きっと、僕の心はあの時に凍りきってしまったのだ。
もう、どうしようもないくらい固く冷たくなってしまったのだ。もう、誰も溶かせない。元には戻れない。

これは、ただの気まぐれだった。

ダンボール、、、大きい。
何を捨てたんだ。

覗いてみると、小さい子供が丸くなっていた。生きはしているみたいだが、
これは、捨て子ということだろうか。

僕は、その子供を部屋に連れて帰った。
明日にでも保健所などに連れて行けば良いと思っていたから。だが、朝起きると
その子供はなぜか僕の布団の中にいた。
小さい体だ。
ふと、その子供が目を覚ました。
パチクリと見開いた目は、いかに驚いたかを物語った。
「ごめんなさい。」
その後、その子供は自分の名前や歳などの事が分からないことを語った。しかし、誰かから逃げていたということは、覚えていると言った。
とりあえず、知り合いの医師を電話で呼び出した。
彼は、古くからの友人だった。
たまに、連絡も無く家に来る。
「はじめまして、
おれの名前は井浦 律だ。
よろしくな。
ちょっとした検査をしような。

よし、大丈夫だろう。」
彼が言うには、ちょっとした記憶障害だそうだ。
「それにしても、お前また痩せただろ。
しっかり飯食えよ。おれも、暇じゃあないんだ。倒れて仕事増やすなよな。
あ!そうだよ。この子にお願いしようか名案だろ?」
そう言って彼は、この小さい子供に
電話の使い方なんかを教えて帰った。
それからというもの、この子供は毎日
僕にごはんを食べるように言ってきた。
別に今まで食べていなかったわけではない、ただ食べるのが面倒で極力動いていなかっただけなんだ。しかし、今まで食べていなかったから急に一人前食べる事が出来ないのも事実だ。

あれから週一のペースで律が来るようになってしまった。今までは、月一だったのに。。。
「おい、この子の名前はどう呼んでるんだ?」

「?」

「おいおい。
まさか、ないとか言わないよな?」

「そのまさかだ。」

「まじか。」

律は、本当に呆れているらしい。
こいつのこんな顔は初めて見た。
結局思い出すまでの間の名前は律が付けた。風が香ると書いて風香となった。

「風香、外へ行くか?」
と、律が聞くと風香は首を振った。
どうやら、外には出たくないらしい。
律は、捜索届けが出されてないか確認したがなかったらしい。

このひから、僕と風香の生活が始まった。




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感想 3

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みんなの感想(3件)

Kabochan
2021.07.11 Kabochan

急に世界観変わってない???

解除
Kabochan
2021.07.11 Kabochan

あ、でも文体いいし、読みやすい!

解除
Kabochan
2021.07.11 Kabochan

父、はなんか何なの何なのっておもわせといて、対してどうってことではないっていうか。ウーン面白いけど…。

解除

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